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おもいでリスト」にエントリー確実、公開前の話題の映画。懐かしいシーンの掘り起こし。「独断と偏見」「愛と思い込み」をこめてお届け
『カメレオン』監督インタビュー


林田 そのハードな撮影で、藤原さんの様子などはいかがでしたか?

監督 「痛い」とは一切言わないんですよ。でも、階段“落ち”ならぬ階段“滑り”は一番痛かったみたいですね。
本番で一度は成功したんだけど、「もう1回」って言ったら「え?! なんでですか?」って。やりたくなくてしょうがないんだろうね、背中痛いし、腰打つし。「なんでですか?」って聞くから「痛そうな顔してたから」ってリテイクしてもらったよ(笑)。2回目は何てことない顔でやってのけたからね。役者根性だね。


林田 監督がこの映画で一番言いたかったこととは?

監督 王道映画としては、メッセージが先走ると面白くなくなっちゃうんだけど…そうだな、ある若者の孤独のあり方、そこで起こる悲惨な事件、でもそこから必ず救われていくんだということ。同じ匂いを持った女性と運命のなかで出会い、救われていく話なんですね。社会には馴染んでないし、人間関係は屈折したものしか持っていない。じゃあ、そんななかで人は生きていけないのか? と思ったときに、世の中のルールと反したり、それを遠ざけたり、そんなふうな生き方でも生きていていいんだよ、ということかな。
主人公とその恋人が銀座の雑踏を2人で歩くシーン、あれはとっても周りからは浮いているんだけど、でも、それでいい。全然浮いていいんだよ、という話なんだよね。目立つ存在がいるとうっとうしいじゃないですか。特に日本は、出る杭は打たれるというか。埋没してたほうが生き易いというか。人とギクシャクすると自分が疲れるというか。そんなふうに諦めてることって多いんじゃないかな、って。そうした生き方に対する救いですよね。


林田 多くの現代人に当てはまるものを主人公は持っていますよね。

監督 映画っていうのは多少誇張して描いたり、フィクションも織り交ぜたり、そうやって自由に見せるもので、大概の人たちはそうした経験をすることなく暮らしているのかもしれないけど、映画によって、普段は決してすることのないことを疑似体験できますよね。そんな空気を感じ取ってもらえたらいいな、と思いますよ。昨今よくある「恋愛モノ」や「病気モノ」に頼らない作品ですよね。

林田 女性から見たときにも、「カッコイイな〜」って思えます。ここまでの人ってそうそういないですから。

監督 初めは「こんなヤツいないよ」で、中盤で「あ、いるかもしれないな」、終わるころに「いて欲しい」って、そう思えてもらえたら、僕としては成功ですよね。この映画の楽しみ方というか。ただ、その段階まで持っていくのはとても難しいですけどね。最初から「この人ステキ」で始まっちゃうと、映画の流れとしては冗漫なものになっちゃうから。


林田 そもそも映画監督になろうとしたきっかけは何ですか?

監督 家が代々「仏師」といって、仏像の彫刻師だったんです、祖父までは。だから僕が小さいころ、そういった道具をいろいろ渡されて、見よう見まねで彫ったりしていました。幼いころから「物を作る」ということが好きな子だったんです。
また、僕が生まれた大阪の堺市は映画館がたくさんあって、よく観に連れていってもらいました。ただ、物語に関心がありつつ、「これどうやって作るんだろう?」といった方も興味が湧いて。中学時代は8ミリで運動会のドキュメンタリー映画を撮ったり、高校時代も出し物が自主映画だったりして、素人なりに脚本なんか書いてみたりして。そんな時代に育ったせいですかね、高校の頃から映画監督にはなりたかったですね。


林田 監督にとってのそうした映画人生のなかで、本作はどのような位置づけになりましたか?

監督 いろんな映画をやってきて、テーマ的にもコメディ調からハードなもの、社会性のあるものまでやってきましたが、こと本作に関しては、映画を撮るという原点に還れる作品でしたね。
これまでは、映画監督って何だろう? と自問自答していたのですが、本作は「映画監督って、映画撮るのが仕事なんだ〜(笑)」と再確認できたというか。すごく職人的なものを要求された思うんですよ。ドラマがちゃんとあって、それが今の流行の物語ではなくて、でも若い子たちが主役で。政治的要素もあり、素手のアクションもあり、ガンアクションもあり、カーアクションもあり、恋愛も入ってて。映画が持っている要素を短い時間の中で凝縮して、すべてプロフェッショナルとしてやるように依頼されたというか。映画監督の職業としての自覚ですね。
本来、自分が映画館へ映画を観に行ったときの興奮とか感動とか驚きとか不思議さとか、そういうものを今、作る側に向かって提供するんだなぁ、と。


林田 やり遂げたという満足感があるのでしょうか?

監督 いえいえいえ。公開が始まって、お客さんの批評や感想、そうしたものを感じ取ってやっと終わるから、まだそれはないですね。
作品を育ててくれるのはお客さんですから、放り投げられるか、大事にしてもらえるか、そんな心配はまだありますね。

林田 監督としては、冷たくされるとやはり悲しいですか?

監督 当たり前じゃないですか(爆笑)。


林田 撮影で苦労された点などはありますか?

監督 年寄り3人と若者2人で東京音頭を歌うシーンがありますが、最初はお客さんが入っていないシーンを見せて、そのあとカメラの動きに合わせてエキストラをガーッと凄い勢いで入れていって。あれは1カットで撮ったんです。スリリングな撮影でしたよ。


林田 最後に、「あそびすと」の読者に一言。

監督 (しばし考えてから)
「皆さんに会って欲しい人がいます。ぜひ、会いに来てください。あまり周りにはいないタイプですが、会ってもらえればきっと気に入ってもらえると思います」かな。


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 ・監督:阪本順治
 ・脚本:丸山昇一
 ・出演:藤原竜也、水川あさみ、塩谷 瞬、豊原功補、萩原聖人、平泉 成、犬塚 弘、
     谷 啓、加藤治子、岸部一徳
 ・公開:7/5(土)、全国ロードショー
 ・公式サイト:http://www.c-leon.jp/
 ・ジャンル:邦画


(C)2008「カメレオン」製作委員会
記:林田久美子2008/07/04

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