久々にご連絡を頂いた、食通のMさんを暮れに「四月一日(わたぬき)」(前述)にお連れした。Mさんは、いつお会いしてもお元気で、明るく楽しい方。前向きだし、バリバリのキャリアだけれど、相変わらずギスギスとした硬いところがない、人への心くばりに溢れた人である。
この「心くばり」は「気くばり」とはちょっと違う。元新橋の芸者で渡米して、コロンビア大学やニューヨーク大学で東洋哲学の講義をしていらした、中村喜春さんの『いきな言葉 野暮な言葉』という本の中では「人の感情を傷つけないように思いやりの心で、また温かい気持ちでどんな人にも愛情を持って接すること」と解説されていて、私は勝手に、単に「細かく気が付く人」とは格を異にすると思っている。
そんなMさんが会社のお仲間とご一緒に、連れて行ってくださったのは、中目黒の「一饗(いっきょう)」。
中目黒駅からは5分位。駒沢通り沿いにあるが、入り口がちょっと下がっていて分かりづらいかもしれない。店構えからして、期待充分。
奥の4,5人入れる囲われたスペースに席が用意されていた。店内は土の香りのするような温かな、そしてナチュラルでシンプルな内装で、良い感じである。益子の器もほのぼのとした味を出している。
まずビールと日本酒で乾杯。日本酒は愛知の長珍酒造の山田錦を使った「長珍」。ぬる燗でいただいたが、さらっとしているのに後口の味わいが余韻を残し、しみじみと、とても良い。
料理は今日はお任せとのこと。一品料理は600円位からある。

さて、からし菜のおひたし。薄味で素材の美味しさを引き出している。野菜は京都、魚は気仙沼などから新鮮なものが届けられているという。
刺身の盛り合わせは、水がれい(味わい深かった)・めばる・めかじき・いなだ・すえの5点。1種を2箇所づつに盛ってあって、皆で取りやすくしてある。こういうところに店の良さが出ると思いながら、せっせと箸を運ぶ。
次はめかじきのソテー。上に載っているソースをひと口食べて、「ちょっとほろ苦い。けど、おいしい!」「なにこれ!」「ごま味噌よ」「たまごの味を感じない?」などなど言い合っていたのだけれど、どれも外れて、「しめじ」のソース。聞いて納得!しめじを素揚げしてミキサーにかけるとか。あとの材料は聞かなかった。忘れられない味。家でやってみよう。

揚げ物はかつか・海老の山芋巻・ししとう。かつか(南三陸でハゼ科とカジカ科の小型魚を総称して、かつかと呼ぶ)というのは始めてで、身はさっぱりとして、ほろりとほぐれ、美味しい。
海老で巻かれた、ゴロンとした山芋のサクサク感がなかなか新鮮。
その後の蕪のすり流し(中の白子がぷりっぷり)が、柚子の香りがして口の中をさっぱりとしてくれた。
続いて、牡蠣の柳川仕立て。気を使って、牡蠣は油で揚げてある。それがまた、牛蒡となんとも相性が良かった。これに、赤い柚子胡椒を加えるとさらに味は複雑になる。お酒は、勧められて種子島の焼酎「むらさきロマン」に。軽やかな味。さらに、白ワイン「甲州グレース」もいただく。残念なことにお酒に弱いので、原酒「雪鶴」は一口だけいただいて、次回にと諦めた。
最後は猪鍋。形の良い今風の益子の土鍋に、白菜・にら・もやし・しいたけ・ねぎの入った味噌味。猪は臭みがなくさっぱりとしていてほのかに甘みがある。後で雑炊にしてくれた。最後の最後の、デザートの富有柿もしっかりいただいた。
4人のうち、おふたりが初対面。クライアントの方々なのに、仕事を離れて心置きなく、和やかに、食べて、飲んで、笑った、温かい時間をご一緒させていただいた。皆様大人の素敵な女性ならではの、居心地よくとても幸せな、文字通りの「美味しい空間」。
近々もう一度来たい店で、誰と来ようか考えるのも楽しい。
特別に注文しておかれたという、「長珍」の一升瓶は私のお土産にと、くださった。後日、Mさんお勧めの熱燗にして次男といただいた。これも旨し。
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一饗 (いっきょう)
目黒区上目黒2-10-7 アサミビル1F
03-5768-1819
18:00−24:00 日曜、第3月曜定休
http://www.ikkyo.com/ |