4.イタリア男って…。
ちょっと話は戻るが、ランチを食べに入ったリストランテには、よく巷で言われている「イタリア男」がいた。ギャルソン(イタリア語ではなんていうのだろう)である彼(写真の右側)は、道行く女性すべてに「ボンジョルノ!!」を連発する。決して男性には声をかけていない。にっこり笑って「ボンジョルノ!!」「ボンジョルノ。素敵なお嬢さん(オバサンでもね)!」そしてちょっとでも反応があると、「その髪型、とっても素敵ですね。ぜひうちの店でパスタを食べて行ってくださいよ!」というような、見え透いたお世辞を言ってる(にちがいない)。底抜けに明るく、あっけらかんと見え見えのお世辞を言われてしまうと、「クスクス」とか「うふふ!」とか笑ってしまうのは、世界共通の女性の反応のようで、打率は6割弱って感じだ。あれよあれよという間に店のパラソルの下は女性で埋まっていく。これはすごい能力である。どこの店でも声をかけられるわけではなし、たまに声をかけられても、彼のとはちょっと違う。

そう、実は私たち3人も、「ボンジョルノ!」以外はなんだかよく分からないうちに、結構ご機嫌でテーブルに座っていたのだった。そしてビールを飲みながらパスタとサラダのくる間、次々とカモにされてテーブルに着く、お仲間の老若女性を眺めて彼の腕前に感心していた。「カモ」って言いすぎですって?だって、パスタは見た目にもとってもそっけなく、お味も美味しくなかったんですもの。本場に来たのにガッカリ。あの笑顔に引っかかった私たちが悪いんですけどね、もちろん。
そしてもうひとり!
広場の市場を寄り道しながら、アカデミア美術館に着いてみると、長蛇の列で、入り口から団体、一般と2列に分かれている。アカデミアの建物を過ぎ、角を曲がって隣の建物の2辺を巡り、さらにその先の建物の角を曲がったところに列の最後尾はあった。150人どころではない人だが仕方がない、覚悟を決めて並ぶ。始めは日陰けにいたのだが、じりじりと進んだ先はカンカン照りの中。あまりの暑さにおしゃべりも萎んで、ぼっとしている眼に、前に並んでいる若い女性に近づく男性が映った。若いときのジョン・トラボルタを小柄にしたような風貌で、ニコニコしている。
あらら!見ているうちに、彼は彼女の体に日焼け止めクリームを塗り始めるではありませんか。腕やタンクトップから出た胸、そのうち、鼻先からおでこと顔にもクリームを塗っていく。それも丁寧に、やさしく囁きかけながら。失礼ながら、思わず見とれてしまっておりました。彼は最後にチュっとキスをして列を離れていく。彼女はなんだかうっとりしている。「ふ〜ん、ハンサムじゃないけれど、なかなか優しい男ではないか。日本では、なかなかあんな感じにさりげなく、そして人目を気にせずに、日焼け止めなど塗れないだろうな」と正直思った。
フライパンの上にいるような暑さの中、列はいっこうに進まない。最前列の様子を見に行ったyukiさんが戻ってきて「人と人の間がすごく空いていても誰も気にしていないの。それに、途中で露天の店にたむろしていたりするしね。詰めるとかいう感覚ないのかもしれない。見ていてイライラした」と言う。日本人が、なんとなく、気になるほど間近に詰めてしまうのは民族性かしら。「誰かひとりが並んでいればよさそう(これもお国柄)だから、順番に日陰に行こう」ということで、ひとりずつ抜け出すことに。

また、30分位したところで、先ほどの男性が水の大きなペットボトルを手に、やはりニコニコして戻ってきた。そして、やおら手のひらに水を受け、ピタピタと彼女の体に押さえながら水をかけていく。ビックリした彼女は「キャー!」っと言ったが、後は笑いながら水をかけられている。そのうち、子供の水遊びのように、ふざけ合いながらエスカレートしていって、髪の毛はぐっしょり、タンクトップもそれなりに。涼しそうでうらやましくなった。「ちょっと妬けるかも!」とはhiroさん。「やりすぎよ!」とはyukiさん。そして、彼はまた去っていった。残された彼女は、私たちのほうをちょっとはにかんだ様子で振りかえった。その眼は「どう、私の彼って素敵でしょ!」と語っていた。
でも「ちょっと、おかしくない?」だって、彼、炎天下の中に彼女を残していって、自分はちっとも暑い思いをしていないんです。私が彼なら、自分が並んで彼女を日陰で休ませるのに・・・。えぇい。オバサンはごまかせないぞ!!
さらに30分以上、延べ2時間位も並んで、やっと入り口のある壁にたどり着いた。
さて、あのカップルだけれど、彼がさっき戻ってきて「僕らはお腹がすいたので、あそこでこれを食べたいんです。それで、ここ取っといて貰えますか?」とかなんとか言うので、私たちは彼女のために愛想良くうなずいた。今は、日陰に座り込んで仲良くマクドナルドのハンバーガーを食べている。しゃべりながらパクついている、屈託のない彼を、幸せそうに見つめている、彼女の鼻の頭は真っ赤に日焼けしてピカピカしている。
2人の男とも、「なんてやつ!」って思っているにもかかわらず、最後はなんだか可愛くなって、笑ってしまった。そこが、さすが、本場のイタリア男ってところかもしれない!
アカデミアのダビデの像は、美しく圧巻!2時間並んだ甲斐があった。
夜は、「エノテカ・ピンキオーリ」に行く。ワインの感想を言ったからか、「東京店にもよく伺ってますのよ!」とyukiさんがマダムに言ったせいか、お土産にワインを一本貰った。
そうして、帰りの目印の小さな凱旋門は闇の中で見つからず、私たちは帰り道に迷ったのだった。 |