はいコチラ、酔っぱライ部

雷雨が思い出させてくれたこと

2014 / 07 / 29

先週の木曜日。夕刻の空が一天にわかにかき曇り、梅雨の終わりを告げる雷雨がやってきた。しだいに暗さを増していく空とにらめっこをしながら仕事場を出て帰宅の途についたが、最寄りの駅に到着したところでポツッと肩に雨が浸みる。しかし夕食のための買い物がまだである。

さすがに傘は仕事場にあったものを携えていたからそれをさして歩いて行き、雷雨の到着に間に合うかと一瞬ひるんだが、「えいままよ」とマーケットのドアを押して入り、手早く食料をカゴに放り込んだ。

会計をすませ、重いトートバッグを肩にかけて外に出ると大粒の水玉が地面の乱打を始めている。傘をさして身を縮め、荷物が濡れないように時折轟音と光が走る空を眺めつつ足早に玄関までたどり着いたとたん、ザブリと来た。なんとかピークが始まる前に家までたどり着くことができたらしい。

雨戸を開け、玄関に網戸をたてつけて暑気を溜め込んだ部屋に風を通し、夕食の支度を始める。熱波のようだった昼間の気温が日没後の空気と雨風で一気に下がり、キッチンに立って火を使っていてももうそれほど暑くないのはなによりである。

すこし外食が続き気味だったので冷蔵庫に溜まった半端な食材を片端から使い切りながら調理をしていく。

d20140729_pic1.jpg
今回は「チーズと豆野菜のホイホイサラダ」。
ホイホイ簡単にできちゃう一皿です
野菜室で発見したビニール袋に入れられた「ちぎりレタス」には一つだけ残っていたピーマンを細切りにして合わせたところへオリーブオイルをかけ回し、全体によくなじませたら塩と粗挽きの黒胡椒で味を調えて、白ワインビネガーをさっとかけてざっくりとあわせたコールスローにする。

この日の朝に冷凍庫から出しておいたラム肉の切り落としは、赤ピメント(妻が近所のスーパーの開店セールで買ってきた)のざく切り、野菜室に半個だけあった玉ネギを櫛切りにしたものと一緒にナンプラー、ニンニク、ナツメグ、タイム、ローズマリーなどで風味をつけた炒め物にした。この辺りがメイン。他に作ったサイドディッシュは次の通り。

・トマトと大葉の甘酢和え チリメンジャコのせ
・小松菜おひたし
・茹でドジョウインゲン おろし生姜添え
・キュウリと大根の糠漬け

だいたいこんなものではなかったかと思う。インゲンと小松菜にかけたタレは「ダシ・醤油・酒・みりん少々」を合わせて煮きってから冷ましたもので、このひと手間で単に醤油をかけただけのおひたしと一線を画した品としたのはこの日のこだわりである。

最後に仕上げたラム肉の野菜炒めを皿に盛った段階で缶ビールを開けてグラスに移しながら仕事場にいる妻に声をかけた。

階上から下りてきた妻がそそくさと調理道具を洗っている間に真空管に灯をともしてCDをトレイに乗せる。選んだのはアリソン・クラウスのこれだった。雨はまだ強く降り続いている。


Alison Krauss & Union Station - Paper Airplane

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テーブルについてビールで満たされたグラスを手に取り、暑かった一日を振り返りながらお互いの顔を見合わせて「お疲れ」とかかげて冷えた苦みのある液体を喉に流し込む。一日のなかで僕がもっとも好きな瞬間だ。

背後の窓と玄関の外からは激しい雨粒が庭にある植物の葉を打ちつける音と、ときおりの遠雷。スピーカーから流れてくるアリソンの唄声と雨音と雷鳴がまるでサウンド・エフェクトのように絡みあって何とも言えない。

目の前に並ぶシンプルな料理はもちろん自分で作ったのだから味は自分好み。そしてその料理に合うように調整しているのだから合わないはずがないグラスに入った酒と、昼間の暑さをぐっと下げてくれた雨音。

と、この時思ったのである。

気持ちがよくておいしくて耳も嬉しくて、心の底からゆったりとリラックスできるこんな空間。それは意識して作ろうとしてもそう易々とは作り出せない、偶然の産物なのではないか。つまりこんな思いがけない雷雨がもたらしてくれた「非日常感」、これと同じようなことが、ふと見過ごしがちな日常にはいつも潜んでいるのではないか。

そして、もしかしたら僕らは知らぬうちにそんな偶然がもたらした至上の瞬間や空間に身を置いていることを気づかずに過ごしてしまっているのではないか。

そんなことを考えていたらその昔、中国を旅したときのこと、あれは昆明だったか、宿のベッドでまどろんでいた早朝、廊下を掃除する女の子の高く澄んだ歌声が遠くから近くから響いてきた時のことを思い出した。

あの時、中国中南部、雲南の何とも言えない香りを含んだ独特の空気の中で、寝床に身を横たえたまま、その歌声を聞きながら「今この瞬間の気持ちと記憶をけして忘れまい」と思ったのだ。そしてその時の記憶は今も薄れず、昨日のことのようにときおり思い出しては、心癒やされる心持ちになるのである。

またたとえばある夜、街灯の山間部の国道で、月も雲に隠れた漆黒の闇の中をヘッドライトの灯りだけを頼りに車で疾走していたときの状況が、カーステレオのカセットテープから流れていた音楽(アル・スチュアートだった)と共に、深く脳裏に刻みつけられて、それからゆうに30年は時を経ているというのに、同乗していた4人の友人達との間で語りぐさになっている。これどういうことなのだろうか、と思うのだ。

それは音、空気の匂い、温度、湿度、そして視覚と皮膚感覚、人の体が持つすべての感覚器官を刺激されていることを看過せず、「感じよう」としなければ脳神経のまとまった信号として記録されないのかもしれない。その感覚をいつも開放してそして能動的に感知しようとしている必要があるのではないか。

おそらくはそれぞれの感覚器官の精度が高く、意識的に察知しようとせずとも向こうから入ってくる情報をそのまま感じ取ることのできた若い頃とは違って、年齢とともにそのセンサーが鈍化しているからなおさらそう思うのだろう。だからこそ。

「自らよ、こうあれかし」と願う環境と感情は、「いつも感応しようと意識している必要があるのではないか」、と夜の雷雨がもたらしてくれた贈り物に感謝をしつつ、これからもまた心新たに、と思ったのである。

まぁようするに「雷雨の音を聞きながらご飯食べてお酒飲んだらスンゲー気持ちよかった」、てだけの話なんですけどね。ちょっとしかつめらしく書いてみました。ついつい昔のことなんかも思い出して感傷的になりました。はい。

そんな今回のかんたんレシピは「チーズと豆野菜のホイホイサラダ」。「ホイホイ」は語呂がいいからそう呼んだだけで、他意はありません。ただ「カンタンにホイホイできる」くらいに思ってください。

d20140729_pic2.jpg 現在「クーラーなしでひと夏過ごせるかどうか実験」に挑戦中。まだつけてないよ。
負けるのはいつかしら。夏バテしないようにしないとね。問題は暑さよりも「アセモ」だったりするんだけど。

というわけで今回はこの辺で。次回更新は8月12日の予定です。

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