記事年月日 |
2007/08/15 |
作者名 |
マルグリット・デュラス/田中倫朗・訳 |
ジャンル |
小説 |
出版 |
河出文庫 |
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「普通の速さで」「歌うように」。
作中、たびたび目にする曲調を表す音楽用語。さて、それが表題とされているわけが、読み終えてなお、想像の域を出ない。
文庫本わずか144ページの短編。ストーリーがあるような、ないような。むしろ「ストーリー」そのものが読み手に委ねられているような感さえある。
「さあ、これだけ準備をしたのだから、あとは物語を紡いでご覧なさい。それぞれのイマージュで」と。
プツンプツンと絶えず切れるセンテンス。ひっきりなしに用いられる倒置法。それらは作者のイマージュ先行手法に読者を引きずりこむことに絶大に貢献している。
ページを読み終えて、なお読み終わらない感。絶頂に誘導されてきての突然の「中止」のようなエンディングも、ひょっとして「官能」の表現者ならではの読者との「かけひき」なのだとしたら、一旦は金切り声をあげたとしても「身もだえ」しながらも、それさえ楽しんでしまいたい。
一作読み終えたらもう一作、手にとりたくなる。きっと現存する全ての作品に触れたくなる。
間違いなく。
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