フィレンツェ、フランス 迷走の旅!
9.エレガントな街、月の港 ボルドー
早朝。バスローブのまま、ベランダに頬杖をついて庭を眺める。微風が私の周りをちょっと漂ってから、軽やかにどこかに流れていく。
爽やかな庭での朝食。セレブたちって朝はごゆっくりのようで、姿を見せない。
朝食はコンチネンタル・スタイル。メニューはありきたりだけれど、パンもジャムもヨーグルトも、どれもこれも上質で、美味!穏やかでゆったりとした時間が心地よい。
庭をひとりで散策していたら、yukiさんから、「出発するわよ!」と声がかかる。まだ列車の時間には2時間以上もあると、訴えたのだけれど却下。名残惜しいけれど、チェックアウトする。
無事駅に着き、レンタカーを返しても、列車が出るまでには1時間ほどある。余裕だ!
相変わらず、駅は閑散としていて、のんびりとした空気。TGVだけの駅だからだろう。
売店を覗いたり、おしゃべりをしたりしていたが、どうしても気になることがあった。
「ねぇ。あそこに、乗る列車が、でてないの。」そう、電光掲示板に私たちの乗る列車が表示されていないのだ。「まだ、順番が来ていないんじゃないの?」とhiroさん。でも、もっと遅い列車が表示されだした。レンタカーの返却でお疲れモードのyukiさんは「そんなことあるわけないじゃないの!」と少しぶっきらぼう。だけどやっぱりおかしい。「お願い!」って頼んで、改札の窓口の人に聞いてもらう。ふた言み言、やり取りしていたhiroさんが飛んできた。「駅が違うの!」顔が真っ青だ。
「乗り遅れたら、飛行機にも間に合わなくなるのよ。急いで!」特大ハードキャリーを引っつかんで、私たちはすごい勢いで走った。タクシーに飛び乗る。「アヴィニョン中央駅へお願い!列車に間に合わないの!!」血相を変えた私たちの剣幕に、始めはビックリしていた運転手さんは、そのうち、何度もうなずくと顔を引き締めて、猛スピードで走り出した。アヴィニョン中央駅に着いたのは、発車5分前だった。
「良かった良かった。間に合ったなんて僕にも信じられないよ。アヴィニョンの街中をこんな速いスピードで走ったのも、初めてだ。おまわりに捕まらなくって良かったよ!フランスの旅、楽しんでおいで!」と笑って手を振ってくれた、小太りの運転手さん、本当にありがとう。
普段TGVは最初のTGV駅に発着する。たまたま、私たちの乗る列車は中央駅から出発するのだった。中央駅はクラシックでどっしりとしていた。列車に乗った途端、どっと疲れが出て、3人ともぐったり、言葉も出なかった。リヨンで飛行機に乗り換えて、ボルドーへ。
ボルドーの市内で一泊してから、ワイン街道をひた走り、ポイヤックへ行くのだ。

ボルドー市はしっとりとしたエレガントな街である。別名を「月の港」という。この街が、ガロンヌ川に沿って三日月形に発展した港町だからだ。なんとも素敵な名前で、市の紋章にも、川に浮かぶ三日月が描かれている。ボルドーは、「ネオクラシック」な建物が並び、大人の雰囲気の街である。そのクラシックな建物の間を、超現代的なデザインの「トラム=路面電車」が走っている。それがまたなんとも、良いのだ!

今度のホテル「Amarys=アマリース ロイヤル サン・ジャン」は、TGVのサン・ジャン駅にとても近く、元貴族の館の3つ星ホテルらしいのだが、設備は老朽化しているし、部屋もバスルームも非常に狭くてがっかりした。トラムに乗って、駅から離れているボルドー市の中央に繰り出す。トラムは、フランスでは最新の路面電車で、パンタグラフがないため、街の景観を壊さないし、乗り心地は抜群。
サンタンドレ教会の2本の尖塔やカンコンス広場にそびえるモニュメントに圧倒されてから、ヨーロッパで一番長い歩行者天国、サント・カトリーヌ通りをウィンドショッピングする。あちらを覗き、こちらを眺めながらするうちに、あれあれ、店がどんどん閉まっていく。空はあんなに明るいのに、6時半〜7時ごろまでには、目抜き通りはうそのように静まり返った。ワァー、しまった。ボルドー地方の地図、買ってないのに!

それでは美味しい夕食を頂きましょうと、老舗のカフェ「ル・カフェ・レジャン」に入る。家族連れや、カップルで満席。それでも、パリよりボルドーのカフェのほうが、しっとりと落ち着いている。ボルドー風ステーキと羊、そしてサラダ。3人でこれで充分だった。もちろん、ボルドーワインを1本とチーズも。
よく食べ、よくしゃべり、よく笑い、お腹も心持ちも大満足。コーヒーには名物のカヌレが付いてきて、うれしかった。これも美味。しばらくは散策をしながら、後半はトラムでホテルに戻り、お土産に買ったはずのワインを、さらに1本空けて、熟睡!


