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夏目 麻生の
なんてことない「えとせとら」 −遊んで、食べて、仕事して−

フィレンツェ、フランス 迷走の旅!
UPDATED 07-09-14
 

5.メディチ家のアンナ・マリア・ルイザはフィレンツェの女神

今は8時、早く起きて、早朝のフィレンツェを一人でゆっくり散歩しようと密かに決めていたのだけれど、深夜まで三人でおしゃべりに興じたのが災いして、夢に終わった。

朝食を食べに一階のレストランに下りて行く。お客は誰もいなくて、貸切状態でどこにでも座れるのに、案内されたのは一番端の席。そこは入り口のすぐそばで、反対側には食器やカトラリーが山積みされている。あまり居心地の良い席ではない。いいえ、スタッフがそこから、カトラリーなどを持っていってテーブルセッティングするのだから、雰囲気も音もガチャガチャしてとても落ち着かなくて、すこぶる悪い席である。

こういうことは五年前の旅でも何回かあった。
ボーヌの、人気になり始めた隠れ家的レストランに行った時のこと。
樹木と花々が溢れた素敵な庭にテーブルが20卓ほど点在。セッティングはアジアンテイストでとっても良い感じ。すごく期待していたのに、マダムが案内してくれたのは、道路沿いの一番端。背中の後ろを自動車がビュンビュン走るから、うるさいし垣根越しに砂埃は舞い上がり、排気ガスの臭いもして、ゆったりと食事をする気になれない。
たまりかねて席を変えて欲しいと頼むが、「すべて予約で空いていない。」とにっこり笑う。
しかし、結局食べ終わるまでに来たお客は二組だけだった。う〜む、やられた!

その経験があるから、席が悪いときは「いやだ!」と言うことにしている。もちろん、喋れないので「ノン」とか「ノー」とだけをはっきり言う。そうすると相手は仕方なく「どちらのお席でもどうぞ」ということになる。こちらはお客さまだし、空いているのであたり前なのに、日本人はおとなしいと思っているらしく、ビックリされたり、いやな顔をされることもある。どうも、軽い(?)差別はあるようなのだ。
だから、高級レストトラン以外は、マナーに反しない限り、さっさと空いている好きな席に座るほうが精神衛生上よろしいのでオススメする。
この次は、品良くにっこり笑って「ノン」と言えるようになりたいものだと思っているのは、本末転倒かもしれない。でも、本気!

それはともかく、朝食の種類は豊富で、ハム類・パン・ヨーグルト・果物などとてもおいしく、つい食べ過ぎてしまう。特にハム類は全種類味わってみたいという欲望を抑えるのに大変で、中年を過ぎたイタリア女性が一様にふくよかなのは、しかたがないことだと妙に納得。紅茶はどんな高級店でも美味しいと思えなかったのには驚きだった。

まずは、ウフィッツィ美術館に向かう。
シニョリーア広場に足を踏み入れた途端、すごいと叫んで動けなくなってしまった。広場のあちらこちらにある彫像に圧倒されてしまったからだ。まるで、広場をオープンミュージアムにしたようで、昨日アカデミア美術館で見たダヴィデ像(5.17m)のレプリカを始め、海の神ネプチューンの噴水やマルゾッコ、ユディットとホロフェルネス、ヘラクレスとカクス、ダンテの像が点在。そして、ランツィの開廊にはサビ二女の略奪(レプリカ)をはじめの所狭しと9体ほどの彫刻が並ぶ。メディチ家の初代トスカーナ大公コジモ1世の騎馬像もあり、当時のメディチ家の権力の証となっている。どれも人間の何倍もの大きさだから壮観なのだ。

メディチ家の最後の後継者、アンナ・マリア・ルイザは知性を備えた先見性のある女性で、莫大な芸術品を「公共のもので、譲渡してはならない」との条件で、トスカーナ公国に譲った。そのため、ウフィッツィをはじめ、ほとんどのメディチ家の芸術品は流出することなく、フィレンツェに留まり、さらに発展して、今、私たちの前にある。

ウフィッツィでは、12世紀からの宗教画をたくさん見ることができた。14世紀に入ると、絵画の手法は平面的技法から変化し、フィリッポ・リッピ親子やヴェッロッキオを経て、ボッティチェッリにたどり着く。「春」・「ヴィーナス誕生」をまじかに見て、花の一つ一つや海の波や泡の描き方の、丁寧で繊細な手法に、見せられてしまった。絵画は実際に見ないと、その本当のすばらしさは分からないのだと、今更ながらに思った。
日本に来ていて、見ることができないかもしれないと心配だった、ダ・ヴィンチの「受胎告知」も戻っていて見ることができた。こんなものが描けるなんてと、絶句。

またもや観ている最中に、yukiさんにせき立てられて、泣く泣くメディチ家礼拝堂に移動。

埋葬記念碑に置かれている、ミケランジェロの寓意像「昼」と「夜」そして「暁」と「黄昏」に心を奪われた。そして、サンタ・マリアノベッラ聖堂でおだやかな時を過ごす。ここは、ダ・ヴィンチが、あの「モナリザ」を描いた所と言われているらしい。「緑の回廊」と呼ばれる回廊は人の気配がなく静かで、爽やかな風が通り抜けていて、中世にいるような錯覚をしてしまう。そう、まるで、ダ・ヴィンチが、考え事をしながら、散策しているかのようだった。



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