インタビュー/記者会見

25周年を迎え、ますます役の幅を広げる宮本大誠。
過酷と称する稽古の先にあるのはどんな芝居?
初日を控えた新作などについてインタビューした。

taisei_001.jpg大学卒業後、一般企業に就職。あまりの忙しさに自分を見失いそうになる中、宮本大誠が目指したのは、役者という人生だった。付き人からはじめた役者の道にはどんなことが待っていたのだろう?

――本日は、8月18日から吉祥寺シアターで公演が始まる『風は垂(たて)に吹く』のお稽古場にお邪魔しました。
すでにお稽古は進んでいると思いますが...。
宮本大誠(以下、宮本)/稽古自体は始まって1カ月くらいですが、その前にワークショップもしていますから、もうちょっと時間が経っていますね。
実は、テトラクロマットの公演には、約2年前、第2回公演『花の下にて』にも参加しているんです。
それまでとは違ったタイプの芝居だったこともあり、稽古中は「もう二度とテトラの芝居はやりたくない!」と思ったくらいキツかったです(笑)。ただね、そうやって苦しみながら稽古して、いざ本番迎えて出来上がった芝居というのが、出ていた僕がいうのもなんですが、本当にすごかったんです。
芝居ってなまもので、同じ脚本、台詞でも毎日毎日違う芝居になります。だから公演が始まってからは「さて、今日はどういう芝居にしようか」ってワクワク感に変わっていきました。
今回もそのワクワク感を感じたいなと思っています。
ただし、今回もまた舞台のそでがなくって、役者はいったん舞台に出ると出ずっぱりなんです。しかも台本に台詞はないし、その部分に関しては自分たちで演技を考えなければならない。前回同様過酷な状況で、本音をいうと今回も稽古は辛いです(笑)。

taisei_002.jpg――公演まで2週間を切ったということで、お芝居も固まってきている感じですか?
宮本/稽古期間には段階があって、最初は台詞を覚えて、みんなである程度形になるというのが初期段階。そのまま進んでしまうと同じ繰り返しになってしまうので、その後、さらなる高みを目指すために、1回ドーンと落ちるというか、壊すという作業があって、ちょうど今、その段階なので結構きつい時期ですね。また一つ、上にいくための作業は必要不可欠なものですから、踏ん張れる部分があります。

――今回、初対面の共演者が多いようですが?
宮本/最近の舞台って、仲間内というか、知り合いと一緒のことが多かったんです。だから、なんとなく人となりもわかってるし、そういう意味では、最初から入りやすい部分がありました。
今回は初めて共演する人ばかりで、まず、どういうキャラクターなのか、役柄ではなくその人本来のキャラクターを探っているというか...。僕はまず、役者以前に、その人がどういう人間なのかということが気になるタイプなんです。だから今回も、まず「相手を知る」という作業から始めましたね。
最近は、気がつけば僕がキャストのなかで一番年上ということが多いんですよ。今回も最年長で、それも一番年が近い人でも10歳近く離れているという......。僕はもともと、共演者が孤立している感じが、ものすごく嫌だと思っちゃうタイプなんです。孤立すると、やっぱり嫌な感じになるじゃないですか。芝居ってみんな一緒につくりあげていくものと考えているところもあって、ある意味家族的というか一心同体というか、そういう状態で稽古したい。「誰かがはぐれてる感」に対して、すごく気になるんです。
今回も芝居は絆が一つのテーマになっていることで、それを助長している部分があるかも。
以前だと、そうしたことが気にはなっても、自分より先輩がいれば、その人に準じてという感じでした。それが、自分がいまや一番の年長者になったことで、「俺がやらないと」という気持ちが強くなっている気はしていますね。

taisei_003.jpg――今年は、舞台では、1月5日からのシアターグリーン三館同時公演『獅子相承(ししそうじょう)』で幕開けでした。そして、テレビでもお正月早々の1月3日、新春スペシャルドラマ『百年の計、我にあり』(TBS)にご出演、最近では、映画『殿、利息でござる』のご出演など、さまざまなジャンルでご活躍されていますね。
宮本/実は僕、この芸能という世界に入って、今年で25年目なんです。

