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夏目 麻生のなんてことない「えとせとら」 −遊んで、食べて、仕事して−


フィレンツェ、フランス 迷走の旅!

UPDATED 07-09-28

6.アヴィニョンの空は甘いブルー

フィレンツェを発ってフランスに向かう。
空港で、ひとりで荷物の番をしていると「ボンジョルノ」と後ろから元気に声をかけられた。ビックリして振り返ると、エノテカ・ピンキオーリで近くの席にいた、アメリカ人の女性二人組みだった。多分60代半ばで、小さくてコロンとした人と、痩せてひょろりとした人のコンビで、とっても仲が良い。一流レストランにいても、態度も服装も非常に自然体ですごく旅なれた感じだった。yukiさんに言われて、かなりきちんとした服装で行儀良くしゃっちょこばって座っていた(田舎者に見られるからと、料理の写真撮影も禁止されて)私たちとは大違いで、私は内心、ちょっぴり羨ましかったのだ。

屈託なく英語で話してくれるのだが、私はちんぷんかんぷん。しばらくして、2人とも諦めたようで、それでもニコニコ笑って「ドンマイ!」って感じでうなずいてくれる。退職して先生なのかしら。またもや英語が話せないことを、ものすごく悔やんだ。いろいろおしゃべりできたらどんなに面白いことだろう。そのうちファーストクラスの手続きの列に並びにいってしまったので「さすが!お金持ちの奥さんたちだったのかぁ!」と思っていたら間違えていたらしい。こちらを向いて「やっちゃったわ〜!」ってサインを送ってきたりして、フレンドリーで、チャーミングだった。フランスで別れたが、ちょっと忘れられない二人だ。

シャルル・ド・ゴールからTGV(新幹線のような列車)でアヴィニョンへ向かう。2時間ぐらい走って、南仏に入ったらしく、ひまわり畑が車窓に広がる。糸杉が見える。ゴッホの絵の原風景だ。
パリから約3時間でアヴィニョンに着く。明るく近代的な小さな駅で、ずいぶんとイメージが違っておどろいた。南仏だからかしらね、とチラッと思った。

駅舎から出た途端。「空の色が違う! 光が違う! 雲の形も違う!」と叫んで。Yukiさんにばかにされた。でも、だって、違うのだ。空の色は甘いブルー。日本のスッキリした空色の空とは明らかに違って、ブルーにほんのぽっちりピンクが混ざっているのだ。だから甘い。
光もそう。メガネをかけているのを忘れて「メガネ、メガネはどこ!」とやってしまった。レンズを通した光が、裸眼での光のように明るく透明に感じられて、思わず錯覚してしまったから。ものが鮮明でクリアに感じられ、その光を通した色は、日本の色とまったく違うことがよく分かる。花々の色も違うのだ。

そうして、雲の形。子供のころにインプットされているらしい、私の頭の中にあるヨーロッパの雲なのだ。空にぽっかりと浮かんでいる綿雲。あいまいなところがなく、しっかりとぷくぷく形づくられていて密度が高い。それがいくつも、その上に乗れそうなほど低く浮かんでいる。
ため息をついて眺めている、この幸せ。堪らない!

アヴィニョン市内1

駅のそばのHertz(エルツ)=レンタカー会社へ、車を借りに行く。Yukiさんが運転するのだ。係りの女性がトヨタを用意してくれた。「ナビ」は要るかと聞かれ、私がどうしてもほしいと言って、要らないと言うyukiさんとしばらくモメた。しかし、今までの経験からyukiさんの方向音痴は良く分かっている。そして私はもちろんのこと、hiroさんにいたっては問題外なのだ。フランス語の分からないナビゲーター役の私としては、心底、必要性を感じているから、ここは譲れない死活問題なのである。

見かねたのか、呆れたのか「ナビ」は無料でサービスするという。やっと車に案内してもらい、ざっと説明を受け、ナビについても教えてもらう。操作方法はどうも日本のものと変わりないようだ。
けれども、後で訪れる「ポン・デュ・ガール」を表示してもらおうとすると、出てこない。係りの女性はどうも初めて触るらしい。いろいろ独り言を言いながら悪戦苦闘していたが「お手上げだわ。分からない!」と言って、「ナビ」を乱暴にボンと叩くと「良い旅を!」と言ってさっさと行ってしまった。
えぇ!信じられない。「すみません」の言葉はなし。「だから言ったじゃない!ナビなんてあたって、難しくって使いこなせないんだから!!」とyukiさんが勝ち誇ってのたまう。

前回、何十年かぶりに左ハンドルの車を運転したyukiさんの隣でナビゲーションをした時の記憶が生々しく思い出されてきた。あの時は、いつもの右ハンドルの座席での視的感覚からか、車は自然と右へ右へ寄る。だから、右のサイドミラーは、街路樹や柵やいろいろなものにぶつかる。右側に座っている私はとっても怖くて「もっと左、もっと左に寄って!」と言うのだけれど、交通ルールが違うのだから、yukiさんはそれどころではない。まっすぐ前を見詰めてハンドルにしがみつき、人の話など聞いちゃいない。思わず悲鳴をあげた私に「やめて、あんたがそんな声を出すと、もっと怖くなってパニクっちゃう!」と怒鳴るので、歯を食いしばって耐えたのだが、生まれて始めて「死ぬかもしれない」と覚悟したのだった。

まあ、5年前の経験があるし、日本車だしね。大丈夫だろうと、気を取り直して車に乗り込んだ。「練習したらどうかしら?」と言うhiroさんのすばらしい提案で、駐車場をぐるぐると何週か走ってみる。左への寄り方はずいぶん良くなっているし、交通ルールも思い出していて、結構スムースな滑り出しである。Yukiさんの顔にも心なしかゆとりが・・・。
こんどこそ大丈夫と言うことで、いざ出発!
市街を通り抜けて、城壁を超え、郊外にある田舎のホテル「LES FRENES」に向かうのだ。

突然、急ブレーキで、車が止まる。
Yukiさんが一言。「バックの仕方が分からないの!」



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