ikkieの音楽総研

第73回 ロック映画編 リンダリンダリンダ――ミュージシャンと"文化祭"

2013 / 03 / 19

今回紹介するロック映画は、2005年公開の『リンダリンダリンダ 』! 前回、宮崎あおいちゃんのことを書いたら、そういえばCMでブルーハーツ歌ってたなあ、あおいちゃんは出てないけど、文化祭でブルーハーツをやる映画があったなあ……と、この映画のことを思い出しまして。今回も軽音楽部の女子高生が主人公という、青春ど真ん中のストーリーですわ。もう認めます。僕、青春映画が好きーだー(ブルーハーツの『パンク・ロック』の節で)!

軽音楽部でバンドを組んでいる女子高生5人組。文化祭直前にギタリストが突き指をしてしまい、すぐに代役を立てようとしたヴォーカルの凛子と、それに反発したキーボードの恵が衝突し、バンドは分裂してしまう。それでもライヴをやるために恵は自分がギターを弾くと宣言、おまけに偶然通りかかった韓国人留学生のソンをヴォーカルに誘う……というストーリー。まあ、『スイングガールズ』や『ウォーターボーイズ』的なノリの王道青春ものだと想像してもらって間違いありません。それでも、そのふたつよりも淡々としているというか、飄々としていて、青春ものにありがちな暑苦しさや友情賛歌といったニュアンスは皆無。ちょっと不思議な瑞々しさを感じさせる映画です。恵を演じた香椎由宇のクールビューティ(笑)っぷりや、ソン役のぺ・ドゥナの透明感によるところが大きいのかな。

lindakindalinda.jpg彼女たちのバンドはもともとオリジナルの曲を演奏していたんだけど、ヴォーカルもいない、ギターはほぼ初心者が弾く……というわけで、必然的にコピーをやることになってしまう。そこで彼女たちが選ぶのがTHE BLUE HEARTS 。これは80年代の映画ではないので、彼女たちにとってブルーハーツは当然、昔のバンド。それでも『リンダリンダ 』は知っているのか、ラジカセでかかったリンダリンダにあわせて大騒ぎ。……ブルーハーツってそうなんだよなあ。世代関係なく、ロック好きの心を掴んじゃう不思議なバンドだよね。俺が初めて聴いたのは中学生のころで、DJが「デビューしたばっかりのバンドだけど、これは凄いバンドだと思う」と紹介した、リンダリンダを聴いた時の衝撃は忘れられない。

当時の俺はもうギターを弾いていてハードロックにハマっていたから、パンクは好みじゃなかったんだけど、「なんだこれ!」ってびっくりした。カッコいいとかいうよりも、とにかく、「すげー!」と。GUNS N’ ROSESのライヴを観たときの衝撃に近いかもしれない。ロックの初期衝動……憤りや、不満や、勢いなんかが思いっきり詰まったバンド。その衝動がリアルタイムでない世代にも伝わるんだろう。また、演奏もシンプルでストレートだから、初心者でもコピーしやすいし。でも、この映画に限っていうなら、シンプルだから、ってことだけじゃなくて、ブルーハーツだからこそ、なんだろうな。他のどのバンドでも違う気がする。あのバンドの楽曲だからこそ、この映画が成り立ってる。……ブルーハーツって、俺なんかからすると、なんかズルいって思っちゃうんだよね。狙ってああはならないし、特別すぎるんだもん。

さて、この映画でも香椎由宇をはじめとする俳優たちが実際に演奏しているんだけど、この下手さ加減がリアルで、ストーリーに入り込みやすいんだよね。ラストのライヴシーンはたぶんアフレコ。でも、たどたどしさが残ってるから、きっと別録りした本人たちの演奏をあてたんじゃないかなあ。また、その演奏が文化祭バンドらしさが出てて、すごくいいんだー。ペ・ドゥナの歌にしても、もとが片言だし、歌も上手いとは言えないんだけど、それがブルーハーツの朴訥とした雰囲気にもあってる。で、彼女がとてもいい! くるくるとよく動く大きな目がかわいいし、言葉や文化が違うせいで(天然?)、場の空気をあんまり読めない感じがとてもよく出てる。これ以外の出演作を観たことがないんだけど、今回観直してみて、他の作品も観てみようと思いましたことよ。

この映画を観ていると、文化祭の期間の浮き足立った感覚を思い出して、胸の辺りがなんだかあったかくなる。夜遅くまで学校に残っている非日常感や、ギターを学校に持っていく不思議。俺が通ってた学校には軽音楽部なんて無かったし、特にね。同級生に注目されて気恥ずかしいのと誇らしいのと。学校が大嫌いだったから高校なんて半分ぐらいしか行ってないんだけど(苦笑)、それでも文化祭は楽しかったなあ。……そういえば、ミュージシャンってずーっと文化祭をやってるようなものかもしれないね。もちろん文化祭みたいに楽しいだけじゃないけど、でも、幸せだと思う。

文化祭の楽しさと終わった後の切なさ、そしてブルーハーツの魅力を再確認させてくれる映画です。あ、少女たちの一時期の特別な美しさも……って、俺キモい? え、えーと、とにかく観てみてね。オススメしますよ。

※編集部注・文中「宮崎あおい」の「崎」は本来、旧字体を使用します




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