――それはおめでとうございます。
宮本/これは勝手に自分の中で思っていることなんですが、今年仕事をする際には、頭に全部「25周年記念」がついている感じなんです(笑)。そういう意味でもジャンルにこだわらず、面白い作品にはどんどん出たいと考えています。
シアターグリーンはステージが3館があるんですが、今回のお正月公演は、3館それぞれ話がつながっているという構成になっていて、役者が3つの劇場を行き来するというお正月のお祭りみたいな企画ものとしては面白い芝居でした。
僕が出ていたのは『獅子相承』ですが、他の2作品『花嫁道中』『人情寄場』のうち、『花嫁道中』にも出演しました。
江戸の刺青彫物師の役で、その倶利迦羅紋紋(くりからもんもん)ぶりを、ブログにアップしているので、ぜひ見てみてください。

taisei_004.jpg▲テトラクロマット第2回公演「花の下にて」

――舞台『エレメンタルホスピタル』では多重人格者の役でしたが、多重人格者って、難しいですけど役者としてはやりがいがあるのでは?
宮本/確かに俳優としてはやりがいのある役でしたね。
あれは演出の伊藤和重と呑んだときに「大誠くんで何かやりたいから考えてよ」と言われたんですね。そんなこと言われても、役者って台本があって、そこから芝居をつくっていくのが普通だから、何もないところから考えてと言われても、最初は「どうしようか...」という感じでした。
それで、「今、自分がいちばんやりたい芝居って何だろう?」と考えたときに、これは、ずっと僕のテーマでもあるんですけれど、ギャップのある役、演じる上で幅のある役がやりたい、と。人間っていろんな側面を持っていますよね。たとえば、北野武監督といえば、もう世界的な巨匠ですが、ビートたけしとしてお笑い芸人で今も第一線でご活躍されているという二面性。そうしたいろんな面を持った人間、それを極端化したら多重人格者に行き着いた。
あとは、最後に「えっ!?」って思わせる結末、昔の映画『スティング』のエンディングみたいな作品にしたい。それと、『ファイトクラブ』の要素やコメディの要素も欲しい。いろいろな要素の入ったごった煮みたいな作品をやりたいって要望しました。「面倒臭い奴だなあ」って言われましたけど(笑)。

――宮本さんは、大学卒業後、いったん就職されたんでしたよね。
宮本/ただただ田舎に帰りたくないという一心で、東京の会社に就職したんです(笑)。
たまたま友だちが行く会社説明会に、ついて行ったんです。説明を聞いたら、映画の配給やCM制作をやっているおもしろそうな会社とわかって試験を受け。受かったんです。
配属されたのはCMの殿堂入り作品をいくつも制作した会社でした。
当時はバブルの終わり頃で、先輩たちはしょっちゅう海外出張に行ってましたし、僕も家に帰って寝ていた記憶がないくらい仕事が忙しくって。自分を見失いそうで、やだな、この生活って思っていました。

taisei_005.jpg――そこから役者をめざしたきっかけは何だったんでしょう?
宮本/大学で演劇を専攻していたというので、先輩たちが面白がって、CMのオーディションの際、僕は相手役をさせられたりしていたんです。大学の時は芝居で飯を食うなんて考えてもいなかったけれど、芝居の世界の方が面白いことでできそうだ、もっと自分を活かせるのは、芝居かもと考えるようになっていきました。
そういえば、子どもの頃、お楽しみ会で脚本のようなものを書いて演出らしきこともしてたなあ、嫌いじゃなかったなあとも思って。

――その後は、西岡徳馬さんの付き人をされたんですよね。
宮本/大学の先輩だったんですよね。とはいっても、20歳年上ですから、面識は全くなかったんです。大学の先輩で、テレビドラマに出ている人というだけで、いきなり門を叩いて「何かお手伝いをさせてください」と押しかけていった格好です。
もちろん最初は断られました。でも、運がいいことに、西岡さんが、ちょうどフジテレビのドラマ『東京ラブストーリー』への出演が決まって、現場に付く人間が必要になった。それで撮影の初日から、収録現場に付き人として同行することになりました。
初めて映画に出たのは『新極道の妻たち』で、太秦まで行ってオーディションを受けて出演が決まりました。監督が中島貞夫さん、撮影が木村大作さんで、中島監督はいつも静かで、木村さんがいつもあれこれ指示を出していたので、ある時期まで木村さんを中島監督だと思っていました(笑)。
西岡さんの付き人は3年間やりましたが、いろいろと勉強させていただきました。体力的には会社勤めの時の方が楽でしたが、精神的には全然辛くなかったですね。

taisei_006.jpg――宮本さんといえば、漫画界の巨匠・本宮ひろ志原作の『新・男樹』に主演され、大変な話題になりました。
宮本/男の子のバイブルみたいな漫画ですし、カッコいい主役ということで、天にも昇る気分でした。4作まで続きましたしね。そうはなるまいと思いつつ、有頂天になってたというか、完全に浮かれていました(笑)。
僕、当時すでに30でしたが、学生役なので、その年齢で学ランを着てたんです。でも、共演者も同年代でしたから、一人だけ浮くこともなく......。彼らとは、「同じ釜の飯を食った」みたいな連帯感があったし、今でも付き合いがあります。

