編集長!今日はどちらへ?

前穂北尾根4峰正面壁北条新村ルート ―2.―

2013 / 10 / 23

9月29日03:30起床、04:50出発。もちろんヘッドライト装着。昨日歩いた道を少し戻る感じなんだが、ヘッドライト点けての歩きはいかにも足元がおぼつかない。夜が明けてくると心底、ほっとする。

datin131023_01.jpg 昨朝の上高地ほど寒くはなかったが、軍手をはめて歩いた。昨朝の上高地の気温は3度。余りにもの寒さに徳沢で軍手を買った。
踏み跡を左に取り、灌木帯とガレ場を左上気味にトラバースする。足場が悪くて神経を使う。

datin131023_02.jpg 念のためにアイゼンを持ってきたが、C沢の雪渓は小さくなっていて、最短距離で横切っても雪渓の上を渡る必要はなかった。

datin131023_03.jpg  基部到着06:27。ひと休みして水分補給したり、行動食摂ったり。

datin131023_04.jpg  1Pから3Pまでも、決して容易くはなかった。「うッわ!マジか?!「どうーすんだ、これッ」とか、肝を冷やしながらも、なんとかクリアしたが、4P目は見上げるも血の気が引くような感じ!いかにも核心!
斜めってるは、ハングってるは!!このピッチがあるがために、全体のルートも10bルートと評価されているという意味を納得。篠原さん、斜めってるところにはクックドロー、ハングってる岩にはアブミを置いて行っている。
たとえばゲレンデなら「10bなら、やれる」と思ったりするんだが、どういうわけか本チャンルートだといける気がしない。怖いのね〜
2手目、斜めってる細い滑り台状の先にクイックドローが下がっている。つまりA0でってこと。ってか、フリーでやろうという気概も湧かない。クイックドローを握る手を、目いっぱい、精一杯引いて、身体を上げる。その時点でもう、腕パン!なのに、今度はアブミ!!
誰かが回収しきれなかったのか、ご親切心の残置なのか、篠原さんが設置したアブミの手前に残置アブミが。なんだか、色が褪せているようで、できれば使わずにいきたかったけれど、その場になったら死にもの狂いで、なんや構わずしがみつく。
もしかしたら、本番で空中アブミは初めてだ。垂壁も辛いが、まだ足先が岩につくけれど、ハングは...
あ、あ、あーーーッ!
足をかけた途端、アブミが揺れる。私を載せて谷に向かってブラーン!下は見ないって言ったって、いやでも見えるよ、千尋の谷があーーッ!
なんてステキな空中ブランコーーーッ!!
「足を巻き込むんですよ!」
上から篠原さん。
解ってます、解ってます。
なんとか足を巻き込んでアブミを止めるも、ただ止まってても上がれないわけで、1段上がらないとならないわけで、だから立たないといけないわけで、そうするとまた...
あ、あ、あーーーッ!
3回ほど、ブラーンをして、なんとかクリアした。もう汗びっしょり!腕パンパン!!
あまりにも大変クライミングだったので、5、6P目がどんなだった記憶が飛んでる。
終了点に到達した時はヨレヨレのクタクタを通り越して、なんだか虚脱。呆けてしまった。
終了点着9:35。

datin131023_07@.jpg なんと素晴らしい眼下に広がる光景だことよ。幾重にも重なる山並みのそのまた上に、遠くても小さくても、それとわかる富士の嶺。山底をゆるやかに蛇行する梓川。色づいた山懐の間に青々と水を湛える奥又白池。
いいお天気で、寒くもなくぽかぽかで、目を閉じたら、そのまま眠ってしまいそうだ。
「どうやら、昨日のパーティーは抜けてったみたいですね」

4峰のスカイラインに出て、4峰を下降し、5峰を登り返して5峰を5、6のコルへと下降する。そうしてみて昨日のパーティーの行動もよくわかる。
なんとか終了点に達したとして、その時点ですでに夕闇が迫っていたとしたら、行動継続は不可能と判断せざるを得まい。北尾根とてバリエーションルート。足元が明るくても、かなり緊張を要する厳しい岩稜はヘッドライト点けて下れるようなものでは到底ない。

datin131023_05b.jpg 5、6のコル着11:30。
そこから、さらに歩くこと2時間ちょい。池のほとりに帰り着いたのは13:35。
「強くなりましたね。今日は合格です」
全行程、所要時間8時間45分。篠原さんの行動計画表には10時間とあるから、1時間15分ショートで歩けたことになる。実は篠原さん計画表にはそう書いたが、12時間かかるとみていたとか。
5峰への登り返しが、思ったよりキツくなかったのと、C沢から池までの登り返しも、そこまで距離がなかった。ほとんど下りだったからだと思うが、それでも、ちゃんと想定内で歩けたことは、何よりも嬉しかった。

明日は降りるだけだからと思えば、キャンプが楽しい。酒も旨い。篠原さんが持ってきたウィスキー、Mさんが持ってきた焼酎、私が持ってきた梅酒、全部3人で平らげてしまった。

datin131023_06.jpg 後日談だが…
奥又白池でご一緒した名古屋のTさん、涸沢で例の4峰でヘッドライト点けてた組に出会ったそうな。
「池の傍でみんな心配してたんだよ」
と言ったら
「普通に覚悟でビバークしてただけなんで、心配とか言われる筋合いもないし」
的な返答だったらしい。何をか言わんや!ダサイよね〜それって!
「こうこうで、ま、覚悟のビバークだったんですが、ご心配おかけしました。すみません」
ってな反応の方が、100倍、かっこいいクライマーだよね〜
やっぱ、ナイスクライマーはナイスガイじゃなくちゃあね〜

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