シネマピア

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

20121205cpicm.jpgトラとともに海上を漂流した少年、パイ。どうやって彼は海での遭難という危機から生き延び、どうやってその長い時間を猛獣と共生することができたのか……。世界各国でのベストセラー小説『パイの物語 』を、『ブロークバック・マウンテン 』でアジア人監督として初めてアカデミー賞を受賞した名匠アン・リーが、『ハルク 』で培ったCG経験を活かし、得も言われぬ美しい映像で描き出した超絶スケールの物語だ。

20121205cpic1.jpg小説の執筆に行き詰ったカナダ人のライターは、ネタ探しのためにインド系カナダ人のパイの体験談に耳を傾ける。父親が経営する動物園で生まれ育ったパイたち一家らと動物たちを乗せた船が、深夜の洋上で沈没したというのだ。命からがら救命ボートに乗ったパイだが、そのボートには猛獣のトラも同乗していたというのだった……。

円周率の呼び名の少年、パイ。彼は宗教上の理由から根っからの菜食主義者だが、飢えから来る必要に迫られて肉食となる描写には、ベジタリアンではない方でもグッときてしまうだろう。ベジタリアン曰く「動物が殺されて食べられるのが可哀想」ならば、私なんかは「植物だって体を切られて食べられるのは可哀想では? ならば植物だって食べちゃいけなくて、砂か石を食べるしかないのでは?」等とひねくれた考えを以前から持っていたが、ベジタリアンがベジタリアンたる理由は実は他にもあるらしく、歴史上の偉人にもベジタリアンが多く存在している。長生きや健康に興味のある方はぜひ、「ベジタリアン」「理由」等で検索されたい。

のちに、「撮影をハリウッドでは行ないたくなかった」と告白した監督。すべてを熟知しているハリウッドのスタッフよりも、台湾チームと新たなことを模索していくやり方を選んだのだという。そのかいあってか、いつものハリウッドらしからぬ、“異国”のテイストをたっぷりと含んだ情緒ある作品に仕上がっている。映像のスケール感といい、幻想的な様相といい、まるで夢を見ているかのような美しさ。また、驚いたことにトラはその殆どがCGで作られたという。監督は「トラの擬人化を避けた」とも語っているが、それは大、大、大正解! だ。ひしゃげた性格の私なんぞは、マンガみたいな動物が出てきただけで一気に興ざめしてしまうのだから。

前半の前置きが永遠に続くかのように長く感じるし、また「このトラ、マジシャンか?!」と思ってしまう不可解なシーンが1カ所あるにはあったが、それ以外は素晴らしいの一言に尽きる。少年とトラとの心の距離が少しずつ縮まっていく過程もまた圧巻だ。美しい映像もみどころだが、ラストに少年が驚愕の内容を語る地味なあのシーンこそが、実は本作の最大のクライマックスではないだろうか。少年を演じたスラージ・シャルマは、3000人の中からオーディションで選ばれたラッキーボーイ。物言わぬ瞳で感情を表すという飛びぬけた才能で演じるその様は、とても演技とは思えず、そしてとても無名とは思えない堂々の実力だ。

アバター 』のジェームズ・キャメロン監督をもってして「これこそ3D映画のあるべき姿」と言わしめたほどの本作。ぜひ、大劇場で、3Dでの鑑賞をお薦めする次第だ。


原作:ヤン・マーテル『パイの物語』
監督:アン・リー
脚本:デヴィッド・マギー
出演:スラージ・シャルマ/イルファン・カーン/アーユッシュ・タンドン/ゴータム・ベルール/タブー/レイフ・スポール/ジェラール・ドパルデュー
公開:2013年1月25日、TOHO シネマズ日劇他全国ロードショー
公式HP:http://www.foxmovies.jp/lifeofpi/
 

©2012 Twentieth Century Fox















エンタメ シネマピア   記:  2012 / 12 / 05

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