――先ほど、田舎に帰りたくない一心で就職されたということでしたが、映画『奇跡のりんご』(2013年)は、その田舎、青森県の弘前市が舞台でした。
宮本/若い頃はやっぱり方言とか嫌だったんですよね。なんだか自分の恥部を晒しているみたいで。
それが、方言指導をやることになるとは思ってもみませんでした。方言指導という役割は、主人公の兄役ということと同時に、この作品を印象深いものにした理由の一つであり、財産と思える作品です。
まず、中村義洋監督と、台詞一つ一つについてどれくらい方言のテイストを残すかをチェックしていきます。これ、50%ぐらいでも、その地方以外の人たちには通じないことが多いんですよ。だからだいたい30%前後になりました。
それが済むと、すべての俳優さんの台詞を僕がテープに吹き込んで聞いてもらい、現場でも指導するわけです。
だから全シーン、全カットに立ち会いました。俳優としてではなく、製作者の一員として立ち会うことで、映画の深さを改めて知らされたというか、肌で感じることができたのは本当に良かったなあと感じています。

taisei_007.jpg▲テトラクロマット第2回公演「花の下にて」

――これまで、作品、演出家、共演者、さまざまな出会いがったと思いますが、忘れられない出会いというと?
宮本/やっぱりつかこうへいさんですね。つかさんには、『寝取られ宗介』という作品で、たった1回きりなんですが、直接指導を受けることができ、本当に貴重な体験でした。
つかさんの場合、台本はなくて、その場で口立てで芝居をつけていくんです。その際、ちょっとでも役者が言い淀んだり、ひるんだりすると、「もういい!」になっちゃうんです。だから日々闘いであり、必死でした。
芝居の内容も、そこまでえぐらなくていいじゃないか、というところまでえぐった内容。でも、その先にある悲しさやおかしさが深い。つかさんには、すべてわかっていたんでしょうね。
稽古場では罵倒されても、ちゃんと後で褒めてくれるしこともありました。
つか作品とは対極にある作品ですが、西川きよし師匠が主役を演じた『コメディ水戸黄門』も、分岐点になった作品です。 新喜劇って、僕らからしたら独特の世界だし、まさか自分がその世界で芝居をするとは思ってもいないわけじゃないですか。事務所にも「これって新喜劇じゃないですよね?」って確認したくらいです。
蓋を開けたら、池乃めだか師匠でしょ、坂田利夫師匠でしょ、末成由美さんでしょ、新喜劇以外のなにものでもない。でも楽しかったですね。
この作品を挙げたのは、芝居を俯瞰でみられるようになったからです。
それまで、アドリブ絶対禁止という環境でずっと芝居をしてきた人間にとって、稽古が始まると衝撃の出来事ばかりでした。もちろん本公演でもアドリブが飛び交う。その繰り出されるアドリブを受けて返すには、全体を俯瞰してみていないとできませんから。
ここでも、ベテラン俳優の江口直彌さんが「お前、おもろいわ。ずるいわ」なんて言葉をかけてくださることがあって、もうサイコーでした。江口さんの言葉はすごく力になりました。

taisei_008.jpg――本当に濃い共演者ばかりで、大変だったと思いますが、さぞや爆笑続きのお芝居だったと思います。
ところで、今、気になる役者さんはいますか?
宮本/大ファンでもあり、友だちでもある阿部サダヲですね。
彼とは、NHK朝の連続ドラマ『こころ』(2003年)で初めて共演したんですが、なんか気持ち的に引っかかるところがあったんでしょうね。『奇跡のりんご』で再会するまでに、ずいぶん時間が経っていたんですが、兄弟役ということもあり、いつも行動を共にしていて、急速に仲良くなりました。
僕はいつも、自分以外の役に対して、もし自分が演るとしたら......、と考えているんです。『奇跡のりんご』の撮影中も、彼の台詞で、「この台詞言いづらいんじゃないか」って思う台詞があった。それで、雑談してるときに、彼に「あの台詞って言いずらかったよね」って聞いたら、「え? どれですか? 僕ね、言いづらい台詞ってないんですよ。だって、僕じゃないから」っていう答えが返ってきたんです。
その時に「阿部サダヲって、すげえな」って思った。役者って、役を自分に引き寄せて演じる部分があると思うんですが、彼の場合は、そこをスパンと割り切っているんです。僕が持っていない部分をたくさん持っていて、すごく刺激を受けています。

taisei_009.jpg――さて、9月には、映画『クハナ!』が公開されますね。
宮本/不思議な縁ですが、ずっとつかこうへんさんの下にいた秦建日子さんの初監督作品なんです。
桑名市が舞台で、僕は、主人公の女の子の父親役。ダメダメでコメディちっくなお父さんという、初めて演じるような役でしたが、楽しんで演じることができました。やっぱり年齢を重ねることで、やりたい役も変わってくるんですよね。若い頃はヒーローを演じたいと思っていたけれど、今はダメな奴というか、人間くさい役をやりたいと思うようになりました。
やりたい役ということでいうと、今年はシェークスピア没後400年ということで、様々な作品が上演されていますが、僕、シェークスピア劇ってやったことないんですよ。

