はいコチラ、酔っぱライ部

唐揚げ中毒

2014 / 07 / 01

その日の朝。「そうだ、唐揚げ食べよう」と思ったのである。

あの唐揚げというのは何かの瞬間ヤミクモに食べたくなって、なんというかこう「矢も盾もたまらなくなる」のはどうしてなんだろう。

いつもならお手軽に肉屋の総菜売り場で鶏肉のそれを調達してお茶を濁してしまうのだが、その日に限っては「鶏でなくてもいい、何かおいしい唐揚げを」という風に「唐揚げの思い」にとりつかれてしまった。突発的「唐揚げ中毒」発症だ。

おそらくはその日をさかのぼること二週間くらい前、ある雑誌で読んだレシピを元に「鶏の唐揚げ」を作ってみたら、思いの外おいしかったという経験があったからだろう。

レシピといっても至極簡単で、一口大に切った鶏肉を卵と醤油を合わせた攪拌した液に20分ほど漬けこみ、粉を付けて揚げるだけというもの。

ところが「昨晩は唐揚げにした」という話を友人にしたり書いたりすると「家で揚げ物はしたくない」とか「面倒くさい」という反応が多く返ってくる。

むろんそう言われてしまえば返す言葉もないのだが、サクサクとした衣をまとって噛めばジュウ、と肉汁がしみ出てくる柔らかな肉を頬張りながらビールをグイ、と流し込んだときのあの「熱い」とも「冷たい」ともつかぬ、むしろひたすら「旨い」と脳が喜んでいる感触は、その筋の専門店へ行くならさておき、家で揚げたものを食卓に載せるのが最も手軽で、しかも正しい道だと考えるのは僕だけではないはずだ。

d20140701_pic1.jpg
こちら見つけた“サメ”で作った唐揚げ。
レシピは鶏肉のものですが、サメで発見した衣の秘密に注目を

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さて、その日の仕事の帰りがけ、いつものスーパーに立ち寄って冷蔵ケースの周りを周回、バスケットに一口大に切られて「唐揚げ用」と書かれた鶏肉のパックを放り込んで、今度は鮮魚コーナーを眺めていたと思っていただきたい。そこに見慣れぬ魚の名前が書かれたラベルが貼られたパックを見つけたのである。そこにはこう書いてあった。

「モウカザメ」ワンパック228円。さらに「2割引」のシール。やたら安いのである。「モウカザメ」? 見た感じではメカジキのような外観だが指で軽く押してみるとそれよりはやや弾力がある。

その時だ。「これは唐揚げに向いているのではないか」と、脳のどこかで誰かがささやいたのは。鶏肉のパックを元の冷蔵ケースに戻し、2パックのモウカザメをバスケットに入れて意気揚々と帰宅した。

さて。家に帰って妻のPCで探ってみると、煮付け、ソテー、照り焼きなどのレシピが並ぶものの、どうやら唐揚げにも向いているようである。字で書くと「毛鹿鮫」。正式名称を「ネズミザメ」という。

東北地方での呼び名の「モウカ」は「真鱶(まふか)」がなまった読みの当て字らしいが、驚いたことにこの鮫、日本を重要な産地とするあの「フカヒレ」の持ち主であった。

つまりフカヒレを採った後の残りだからこんなに安いのではないか、というのは僕の勝手な想像だが、当たらずとも全くの見当違いではあるまい。むしろそんな鮫の肉が東京のはずれにあるスーパーで売られていることの方に驚くべきで、こちらもおそらくはロジスティックスの発達が産んだ副産物であろうことは容易に想像がつく。

昔は「鮫の肉」なって売っていなかったもんなぁ。そんな風にして子供の頃には見なかった種類の鮮魚や精肉が売られるようになったのは、ひとえに運送会社の経営努力と配達ドライバー諸氏の懸命の労働の結果であります。感謝して調理する。が、ここで軽くトラブルが発生。

 

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台所のまな板の上にモウカザメを並べてみる。

WEB記事によれば「匂いが強いので裏表に塩をして15分くらいおき、染み出てきた水分をよくぬぐってから調理する」と書いてあるのだが、鼻を近づけてみてもたいして匂いはない。

