はいコチラ、酔っぱライ部

忘却の桜

2013 / 04 / 09

東都では桜の季節はおおむね終了。みなさんお花見には行かれましたか。行ったとしても花を見ずに手元の盃ばかり見ていた方が多かろうこと、容易に想像がつきますが、いかがでしょう。

僕は花見というと寒いし混んでるし、ブルーシートをたたんで居酒屋へ移っても高いわ酔っぱらってるわでもうヨレヨレ......あまりいい思い出がありません。
いきおいあらためて「花見」というのはあまりしない年が多くなって、今年も仕事場へ向かう途中や出かけた先の道すがら、思わず出会った満開の花を「ほほう」と見上げただけで、けっきょく改めての「花見」はしませんでした

晴れてぽかぽかした日にはようやく窓を開けて車を走らせるようになるこの季節、桜並木の下を走るうちにヒラリと花びらが舞い込んでくる。そんな風情のほうが好きなのかもしれません。

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今回は「水菜とイカのサラダ」。美味しそう。
レシピはおしまいに
昨夜も明治通りを渋谷から恵比寿方向に走らせていたら、あの辺りの街路樹が「枝垂れ桜」で、思わず「夜桜見物」をさせてもらいました。知らなかったなぁ。あの辺りの街路樹が枝垂れ桜だったなんて。粋ですよね。いい趣味してる。

ところでこんな風にこの季節になってはじめて「おお、この木は桜だったか」なんて気づく、あるいは「ああそうそう、これ、桜だったね」なんて思うこと多くありませんか?

僕は毎年そんな風に感じるんですよね。電車の車窓から見える遠くの景色。いつもは街並みの間に緑がポツポツと見えているだけだったのに、この季節になるとピンク色のこんもりした木々があちこちにあって「桜ってこんなに多かったんだ」と思うんです。

でも散ってしまえばまた緑の葉が茂る木に戻る。近くで木肌や葉の形が見える距離ならまだしも、遠くの風景ではそれもわからない。また5月の声を聞くころにはその存在は意識から消えてしまう。そういうことが多いんですね。

そんな桜の開花がちらほらと聞こえてきた先日、新歌舞伎座完成記念による開催と思われる「歌舞伎展」(サントリー美術館)へ行ってきました。「なんか古文書や絵巻物が並んでるだけ、と聞いたからどうかなぁ」と期待薄で行ったにもかかわらず、いやいやどうして。なかなかおもしろい展示でした。

 

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「出雲の阿国」がその「祖」とされている歌舞伎の芸。その様子を活写したと思しき絵巻物に始まり豊国や国貞らによって描かれた当時の名優の役者絵まで。思えば当時の屏風絵や錦絵はいわば「写真」の代わりとして情報を伝える、残すという役割も持っていたわけで、写実という点での機能はともかく、その雰囲気や空気感は充分に見て取れます。昔の役者さん、顔が大きかったんだなぁ。あ、それは今でも同じか(笑)。

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興味深い出展揃いだった「歌舞伎展」
なかでも興味深かったのは「楽屋の様子」を描いたもので、今も変わらぬ道具を使っている様子や、当時の役者達がくつろぐ様子など、歌舞伎好きならいくら見ていても飽きが来ないものばかりです。

また観客達の様子を写した展示もなかなかで、役者が花道の七三にいようが舞台正面で見得を切っていようが、客席では弁当は食べるわ酒は飲むわ、挙げ句に赤子に乳を与えている母親までいる始末。もう全身全霊「芝居の空間」を楽しんでいる様子で、こちらはなんだか羨ましいような気持ちになりました。

あんな空間で演技をさせられたら役者は鍛えられるだろうなぁ。あの人達の視線を自分に集中させるにはかなりの力量が必要だ。経験と鍛錬。かなりのものだったと想像します。

翻って現代の観客席。これがまぁ時折気になることがありまして。
たまにいるんですよ。前のめりになって「研究」するように見物する方。中には筋書きにメモを取りながら見ていたりする。まぁ人それぞれなんでしょうけど僕にはよくわからない見物の態度です。

そういや一度、見物中に「芋ケンピ」を食べていたらそんな風な方に怒られたことがあったっけ。あまり音がしないように気を遣って食べていたつもりだったんですけどね。案内の女性に「通報」されて注意を受けました。隣にいるんだから言えばいいのにねぇ。
加えてその人達、幕の最後に舞台上では「絵面引っ張りの見得」をしているにも関わらず、その最中に席を立って帰って行った。あれには驚いたなぁ。なんだったんだろう。不思議でした。

また一方、まるで「茶の間」にいるようにぺちゃくちゃ喋りながら見る人もいます。
「あらぁ、あれ亡くなった富十郎さんの息子でしょう? こないだテレビで見たわぁ」
なんていいながら見る。これはこれで迷惑で、さすがの僕でも注意したくなる。

両極端ですよね。もっと気楽に、しかも上品に歌舞伎は見物したい。とりあえず芋ケンピはやめます。ミカンもね、あれはイケナイですよ。柑橘系の香りが周囲2〜3mにね。気をつけましょう(笑)。

 

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ところで新歌舞伎座。ついに開場しましたね。今は開場したばかりなので人気も注目度も高い時期。先日「売れ行きが悪い」と心配をした「柿葺落(こけらおとし)四月大歌舞伎」も、報道やアナウンスの甲斐あってか、さすがに完売状態。けっきょく僕が新歌舞伎座に足を運ぶのはずいぶん先のことになりそうです。

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先日お目見えの新しい歌舞伎座。
やはり絵になりますね
でもですね。ここで待てよ、と僕は思うわけですよ。これ、ひょっとして「桜」と同じなんじゃないか? と。そして「新しく開場!」の宣言も遠くなり、いつもの恒例興行に戻ったとき、はたしてこの観客の何割が客席に残っているだろうか、と。

つまり。

「開花」で注目したその樹木、それが桜の木であったことをアッサリ忘れるかのように「歌舞伎」の存在を忘れてしまう人達がいるんではないか。
自分のスタンプ帳に「ワタシハ新歌舞伎座へ行ッタ」というハンコをひとつ押して、それを「済み」の箱に入れてしまいはしないか。
「パッ」と盛り上がって「パッ」と消える。そういや「賑やかし」の客を「桜」とはよく言ったものです。

僕はたぶん、上気して浮き足だっている小屋の空気が落ち着くころ、いつもの芝居をいつものように研鑽した演技で淡々と演じるようになったころ、そっと足を運ぶのではないかと思っています。そうすることが「芸」を次の世代につなげることができる行為だと思っているから。それが自分の「見物スタイル」だと思っているから。静かにそっと、しかも永く繋がっていることが大事。人間関係でも夫婦でも「長いつきあい」ってそういうもの......でしょう?

や、もちろん「タダ券」もらえたら行きますよ、明日にでも(笑)。
はっきり言いますけどね。
 

「柿葺落興行」、チケット高杉!
 

と本音をぶつけたところで「財布の寂しい季節」(「いつもじゃん」て言うの禁止)のレシピは「水菜とイカのサラダ」でひとつ。

d20130409_pic4.JPGお手ごろ価格の刺身用イカを見つけたら、ざく切りの水菜と共にサラダにしてドライな白を! アンチョビがあったら少し混ぜるのもいい考えですね。これとオムレツ、お気に入りのパンでもあれば幸せな夜になること請け合い! てなわけでまた次回。
不要の歌舞伎座チケットは随時受付中です。

【Panjaめも】
●もう終了してしまっていますが、開催時の歌舞伎展の情報

「桜(偽客・おとり)」の語源(Wikiですが)

「絵面引張の見得」

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