ikkieの音楽総研

第72回 ロック映画編 ソラニン
――"青い"、けれども"救い"もそこにある

2013 / 03 / 05

さて、今回もロック映画を紹介するわけですけども、引き続き邦画です。ロック映画に限らず、最近は洋画よりも邦画に魅力的な作品が増えてきた気がしますねえ。俺の好みが変わっただけかもしれないけど……。今回紹介する『ソラニン 』もとても魅力的な作品。浅野いにおの人気漫画が原作ね。

大学の軽音サークルで知り合った芽衣子(宮崎あおい)と種田(高良健吾)。二人は6年間付き合っていて、同棲を始めて1年。ゆるゆるとした幸せが続いてるけど、将来への不安もある。「俺がどーにかする」との種田の言葉に後押しされた芽衣子は、勢いで会社を辞めてしまうが、種田も稼ぎの少ないフリーター、お互いの不安は募るばかり……。お察しのとおり、青いです、この映画も。青臭い! なんていうと怒られるかな。でも、実際そうなんだもん。自分で選んでおいてなんだけど、アラフォーの俺は今ひとつ感情移入しきれず、青臭いセリフが鼻につくことも多かった。これ、20代前半に観てたらドハマりしたかもしれないけど……というのが映画館で観た時の感想(今回観なおしてだいぶ変わったけど)。それでも、何かひっかかるものがあるのは間違いないです。じゃないとここで取り上げませんてば。

soranin.jpg主人公たちは大学を卒業して二年目だから、24歳か。そのころの俺もこうだったかな、と意識しながら観ていたけど、俺の世代のバンドマンは、アイデン&ティティの中島のように暑苦しいヤツらばっかりだったから、種田のような苦悩しつつも本気を出さない(ように見える)タイプに物足りなさを感じてしまう。種田率いるロッチの音楽も、俺がNIRVANA 以降だと感じる、世代が下のものだし……。あれ、俺みたいなのがこの映画を語っちゃダメ? 若いファンにオッさんは黙ってろって言われそうだ。でも、オッさんは話し出すと止まらないの! ははは。……ネタバレ御免で書いてしまうけど、故意なのかどうなのか、赤信号を無視して事故死してしまう種田には、何だかなー、と思わずにいられない。それでも、バイト中に「ギター弾きたい!」と叫んでしまうのには大いに共感したし、種田が抱える将来への不安も希望も、世代問わずに感じていたものだろう。表に出すか出さないかの違いなのかもね。他にも、友人たちと過ごす日々の描写や、ノスタルジックな多摩川の風景は胸に沁みて、若い時ってやたらと夜が長かったなあ、なんて感慨にふけってしまった。俺も歳を取りましたよ。しみじみ。

種田の死後、芽衣子は悲しみを胸にしまいつつ、アルバイト始めるんだけど、大きな喪失感は埋まるはずもなく、種田のギターを手にし、彼の遺した歌を歌うことを決心。ここからがこの映画の肝! 映画化するにあたって、原作者の浅野いにおは、キャストが実際に演奏することを条件に出したそう。ベースの加藤役はサンボマスター の近藤洋一(原作とそっくり!)なので本職だし、ドラムのビリーを演じた桐谷健太もドラムの経験者だそうだけど、宮崎あおいはこの役を演じることになって、一からギターを習得したとのこと。練習期間がどれぐらいあったのかはわからないけど、役を演じるだけでなく、楽器や歌まで練習しなきゃならないなんて、どれだけ大変だったろうか。それでも(お世辞にも上手いとは言えないけど)、ちゃんと弾いてるし、歌ってる。

また、このバンドが良いんだ。リズム隊がそれなりにしっかりしているから(当たり前だけどベースが凄くいい)、あおいちゃんの危うい演奏もかえって魅力になっている。役者さんたちだし、当然表情も素晴らしい。でも、ライヴならではの何かを感じていたのでは、と思わせるほど、ミュージシャンっぽい自然な表情なんだよね。まあ、これが実際のバンドなら、将来性は感じるかもしれないけど、今すぐプロになれるレベルとは言い難い。それでも、ライヴを観たなら、きっと心を掴まれるだろう。音楽は技術だけじゃない。音程が怪しかろうが、発声がマズかろうが、心に響く音楽もある。あおいちゃんの歌は心に響いた。それこそ種田が悩んでいたことの答えも、あおいちゃんの歌にはある……かもしれない。どうだろう。あるといいな。

ところで、人気作品を映像化したときのファンの反応って、圧倒的に否定的なものが多いと思うんだけど、この映画に限っては、そういう反応はほとんどなかったんじゃないかな。キャストはほぼイメージ通りだろうし、印象的なシーンの再現度も高い。それでいて、映画ならではの魅力……この映画の場合は特に、音が付いたってことだけど、それも文句ないはず。終盤のライヴシーンのためだけでも、この映画を観る価値あり! あ、でもね、今回久しぶりに観たら、前に観た時と同じシーンでやっぱり涙が出ちゃったんだよね。桐谷健太、いいなあ。そこも観たほうがいいし、そこへ至る過程も……まあ全部観て! アラフォー世代(それ以上も)にも、自信を持ってオススメしますよ。

※編集部注・文中「宮崎あおい」の「崎」は本来、旧字体を使用します




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