ikkieの音楽総研

第162回 洋楽編 Janis Joplin ―― 生きながらブルーズに葬られたシンガー、笑顔の下の魂の叫び

2016 / 08 / 17

リオオリンピック、日本選手団の活躍が凄いですねー。普段はさほどスポーツに興味がない俺ですが、毎度オリンピック期間だけはにわかファンと化し、寝不足もなんのその、毎晩テレビにかじりついております。さて、今回の音楽総研は女性ロックシンガーの草分け、ジャニス・ジョプリン をご紹介! 1970年に27歳の若さで亡くなってしまったジャニスですが、今もなお、彼女の影響力は衰えていません。
 
janis160817.jpgジャニス・ジョプリンは1943年生まれ、テキサス州出身のアメリカ人シンガー。60年代半ばから活動を開始し、1967年にデビューアルバム を発表。発売当初のセールスは不調で、さほど話題にもならなかったようですが、ジミ・ヘンドリックス なども出演したモンタレー・ポップ・フェスティバルでの情熱的なパフォーマンスが評判を呼び、それ以降はアルバムを発表するごとにセールスも上昇、ジャニスは時代を代表するスターになります。しかし、1970年、アルバム『Pearl』 をレコーディング中にドラッグのオーバードーズにより死去。デビューアルバムの発売からわずか3年後のことでした。

俺がジャニスに出会ったのは中学生の頃で、当然ジャニスは亡くなっていたんだけど、いろんなアーティストのインタビューに影響を受けたアーティストとしてジャニスの名前が挙がっていて、興味を持つようになってね。とくにブルージーなハードロックをプレイするアーティストが名前を挙げることが多かったから、きっと俺好みのサウンドに違いない、と聴いてみたのです。初めて聴いたのは『Move Over』 だったか『Piece of My Heart』 だったか......どちらにせよ、ジャニスの曲の中では比較的キャッチーでロック度の高い曲だったから、10代前半のロック少年にもわかりやすかったし、すぐに気に入りました。

80年代のキラキラしたサウンドに慣れていた俺の耳には、バックの演奏や楽曲そのものは少々古臭く感じたものの、ジャニスの歌声には衝撃を受けました。間違いなく女性の声ではあるものの、特徴的なしゃがれ声で(ハスキーというよりもしゃがれ声のほうがしっくりくる)、男性シンガーにも負けないほど力強くシャウトするジャニスの歌声は、俺がそれまでに聴いていた誰よりもロックだったし、ソウルフルだった。そして、その激しい歌声の中には切なさや哀しみが内包されてもいた。少なくはない優しさも。当時も今もブルーズのなんたるかをわかっているとは言えない俺だけど、コード進行だのといった音楽の形式としてのブルーズではなく、思想として、感情としてのブルーズ......それを感じる耳は持っています。ジャニスの歌の根底にはブルーズが流れている。

『Move Over』
 初めて聴いたのはこの曲だったかなあ。
高校生の頃、バンドでコピーしました。
 


ジャニスは、その迫力のある歌声からは想像もつかないほど内気で、とても繊細な人だったという。ドキュメンタリー などで見え隠れしたジャニスが抱える孤独感は、その繊細さや、容姿にコンプレックスを持っていたこと、少女時代に友達が出来なかったことが影響していたのかもしれない。いろんな文献に残る破天荒なライフスタイルも、それゆえ、だったのかも。そして、それらはすべてジャニスの歌から聴こえてくる。だからこそ、ジャニスの歌声は胸を打つ。ブルーズだろうがロックだろうが......、それこそ音楽に限らず、すべての芸術、自己表現には、その人物の魂が表現されていないと意味がない、と俺は思っている。ジャニスは技術的も非常に優れたシンガーだけど、どうしようもなく心を鷲づかみにされるあの歌声は、歌の巧拙ではなく、ジャニスの生き様から生まれているんだ。

『Ball And Chain』
 伝説のモンタレー・ポップ・フェスティバルでのパフォーマンス。圧巻!
 


この原稿を書くにあたって久しぶりにジャニスの映像を観て、こんなに楽しそうに歌う人だっけ......と驚いた。ライヴ映像を観ると、意外なほど笑顔が多い。曲調や、彼女の歌声から、しかめっ面で歌っていたように記憶を変えていたのかな。そういえば、残されている写真にしても、はじけるような笑顔ばかりだ。憶測でしかないけど、歌に出会ったことでコンプレックスを乗り越え、仲間も出来て、ジャニスは歌うのが楽しくてしょうがなかったんだろうね。それでも成功していく過程の中、バンドは何度も変わってしまうし、恋人との別れもあった。決して晴れない哀しみを抱えていたのに、歌うときには笑顔になってしまうジャニス。それほど歌うことが好きだったんだろうけど......、切ないなあ。

さて、どういう偶然なのか、9月にはジャニスの新しいドキュメンタリー が上映されるらしい。未公開映像もあるみたいし、楽しみだね。ただ、今回はそれに合わせて書いたわけではなく、たまたま女性のロックシンガーとカバーをやることになって、それならジャニスでしょう! と、ジャニスをあまり知らなかった彼女に偉そうにレクチャーをしているうちに、次はジャニスで......と思い付いたんだよね。映画のことは全く知らなかったんだけど、なんだかジャニスに呼ばれたような気がするのは、俺の気のせいかなあ。

『Me And Bobby McGee』
 こうやってやわらかく歌うジャニスも好き。
ライヴ映像を探してみたんだけど、
そういえばこの曲は亡くなってから発表されたから、
ライヴ映像は無いんだね......
 












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