20代の時からの知り合い3人で、昔のように、いえ、昔以上に素直な自分のまま(私だけかも…)で、屈託なく食べて、飲んで、しゃべって、笑って、子供のように幸せな時を過ごした。そして、ちょっと滅入った時など、この「幸せな気分」を思い出せば心がほんのり温かくなり、しばらくは何とかやって行けそうに思えて、すごく、すごくうれしかった。 ところが、ほろ酔いるんるんの帰り道、あと数十歩で自宅というところで、アクシデントが…。幸せ気分は見事にはかなく打ち砕かれてしまった。神様も、ほんとにひどいいたずらをされるなあ! でも、若い時とは違う。「人生って、こんなものね!」と立ち直ることに。 しばらくは、その幸せ気分と一緒にアクシデントも思い出してしまうから癒されはしないけれど、きっと時が解決してくれる。厭なことを忘れてしまうのは、私の特技NO1だもの。

さて、予約は受け付けないので、寒空に並んで待つという修行付きと、太鼓判を押されて恐々訪れたのが、淡路町の老舗、あんこう鍋で有名な「いせ源」。 東京都の歴史的建造物に指定された店構えは、シブイ。さすが老舗、全員が揃わないと入れてくれない。下足札を貰って二階の座敷へ、上がる。 あんこうのお店だから、あん肝、とも合え、にこごり、あんこう鍋を頼む。
一品料理を分け合おうと、小皿を頼んだら「置いてありません」。一合徳利(実は7尺しか入りそうもない)ではせわしないので、二合徳利を頼むと「ありません」。そのあと「絶対に触らないように!」火にかけた鍋を指さして仲居さんは消えていった。
あ然としていると、「いつもはもっと怖いぞ!」とは、年に2回位は食べに来る人の言葉。座った大座敷は、接待組、サラリーマン達、子供連れ、中年の女性グループなどの老若男女で埋まり、和気あいあいと鍋特有の活気に満ちている。時々、女将が真ん中に立ち、客の状況を上から眺め回して、仲居さんに指図をしている。愛想はないが、きびきびとした店の人の立ち振る舞いに、下町の老舗の格と自信がうかがえ、次第にあちらのペースにはまってくるから、あら不思議!
まずは、にこごりを一口。う〜ん、美味しい。昔ながらの甘辛のしっかりした味。年上の食通が、「日本の甘辛醤油味は世界最高だ。」と呟いたのを思い出した。あん肝も上質。もとより私の中では、へたなフォアグラより軍配はあん肝に上がっている。ようやく鍋もお許しが出て、はふはふと皆ひとしきり、食べるのにいそがしい。味は、やはり醤油味でほど良く甘い。いくらでも食べられる。野菜が少なめなので、 中ほどで追加。お新香も頼んだ。 いつも飲む時には、心配するほど食べない人が、「これだけは」と言ってよく食べに来ているのは、さすがに天保元年から続く味だからだろう。
火加減、出汁を足したりの面倒は、良くみてくれて、「そろそろ、おじやにしましょうね」とすすめてくれる。支度をしてくれてからお決まりの「絶対、触らないように!」と指令が下される。汁を調整してご飯(2人前)を入れて卵を溶きいれ、待つ こと暫し、仕上がりには浅葱をたっぷり。卵はふうわり。
本当にシンプルなおじやなのに、美味。味加減には脱帽。お腹がいっぱいといいながら、すべて平らげた。お茶を頼んで、おしゃべりをしていたら「そろそろこの辺で」と、くだんの女将に引導を渡されて退散することに…。
8時半過ぎ、店の前には若いカップルを含め、何組もが列をなしていた。 この、客を客とも思わないような接客態度なのに、並んでもぜひ食べたいと思わせる「いせ源」のあんこう鍋のお味、一度ご賞味あれ。 とっても盛り上がってる私たちは、2件先の燻製料理とワインの店「けむり」で、さ らにワインを2本開けた。
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いせ源
千代田区神田須田町1-11-1
03-3251-1229(予約は6名〜) 日曜日(5〜8月は土日祝休)
http://www.isegen.com/ |