湯殿は3タイプ。ほかに外に混浴露天風呂がある。
小さな露天風呂付き普通の湯殿。立ち湯(立った姿勢の半身浴)、寝た姿勢で入る寝湯。どれも個性的で趣きもあるが、立ち湯が半露天で、景観もよく気持ちが良かった。
食事はダイニングでギャルソンスタイルの若い女性がサービスをしてくれる。
「マクロビオテック」を意識した、新しい感覚の和食である。先付の「フォアグラ大根」から水菓子「蓬のムース・桜のアイスクリーム・黒豆わらび餅」まで8品。いわゆる旅館の刺身や天ぷらは出ないのが良かった。たとえば「山のお刺身」は山菜のゆでたものたっぷりと信州の白身の鱒。「信州牛 どて焼」は丸い石の上のお肉と蕪の周りにウォッカを振りか
け火をつけてアルコールを飛ばす演出。

先に述べた桜のアイスクリームは、玄関先に咲いていた木蓮の花びらの下に隠されていた。
すべて薄口で体に優しい仕立てでほどよいボリューム。若い人はやや足りないかもしれないが、単品の追加料理が用意されている。
お酒は神楽坂の「渡津海」で飲んだ「神渡」。ここの女将の実家が蔵元だそうだ。
窓際の席を選んだので、ガスの達磨ストーブ、ひざ掛けも用意されている。だんだん暮れなずみ、藍色に染まっていく空が美しい。標高1050Mの清々しさだ。
「旅館のあたたかさとホテルのプライベートを」というコンセプトは、先ごろ人気が出ている旅館の多くが掲げているものだが、個性を出す努力があちらこちらに見られる。
露天・半露天風呂やジャグジーバス・炭酸バスなどの様々な癒し風呂付きの部屋が15室もある。ここが良さそう。猫足のバスタブもあるそうな。
スタッフは若い。黒服の中に和服の女性従業員がちらほら混ざっているのは、旅館とホテルの両方の雰囲気を出そうというのだろうか?
料理には色濃く反映されていて、ほかに「オーガニック・フレンチ」のレストランもあって、こちらも気になる。
夕食後部屋に戻ると、夜食の焼おにぎり(蕗味噌らしきものが塗られている)が用意されていた。
シャンプーなどにもナチュラル嗜好のものを用意してある。
などなど。
客筋は、20年も通ってくる常連客を含めた熟年組と若いカップルが、半々位の割合。
朝5時過ぎに起きて、いそいそと「立ち湯」に向かったが予想が外れて数人の先客があった。諦めて、さっと浸かって出て浴衣を着ていたら、全員出てきて無人に。
好機到来、いそいで戻る。あの人たちはなんと思ったことかしら・・・。
川音はどうして、こうも人の心をやすらげてくれるのだろう。腕に顎を乗せてぼんやりしていると、ゴジュウカラだろうか黒っぽいスズメによく似た小鳥が遊びに来た。
こうしていると、都会での人との少々の摩擦などどうという事のないもののように思えて、途方にくれている心もおだやかに落ち着きを取り戻す。
人はそれぞれの考え方の中で、それなりに生きて死んでいくのだ。頷くように湯がゆるゆると波立つ。
誰も知らないこの静かな透明なわずかな時間が、大切な宝物。
朝ごはんも丸!
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「明神館」
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