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映画『ドレスデン、運命の日』監督来日インタビュー

17〜18世紀にザクセン王国の首都として栄え、“エルベのフィレンツェ”“バロックの真珠”と称えられた芸術の街、ドレスデン。第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けた空襲の夜を、人間ドラマを交えながら描き出した本作。極限状態であらわにされる人間の醜さ、極限状態でも誇りを忘れない人間の美しさが胸に迫ってきます。監督のローランド・ズゾ・リヒター氏がドイツから来日し、本作への思いを語りました。

映画『ドレスデン、運命の日』メイン画像

Q: イギリス側の協力はすぐに得られましたか?

監督: 俳優たちは積極的に協力してくれて、出演拒否なども一切ありませんでした。


Q: ドイツではテレビ版の放映があったそうですが、視聴者の反応はいかがでしたか?

監督: ローランド・ズゾ・リヒター氏これは記録的数字なのですが、1200万人近い方が観てくださったそうです。両方の立場に立ち、どちらかが善でどちらかが悪だという単純な描写をしなかったこと、イギリス人に対する敬意を払いながら作品作りをしたことなどが、好評をいただいたようです。ドレスデンの空襲を話には聞いていたが、現実にこれほどまでだったとは知らなかったという反応も多かったです。


Q: ドレスデンの空襲に対する芸術面の責任を果たすために本作を作られたそうですが、これについて詳しくお教えいただけますか。また、製作の動機についてもお聞かせください。

監督: あの晩の出来事を映像化することは本当は不可能であると思っていました。それにも関わらず、あの晩を生き延びた方、亡くなった方々の実際に体験した苦しみというものを、できる限り表現し、近づこうとするということ。それが私たちの義務で、その方たちが体験したことに即する形で映像化していくことが自分たちの義務だと。それは私にとっての大きなチャレンジでした。例えば、ひとつのドラマの背景として使うわけだから、適当に空襲を描けばいいとは考えてはいけないと。そして、現実にあったことのうち、わずかなパーセンテージでしか映像化できないと意識し、そこにこだわって正確に再現しようと考えたのです。本作製作の動機ですが、ドレスデン聖母教会の再建が完成され、落成式があったわけですが(2005年10月30日)、その頃に向かってドレスデンという街に対しての世論の注目が高まっていき、いろいろなメディアでも報道されたりしました。そんななか、プロデューサーと私の意見が合致したんです。また、戦争のあと50年間くらい、ドイツは第二次世界大戦を描くときに、「ドイツに責任があった」「ドイツに罪があるんだ」というところから描いていたのです。でも、今これだけ長い時を経てきたので、もう少し別の視点をそこに加えてもいいんじゃないかということで作ってみたのです。


Q: 当時の、実際に行われた空襲の映像が盛り込まれているわけですが、その理由をお聞かせください。

監督: 財政的な問題もありましたが、この話は単なる作り事ではなく、現実にあった事実なんだということを、観客に誤解の余地のない明らかな形でわかってもらうため、そうした映像を使いました。


Q: 戦争を知らない世代に対して、どう思われますか?

監督: ローランド・ズゾ・リヒター氏若い世代にとっては、前世紀の出来事なんですよね、もう2000年を過ぎてしまったわけですから。そうした若い世代が、過去を振り返って「こういうことがあった」とキチンと認識をするために、目を向けるときの窓を開けておいていけなければいけない。窓を閉めていたら見ないわけですから。忘れてはいけないし、繰り返されてはいけないことだと思います。


Q: 撮影時のエピソードをお聞かせください。

監督: この街の中心部が、過去50年をかけて少しずつもとのように復元されていったので、撮影にそのまま使える部分もあり、たいへんありがたかったです。ただ、聖母教会は当時の形なんですが、当時建物に使われていたのは黒い石なんです。なのでCGで石のひとつひとつを黒く変えていくという作業が必要でした。


Q: 若い男女にスポットを当てた理由はなんですか?

監督: 劇中のワンシーン人生これからという若い人たちは、いろんな夢や目標をお持ちだと思います。それと同じように、当時の若い方たちも思っていたわけですよね。でも、その夢や目標のベースになっていたものが一夜にして失われたということを、この映画を通して若い人たちに見てもらいたかったんです。


Q: ナレーションが一切なかったわけですが、ある種冒険ですよね。普通はこういった作品はナレーションがあるものが多いと思うのですが。

監督: ドイツでの公開を前提としていましたので、ドレスデンの空襲についてはドイツの皆さんはすでにご存知なわけです。そこに加えて歴史の授業のようなナレーションは必要ないですし。


Q: ドレスデンの空襲があまり知られていない日本での公開となるわけですが。

監督: 「世界には善人と悪人がいる」と2分割できるようなものではなく、常に両方の視点に立って物事を見なければいけないと思うのです。それは日本の歴史を考えるうえでも大切な考え方だと思います。少しでも「戦争の無意味さ」をわかっていただければ、いかに多くの文化が失われ、いかに多くの人の命が失われるものであるのか。戦争が目的とするものと失われるものを秤にかけたときに、それがまったく均衡のとれないものであって、失うものがいかに大きいものであるかということをわかっていただければと思います。


Q: 再建された聖母教会のドームの上には、空襲を行ったイギリス兵士の息子が制作した十字架が取り付けられているそうですが、これは大いなる「許し」の形ですよね。

監督: そうですね。本当に私もそう思います。この聖母教会の再現には、世界のいろんな国のいろんな人たちが資金を提供して協力してくださいました。それもとても感動的なことだと思います。あの十字架を作ったのはイギリス人の彫刻家が寄付をしたもので、とても心を動かされました。


ローランド・ズゾ・リヒター氏


 ・監督 ローランド・ズゾ・リヒター
 ・出演 フェリシタス・ヴォール、ジョン・ライト、ベンヤミン・サドラー
 ・公開 4/21(土)より、シャンテシネほか全国順次ロードショー
 ・公式サイト http://dresden-movie.com/
 ・ジャンル 洋画

記:林田久美子2007/02/01

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