――え、意外ですね。好きなシェークスピア作品、あるいは演じてみたい役ってありますか?
宮本/『ベニスの商人』はやってみたいですね。大学時代に初めて観て、その後自分もポーシャの召使ステファーノ役を演じたこともあって、心に残っている作品です。今度演じるとしたら、シャイロックがいいなあ。
『ヴェニスの商人』は当時の差別的な部分も内包しているけれど、喜劇的要素もある作品です。もっと面しろおかしくコメディ色を打ち出した演出でやってみたいですね。
そう考えると、役者として初めての経験って、きっとまだまだたくさんあるので、今後もワクワクしながら役者という仕事をしていきたいです。

taisei_010.jpg▲テトラクロマット第2回公演「花の下にて」

――宮本版『ヴェニスの商人』、ぜひ観てみたいです。
それでは、最後に今回の舞台のPRをお願いいたします。
宮本/実際にご覧になっていただければお分かりになると思いますが、テトラクロマットの舞台って、いつも独特の雰囲気があるんです。
前回参加した際に、主宰者側から「今までみたことがない舞台を作りたい。今まで感じたことのない空間を劇場につくりたい」と言われましたが、それはすべての作品にかかる言葉です。
そこに到達するためには、台詞を覚えて芝居をするだけではなく、それ以上のことが役者に要求される、要求のレベルが非常に高くなります。
今回演出家からは「それぞれの身体を使ったパフォーマンスで劇場の空気を変えてくれ」という要求がありました。
パフォーマンスとはいっても、ミュージカルではないのでダンスがうまいとかそういった類(たぐい)のものではなく、俳優が自分の身体を使って何が表現できるのか。それをつきつめろということだと僕は解釈しています。
なかなか言葉で伝えるのは難しいのですが、たとえば歌の場合、歌そのものは上手いとはいえないけれど、非常に味のある表現ができる人っているじゃないですか。そういうことと相通じるところがあると思います。
僕の拙い言葉では伝えきれないけれど、実際に舞台を観ていただければ納得がいくと思います。
今回もいろいろな仕掛けのある舞台装置や照明に驚きがたくさんあると思います。最後に登場する、奇跡の雲「モーニンググローリー」もぜひ観ていただきたい。何より、過酷な稽古を超えた、僕たちの演技を観ていただきたい。公演日はまだ暑い盛りとは思いますが、トークショーなどもありますので、ぜひ吉祥寺シアターまで足をお運びください。
――お話を伺っただけでも、いろいろなことが詰まった作品のようで、期待が膨らみますね。
本日はありがとうございました。


taisei_011.jpg宮本大誠プロフィール
青森県出身
玉川大学卒業後、俳優・西岡徳馬の付き人を経て91年、映画『新極道の妻たち』で映画出演デビュー。以降多数のテレビドラマ、映画、舞台で活躍する。出演作は『陽光桜』(監督:高橋玄/2016)、『殿、利息でござる!』(監督:中村義洋/2016)など多数。

宮本大誠オフィシャルブログ「大器晩誠 で よろしく!」
http://taiseim.jugem.jp/


テトラクロマット第3回公演
「風は垂てに吹く 
 愛していると言うかわりに、空を飛んだ。」
脚本:坂口理子
演出:福島敏朗
出演:北川弘美、大薮 丘、源、住吉美紀、福場俊策、天羽尚吾、松原功、儒 河、小飯塚貴世江、タマル、宮本大誠


「吉祥寺シアター」
TEL:0422-22-0911
JR中央線・京王井の頭線「吉祥寺」駅北口徒歩5分

<公演スケジュール>
2016年
8月18日(木)19:30
8月19日(金)14:30  19:30
8月20日(土)13:30  17:30
8月21日(日)13:30★
8月22日(月)19:30
8月23日(火)19:30

★終演後、アフタートーク&アフターライブ

*会場は開演30分前、当日券は開演45分前から受付・販売します。
*上演時間は100分の予定です。

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エンタメ インタビュー/記者会見   記:  2016 / 08 / 17

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