インタビュー/記者会見

声優やナレーションなどでも評価の高い俳優・松田洋治が
出演中の舞台「ハオト」を中心に、役者人生について語る

HAOTO_001b.jpg 昭和の大スター・長谷川一夫と「沓掛時次郎」で共演した子役時代から抜群の演技力で賞賛されてきた松田洋治。大人になってからも、テレビや映画から舞台へと、さらには「もののけ姫」のアシタカ役など声優としても活躍を続けている。戦後70年の今年は、太平洋戦争を題材とした「ハオト〜羽音」に出演中。最新作も含め、役者としてのこだわりなどについて話を聞いた。

――今回、舞台「ハオト」に参加された経緯をお教えください。
松田●作・演出担当の小野寺丈さんとは、以前からNHK銀河テレビ小説「まんが道〜青春篇」というドラマの共演や、お互いの芝居を観るなど、お付き合いがあったんです。昨年、共通の友人を介して久々に会う機会があり、それがきっかけで10年ぶりに再演する「ハオト」に出演することになりました。
彼が、それまで扱ったことのない戦争をテーマとした作品を作ったきっかけは、自身が出演した舞台「THE WINDS OF GOD」だったようです。今年、この芝居の稽古に入る前には今井雅之さんのお見舞いに行ったとも聞いています。
また、“9.11”、アメリカ同時多発テロが起きたことによって、創作への思いが一層強くなり、戦後60年という節目の年に向けて脚本を書き上げ、初演にこぎつけたというわけです。
今年が戦後70年というのはわかっていたものの、再演を決めた時期には、日本の状況はここまできな臭い感じではなく、この時期に再演されることに、いろいろな意味で運命というか、何かの力が働いているような気がしますね。

――最近は、表現の自由が何かと問題になっています。「ハオト」のように精神病院という舞台設定は、演劇でしかなかなかできないかもしれませんね。
松田●特に精神病院という設定にユーモアを絡めるとなると、テレビドラマでは難しいかもしれません。入院患者を誹謗中傷する意図はまったくなく、ユーモラスに描いているのも、深刻なシーンばかりでは見る側が息がつまるだろうという配慮という面もあります。また、戦時下で「普通」あるいは「立派」とされた人々の「狂気」を描くための設定でもあるのですが、観たい人がお金を払って観に来る演劇にさえ、眉をひそめる人もいるようです。
こうした状況って、戦前・戦中に反戦派の演劇人が、芝居の上演中止を余儀なくされ、表現の自由を奪われたことと重なる部分があって、ちょっと怖い状況だなと感じています。

HAOTO_002.jpg ――その戦時中の状況を知る世代の方々も少なくなっていますね。
松田●僕は父から当時の話を聞く機会がありました。ただし、父は昭和9年生まれなので、終戦時は今でいう小学校5年生でまだ子供でしたから、戦争の状況を詳細に語れる世代とは言えません。それでも当時、「戦争に反対と思っていた人がたくさんいたけど声に出す人が少なかった、という解釈は後付けで、特に子供は反戦なんて言葉、知りもしなかった」と言っています。
まあ、今、こんなに情報がたくさんあって誰でも見られるのに、「反戦」と声を上げている人が少ないのはなぜかな?と不思議に思うくらいなので、当時の人たちに期待するのは酷かもしれません。

――いわゆる戦争モノだと、どうしても年代が上の役者が多いイメージがありますが、今回の共演者は若い世代が多いですね。
松田●年齢からいうと上から数えたほうが早くなりました(笑)。
今年は節目の年でもあるので、小さな劇場などでは若手の演劇人も戦争を題材にしたものにかかわる機会は多いようです。若手が多く出演していると、必然的に若い観客が多くなるのでいいと思います。若い世代に限らず、この作品を観ることが、戦争について考えるきっかけになってくれれば、作品に参加した意味も大きくなるというものです。先ほども言ったように、戦争体験者の話を聞く機会というのは極端に少なくなっていますからね。
最近は共演者だけでなく、演出家や制作者も年下のことが多くなってきています。そうした人たちと一緒に仕事をしていると、作品の作り込み方や運営の仕方など、新鮮に感じる部分も多いですね。

――松田さんの本格的な舞台進出は、1985年の「ブライトンビーチ回顧録」(パルコ劇場、演出/青井陽治)でしたね。主役が降板して急遽参加ということで大変だったのでは?
松田●あれは出演依頼の電話を取った兄(編集部注:翻訳家で駒澤大学教授の松田直行氏)が勝手に受けたんです。当時、すでに海外の脚本をよく読んでいた兄は、ニール・サイモンの脚本なら絶対やるべきだと思ったのです。初めての本格的な舞台なのに、本当に時間がなくて、とにかく必死に台詞を覚えました。
でも、ニール・サイモンの脚本、そして青井さんの訳も素敵で、何より舞台の素晴らしさを教えてくれた作品なので、今は兄に感謝しています。

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「ハオト〜羽音」の公演は、東京・紀伊國屋ホール(6月11日〜15日)でスタートした
(向かって右から、松田洋治、未沙のえる、小野寺丈)
――あの作品で実力を認められ、翌年も青井さんが演出した「トーチソングトリロジー」に参加されました。今、話題のLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)問題を先取りしていました。
松田●LGBTなんて言葉はもちろんなく、主人公の鹿賀丈史さんがホモセクシャルの役ということでも注目された作品です。僕の役は、加賀さん演じるアーノルドが、孤児院から期限付きで預かっている孤児という役でした。
当時まだ若造だった僕は、芝居のパンフレットで「ホモの芝居は哀調を帯び、人間の悲哀が出しやすい」なんて生意気なこと言ってました(笑)。