いちおうインストラクション通りにこの工程は省かなかったが、時間がないときはおそらくスキップしても問題ないだろうと思う。ボウルに割り入れた卵一個に大さじ一杯ほどの醤油を入れてかき混ぜ、ひと口大に切ったモウカザメを漬け込んでいく。ここまでは前回「鶏の唐揚げ」を作ったときと同じ流れである。違ったのはここからだ。戸棚を開けてわかったこの事実。

「薄力粉 品切れ」

がーん。あるのは妻がいつもフォカッチャを作るのに使う強力粉のみ。

一瞬迷ったもののすでに「お腹はグーグー」の上にスーパーまでは片道徒歩7分の往復15分。ままよ、と強力粉で揚げてみることにした。いやそれが奥さん。意外な好結果につながったのでありますね。

「生け贄」(揚げ物をするときの最初のひとつをこう呼びます)の段階からもう違う。

はぜない、衣が広がらない、薄力粉を使ったときよりも油が汚れない、まさに揚げていて楽しい「強力粉」に軍配を揚げたい、もとい、あげたいと思ったのはこの瞬間だった。

以来、鶏肉を揚げるときにはあえて強力粉を選択するようになった。かのイタリアンの巨匠、落合シェフも「ムニエルや揚げ物には強力粉のほうが向いている」と言っている。

たしかにその通りで、見た目はあの「ケン●」の「フライド●キン」にも似てカリカリ、噛めばサクッと中はジューシー、食べてみても旨い。おすすめです。粉にハーブを入れるのもいいかもしれません。

さて、モウカザメ。

淡泊と言えば淡泊、鶏胸肉にも似た食感は言われなければ鮫とは気がつかない味だった。懸念された匂いもほとんどなく(目をつぶって副鼻腔を探るとかすかに感じるくらい)、熱々をビールで味わいながら「今度は唐揚げじゃなくてなんか他の料理をしてみよう」と決心することになったのであった。

先日もサーファーが鮫に噛まれる事故がありましたね。
あれはホオジロザメともシュモクザメとも言われているけれど、このモウカ(ネズミ)ザメも人を襲うらしい。「攻撃は最大の防御」。襲われる前に食べてしまえ(違)、ということでひとつ。

 

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ところでこれを食べながら見ていたW杯サッカー「日本―コロンビア戦」の再放送。

僕個人は熱心なサッカーファンではないけれど、ゲームとしてはアメリカン・フットボール同様、試合自体を見るのは好きである。

なのでついつい見ていたんだけれど、見ているうちにあのW杯サッカーの喧噪、というか前騒動というのはつくづく「阪神を報道するデイリースポーツ」紙に似ているなぁ、と思いましたね。

世界ランキング47位のチームをまるで「優勝候補の一角を担っている」ような書き方であおって屋根の上まで登らせておいて、終われば梯子を外す、という報道はデイリースポーツの書く虎報道と同様、と僕の目には映ったのである。

ほんとうはもっと根本的な変化や意識を改革しなきゃいけないんだけど、そこに手がつかない、経営が(それが球団であれ、日本サッカー界の収益であれ)優先されてなにも変わらないところまで一緒。

まぁ虎ファンの場合、読む方も「デイリーだから」と知って読んでいる、いわば「確信犯」としての関係を保っているわけだけれど、ことサッカーに限って言えば日本のメディアがこぞって全面的に「デイリー化」して国民を「欺く」とまでは言わないけれど、なんだか誤った印象を与えていることにその罪深さを慮ってしまったのだ。

まぁそれを鵜呑みにしているわけではない、と信じたいけれど、この偏向傾向がサッカーについてだけでないようにも思え、世界の中のニッポンはやっぱりちょっと「ガラパゴス化」してるんでないの、とつい口をついた次第。

というわけで今回のかんたんレシピはもちろん鮫の後に試してみたら予想通りおいしかった「鶏の強力唐揚げ」を。油の温度は「生け贄」が教えてくれます。ホントに簡単でおいしいのでぜひ一度。

d20140701_pic2.jpgというところで今回はこの辺で。そろそろ梅雨も明けてほしいですね。次回の更新は7月15日の予定です。

【Panjaめも】
ネズミザメについての記述(Wikiですが)

こちらは流通側からの記述。詳細です

こちらは三陸で上がるネズミザメの記事。
 とはいえ日本近海ならどこでも見られるらしい。

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