ikkieの音楽総研

第270回 洋楽編 THE VAUGHAN BROTHERS ―― 夭逝のブルーズマンが遺した、心温まる兄弟の競演

2020 / 09 / 29

このところ毎回同じような書き出しで恐縮ですが、コロナ禍いまだ収まらず......で、ライヴ活動は引き続き自粛中。ライヴの規模によってはもう再開していたりもしますが、もう少し様子を見ようと思っているところ。そんななか俺は何をやっているかというと、こちらも何度かお伝えしている通り、YouTube にカヴァー動画をアップしたりしています。最近はSKUNK ANANSIE をカヴァーしたんですが、Instagram にもショートバージョン をアップしたところ、なんと本家SKUNK ANANSIEのシンガー、スキンから「気に入った!」とのコメントが(驚)! 本家のお墨付き(?)カヴァー、ぜひご覧になってくださいね。

『Lately』
Skunk Anansie (Cover by Antlion) 俺はギターとベースと、ドラムの打ち込みを担当しています。あ、ミックスもね

 


この動画は俺自身で音源のミックスをしているんですが、なかなか気に入ったものにならず、2週間ほど深夜までずっと作業をしていました。そうするとやっぱり耳や頭が疲れてしまい、もう何も聴きたくない、なんてことになってきたりもするんですが、何も聴かずにいると逆にリラックスもできず眠れなかったりもしてね。なにかレイドバックしたやつを、と毎晩聴いていたのが、今回紹介するTHE VAUGHAN BROTHERSの『Family Stile 』でした。

the vaughan brothers.jpg 『Family Stile』は夭逝したブルーズギタリストのスティーヴィー・レイ・ヴォーンと、スティーヴィーの実兄ジミー・ヴォーン が共演した、彼らの最初にして最後のアルバムです。スティーヴィーは90年の8月、アルバムの発表を待たずしてヘリコプターの事故によって亡くなっており、予定されていた兄弟による初のツアーも当然中止になってしまいました。この年の5月から東京に住み始めていた俺は、来日もあるかもしれない、東京なら絶対に観られるぞ、なんて期待していたんだけど……。

『Family Stile』が発表されたのはスティーヴィーが亡くなった一ヶ月後。初めて聴いた時は、いつもの彼のアルバムに漲っている緊張感のようなものがなく、ずいぶんとほのぼのというか、のんびりしたサウンドにちょっと拍子抜けしたのを覚えています。それでも聴けば聴くほど味が出るし、何ヶ月間かは毎日聴いていたなあ……。発売から30年経った今もまったく飽きない。名盤だよ!

そのサウンドから、このアルバムはジミーがイニシアティブを握っていたのではないかと想像しているんだけど、どうだろう。当時の俺はジミーのことをあまり知らず、ジミーがいたTHE FABULOUS THUNDERBIRDS も聴いたことがなかったんだけど、THE FABULOUS THUNDERBIRDSやジミーのソロアルバムをいろいろ聴いた今となっては、ほぼ確信に近くそう思っています。ジミーの影響が大きそう。ジミーがほのぼの、のんびりしているという意味ではないんだけどね。

『Good Texan』
テキサス出身の彼ららしい(?)愉快なMV。
この曲のオブリガートはてっきりスティーヴィーだと思っていたんだけど……

 


スティーヴィーは83年の衝撃のデビュー 以来、新世代のブルーズギタリストとして快進撃を見せていたのにも関わらず、86年にアルコールとドラッグの依存症の治療のために活動を停止。復活作となる『In Step 』を発表したのが、『Family Stile』発表の1年前の89年のこと。『In Step』はスティーヴィーらしい豪快なブルーズが聴ける名盤で、グラミー賞を獲得し、同年に行われたジェフ・ベックとのツアーも大成功を収める(たしかベックが前座だったはず)。そんななかで発表された『Family Stile』がああいう内容になったのは......、再出発のために力が入っていたであろう自身の作品が成功を収めたことと、兄ジミーとの共演で、その力みを抜くことが出来たのではないか。

『Family Stile』でのスティーヴィーのプレイは少々おとなしめに聴こえるものの、本当にリラックスしていて、ジミーとの共演を楽しんでいる様子が伝わってくる。ほぼアドリブのジャムセッションみたいなレコーディングだったんじゃないだろうか。そして、それまで知らなかったジミーのギターや歌が、実に味わい深いんだよね! ただ、スティーヴィーだと思っていたギターが、MVを見るとジミーが弾いていたりして、兄弟ってギターも似るのかと思ったりもしたんだけど......、これはMV用にジミーが弾いただけなのかもしれないなあ。このアルバムでのスティーヴィーはいつものフレーズを連発しているし(ブルーズはそんなもんです)、それ以外の聴いたことないフレーズはジミーで間違いないと思うんだよね。

『Tick Tock』
しんみりと心に沁みる名曲。スティーヴィーはギターだけじゃなく、歌もいいんだよね。
古い8ミリ風の映像は二人の少年時代かな? 最後のジミーのメッセージが切ないなあ

 


本作はグラミー賞の2部門を受賞している名実ともに素晴らしいアルバムだけど、俺にとってもジミーの魅力を知ることが出来て、普段よりもリラックスしたスティーヴィーのプレイが聴ける、とても大切な1枚です。スティーヴィーの死後に、このアルバムのためのMVを撮影したり、インタビューに応えたりしなければならなかったジミーの心痛を思うと言葉もないけど……、それでもこのアルバムを聴いていると心が温かくなる。いろいろと心労が重なる今、ぜひ聴いてほしいな。




9/15にあそびすと編集長の小玉徹子さんが不慮の事故で亡くなられました。文章を書くのが好きなだけの、単なるバンドマンだった10年前の俺にチャンスをいただき、大した成長もしない俺のコラムを今もなお続けさせていただいて、本当にありがとうございました。初めてお会いした時の、少女のような笑顔が忘れられません。お誘いいただいていたバンド、一緒にやりたかったです。残念です......。

Leonard Cohen 『Hallelujah』
児玉編集長に

 





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