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ふる里の山河、甘酸っぱい初恋、学校生活のあれこれ…。
流れいく時の中で、ふと想いをはせれば、なんだかホロリ。胸がキュン!
そんなヨモヤマ、ご一緒に!!!

しかめっつら

今はもう29にもなる次男はわずか1歳とちょっと。しばらく耳鼻科に通ったことがあった。なんだって耳鼻科は待つのが長い。親も子も待ちくたびれて、ほとほと疲れる。グズグズ言い出すのに困って待合室の外へ連れ出した。
同じように小さな子どもを連れて所在無さげに医院の脇に立つお母さんと目が合った。途端に異口同音に声が出た。
「ですよね」
アタシとそのお母さんは小学校の同級生だったのだ。言っても小学校卒業から20年は経っていた。しかも当時さほど親しくしていたわけでもなかったにもかかわらず、互いを瞬時に認識した。
「先月、こっちに転勤になったばっかりねんやけど」
「そうなんや」
即、お国言葉の会話になる。
アタシは中学一年で京都から東京へ移転・転校したが、彼女はずっと京都で暮らし、小学生時代の子どもらや教師らのその先をよく知っていた。
「あのセンセな、すぐ転校しはってん。なんや偉ろなりはってん。校長センセにならはったやんわ確か」
「へー」

どこに誰が進学してどこに勤めているだことの、結婚したのしてないの、話は尽きることもなく、アタシは「へー」ばっかり。

「あの子なあ、死にはってん」
「なんでやのん?」
「ものそ、アタマええこーやったやん」
「そやね」
「ものそ優秀で、キョーダイ行きはってん」
「へー」
「なんや、失恋しはったんやて」

もしかしたら、一番の仲良しだったかもしれなかった女の子の暗闇を思った。きっと同じ匂いを本能的に感じていたから仲良しだったんだと知った。
「小学生時代」を思い起こそうとすると、大概が乳濁して霞がかったように頼りない。なんだか心もとなく、危なげで息苦しい。表向きは「少々落ち着きがないが活発・明朗なお子さん」で通っていたりもしたが、今さら思うに子どものくせに、いつも眉根を寄せてシカメッツラをして、ようやく孤独に耐えているような自画像しか結べなかったりする。

そして、さらに27年の月日が流れ、アタシはどうにかまだ生きている。「あの子」ほど優秀でなかった分、生存力があったのかな、と自嘲する。生き延びた分ささやかに幸福だったり、やるせなく不幸だったりをくり返してきたような。笑顔も獲得し、大きな喜びも知りはしたが一方で、ぬぐいきれない「哀しみ」は背に負うたまま、荷降ろしの未だできずにいることも承知している。
同時に、確実なものは「回復」の道を選択するという「決意」しかないことも知り得たがゆえに、シャキッと顔を上げて前を向いてみせる気概ぐらいは…持ってるツモリ。

「天真爛漫で無邪気な存在」という「子ども像」、世間の期待や固定観念と子ども自身の内側の現実は往々にしてかけ離れている。不完全な人間が構成する家庭はややもすれば「機能不全」であらざるを得ない。実はそれもまた、自明の理なのだ。その構造を認識すれば、しかしながら、機能不全という実態を恐れることもない。

薄暗い乳濁した霞の溜まりにたたずんで、眉根を寄せてシカメッツラしているアタシだって、アタシが笑いかければ、なんとか笑みを返してくれるのだ。

記:小玉 徹子 2007.05.10

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