――声優として参加したジブリ作品も、「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」と社会的な問題を真っ向から描く作品が多いように感じます。
松田●先方からのオファーなので、特に選んでいるということではないのですが……。そうした問題にはおおいに興味を持ってます。先ほども言ったように、何かの力が作用しているというか、役者と作品の“巡り合わせ”のようなものって確かにありますね。そうした意味では井上ひさしさんの作品などに出演したことも、運命を感じます。
役者はさまざまな人生を演じるわけですから、やはり社会問題には常に目を向けていないといけないとも感じています。特に自分に子供がいることもあり、この国の未来の有り様については真剣に考えてしまいます。

――20代ですでに坂東玉三郎さん、蜷川幸雄さん、木村光一さんといった錚々たる演出家と仕事をしていました。その影響を感じることはありますか?
松田●当時は、自分が舞台で芝居をするようになってまだ間もなかったですし、相手は偉大な演出家たちばかりですから、「演出家絶対主義」というか、芝居は演出家が作るものというイメージがありました。年を経るごとに、演出という制約の中で、なんとか自分の思いを生かそうという試みはしてきましたが、今も「演出家絶対主義」のイメージはありますね。出自って、きっと死ぬまで影響すると思います。

HAOTO_004.jpg ――最後にもう一度、「ハオト」について伺いたと思います。
今日(6月13日)は公演3日目ですが、演じていていかがでしょうか?
松田●稽古のときから感じていたことですが、観客がお芝居を楽しむ時間というものを、きちんと作り上げている作品ですね。これがいつも演劇を観なれている客層の劇場での公演だったら、また別の表現の仕方があると思いますが、今回は全国10カ所を回るということで、深刻な問題に取り組みつつもユーモアもたっぷりで、非常にバランスの良い作品になっていると思います。
実は、小野寺さんは大衆演劇の「梅沢武生劇団」に籍を置いていたことがあるんです。先ほど出自というお話をしましたが、観客を楽しませるエンタメ性はそこから来ているのでしょう。落語もやっていたので、笑いのツボを押さえていて、内容は深刻ですが、ぜひ多くの皆さんに足を運んでいただいて、たくさん笑っていただきたいですね。そして見終わったあとには、日本が体験した戦争という悲劇と、現在ある危機にも関心を持っていただけると嬉しいです。
でも、あまり難しいことは考えず、お芝居を観てみたい!という純粋な思いからご覧いただいても結構です。やはり、多くの方々に芝居を見ていただけることが、役者にとっては励みになりますし、何よりの喜びですから。
――今年は後半にも映画の公開や芝居の公演もあるとか。ますますのご活躍を期待しています。
本日はありがとうございました。

HAOTO_005.jpg 松田洋治
プロフィール
1964年東京生まれ。5歳でテレビドラマ「母の鈴」でデビューし、子役として活躍。テレビでは「家族ゲーム」「おしん」「深夜にようこそ」ほか、多数の話題作に出演。85年に「ブライトンビーチ回顧録」で本格的舞台デビューを果たし、「テンペスト」「ロミオとジュリエット」「夏の夜の夢」「人間合格」「ひかりごけ」「秘密の花園」「藪原検校」などで高い評価を得る。映画でも「ドグラマグラ」「はるかノスタルジィ」などでの個性的な演技が光る。「風の谷のナウシカ」のアスベル、「もののけ姫」のアシタカ、「タイタニック」「ザ・ビーチ」ではレオナルド・デカプリオの吹き替えなど声でも活躍している。

松田洋治オフィシャルブログ「NO PLAY NO LIFE」Powered by Ameba
http://s.ameblo.jp/youjimat/entry-12039174251.html?timestamp=1434383157 
ツイッター
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JOE Company SUMMER TOUR2015
「ハオト」
戦後60年にあたる10年前、小野寺丈が初めて「戦争」を題材に書き下ろしたヒューマンファンタジー作品。太平洋戦争末期の東京の精神病院を舞台に、ユーモアを交えつつも、観客に鋭いメーッセージを突きつける。初演当時から10年後の再演を決めていた小野寺が、キャストを一新して改めて問いかける想いとは? アカデミー賞受賞作「カッコーの巣の上で」にも匹敵すると絶賛された傑作が、全国10カ所で待ちに待った再演決定!

今後の公演予定
6月
21日:京都府立府民ホール「アルティ」
24日:名古屋市芸術創造センター
27・28日:札幌スクールオブミュージック&ダンス専門学校7FLS-1
7月
1日:広島市/アステールプラザ多目的スタジオ
4・5日:大阪市/近鉄アート館
9日:熊本市男女共同参画センター「はあもにい」メインホール
12日:福岡市/西鉄ホール
15日:金沢市/石川県文教会館
19日:宮古島市/マティダ市民劇場

詳細は下記のホームページをご覧ください。
http://new.joe-company.com/?eid=1004857 











エンタメ インタビュー/記者会見   記:  2015 / 06 / 18

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