はいコチラ、酔っぱライ部

ひとり芝居の夜

2012 / 08 / 28

掲載を1回スキップしてほぼ一カ月ぶりの更新です。皆さん夏休みはいかがでしたか。楽しくお過ごしのことを願っておきますが。
僕はといえばなんだか暑くてボンヤリしているうちに9月の声を聞くようで、昔のように海だ山だと浮かれていたころが懐かしいようでもあり、あえて混雑するところへ出かけるのもなんだか億劫でもあり、「モノグサ」と言われれば反論の余地もない、ただ暑さを紛らわすために酒ばかりを飲んでいた、という凡庸な夏のひと月でありました。
さて、そんな凡庸な夏の合間には「ひとり芝居」。今回は先年亡くなられた井上ひさしさん作、「こまつ座公演 芭蕉通夜舟」の見物に出かけたという話です。

伊賀上野に生まれた松尾芭蕉が13歳の年に当地・藤堂家の台所方(料理人)として仕えたころから描き始めてのちに「俳聖」として名を挙げるも「しょせん『人はひとり』」と悟り、「奥の細道」を経て旅の空に客死するまでの30数年あまりを1時間半で描くという、すばらしくテンポのいい舞台。松尾芭蕉を歌舞伎俳優・板東三津五郎さんが(ほぼ)ひとりで演じきってなかなか軽快な舞台でした。
「ほぼ」というのは4人の黒子がそれをサポートしているから。全36場という超速度の場面転換も彼らがいなければ厳しいことだったろうこと、容易に想像できます。鵜山仁さんの演出の成果でしょう。
松尾芭蕉については過日こちらで書いた「文人悪食」の著者・嵐山光三郎さんが「悪党芭蕉」という本を書いていて(これもオモシロイ!)、これによる知識しかなかったので何やら深刻な舞台を予想して足を運んだものの、当夜の舞台は井上作品独特のユーモアと可愛げがありつつも最後はなにやら「無常観」を漂わせて幕が下りるという、なにかストン、と胸に落ちるようなものを感じる終演で、2度にわたるカーテンコールにも納得したものでした。

観ながら考えていたのは「ひとり芝居」のこと。思い出してみると、けっこうな数の「ひとり芝居」の舞台を見ていることに気づきます。「唐来参和(とうらいさんな)」(小沢昭一)、「荒川の佐吉」(島田正吾)、「化粧」(渡辺美佐子)......(敬称略)、どれも深く強く心に残っている作品ばかりです。そういやイッセー尾形さんやオオタスセリさんのパフォーマンスなんかもひとり芝居。
モノローグとト書き、そして台詞廻しと台本を巧みに駆使して状況を展開させるのはかなりの演技力を必要とするものでしょう。反面それが自己陶酔に陥る危うさも秘めて(それは「ひとり芝居」には限らないけれどその危険性が高くなるような気がするんですね)、だからこそその相関関係が上手にはまったときには客席に座る人間の脳にその記憶が深く刻まれるのかもしれません。
と、ここまで書いて気づいたのは落語。座布団一枚、扇子と手拭い一本ずつ。この道具だけで高座にかけるのはまさしく「ひとり芝居」。あらためて落語の底力にも思いの至る夜でした。
いやまったく我ながら観ながらいろんなこと考えます。いつも「終演後の呑み屋」のことばかり考えている訳じゃないのよ。一応言っておきますけどもね。

ところでこの「芭蕉通夜舟」。「こまつ座初演」と書かれていて「おや?」と思ったものですが、調べてみたらこの作品、元はといえば1983年に僕も観て感動した、かの「唐来参和」を演じた「シャボン玉座・小沢昭一さん」のために書かれた作品だそうですね。もちろん観ていません。いやぁ、小沢さんでも観たかった。一期一会。ライブはこういうときに後悔します。もっともそのころはこの作品が上演されたことすら知りませんでしたが。
と、いうような話をしつつ終演後はちょいと歩いて焼鳥屋。妻とビール中瓶を半分コして日本酒二合と酎ハイ三杯。日本酒一合350円てすごく安くね? と喜んだめでたい結末であります。

d20120828_pic.jpgそんな楽しい夜の記憶を抱きつつも、処暑を過ぎても出先から自宅までの道のりで汗だくな毎日。シャワーを浴びてビール、ビール......な時の涼やかな一品「ゆで豚のゴマだれがけ」でプシュー。
夏バテで気が抜けた訳じゃないですよ。第三のビールの缶を開ける音です念のため。ホンモノのビールと違って「プシュ!」じゃなくて「プシュー」ってなるのよね、第三は。なんででしょう? と疑問を投げかけてまた再来週。

【Panjaめも】
松竹のサイト歌舞伎美人での公演紹介
9月2日までですがすでに全公演チケット完売だそうで。こまつ座人気、あいかわらずスゴイです

●小沢昭一百景「いつものように幕が開き
「ある日の唐来参和前説」所収。いや、コレが実にオモシロイ











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