シネマピア

渇き

おおかたのバンパイアものと言えば、ファンタジックだったりロマンチックだったり、はたまたホラー的要素が強かったり……と、「この世ならざる」側面を重点的に描いている作品がほとんどだ。だが本作は違う。人間の血液しか食料のない吸血鬼が本当に現代の現実社会に存在したらどうなるのか。そんな彼らの、無様で滑稽で悲しい性(さが)を、飾らない演出で洗いざらいブチまけたのが本作である。

病院で重病患者たちを看取ることに疲れ果て、自らの祈りが届かぬ現実に無力感を募らせるカトリックの神父、サンヒョン。謎のウイルスを撲滅するため、ワクチン開発の実験体として自らの体を研究所に捧げた彼だが、正体不明の血液を輸血され、バンパイアと化してしまう。その後、ひょんなことから薄幸の美しい人妻テジュとめぐり合い、急速に惹かれ合っていくのだが……。

よくよく考えてみれば、バンパイアという生き物はかなり生き辛い性質を持っている。食料は血だけ、太陽光にあたれば死に至ってしまう。そんな厳しい制約のなか、自らの命を生きながらえさせるのは並々ならぬ苦労だろう。その苦労の部分をクローズアップし、彼らが現実社会に放り出されたら確実にぶち当たるであろう様々な「壁」を、細やかかつ大胆な手法で描ききったのは、さすが『オールド・ボーイ』などの“復讐3部作”で世界中から喝采を浴びるパク・チャヌク監督の手法だ。細部まで気の配られたディテールはまさに職人芸とでも言おうか。そのおかげでさらに作品にリアル感が増し、観客はその世界観にどっぷりと浸って彼らの不幸感を堪能することができる。
また、同じ「抑圧された人生」を送ってきたとは言え、倫理観もモラルも持ち合わせた神父と、虐げられた過去を払拭するかのように欲望のまま突っ走る人妻は、惹かれ合っているにも関わらず正反対のベクトルを根底に持ち合わせているため、その化学反応はハンパなく彼らの人生を狂わせていく。設定はファンタジーだが、本質は究極の人間ドラマなのだ。

「制約を受けた人生」は決してバンパイア特有のものではなく、我々人間にも十二分に共通する部分がある。カンヌ国際映画祭でも審査員賞を受賞するほか、数々の映画祭でも余裕の受賞を見せた本作。ぜひ、劇場でご堪能あれ。

渇き(DVD)
監督:パク・チャヌク
脚本:パク・チャヌク/ソョン・ソギョン
出演:ソン・ガンホ /キム・オクビン /シン・ハギュン/キム・ヘスク
配給:ファントム・フィルム
ジャンル:洋画
公式サイト:http://kawaki-movie.com/

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エンタメ シネマピア   記:  2010 / 02 / 19

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