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私は新聞記者の真似事もしている。といっても大学新聞である。といってもマンモス大学である。といっても九州ブランチの話題の取材である。

国道57号線から阿蘇大橋を渡りきるとすぐ、左手に九州東海大学阿蘇校舎(農学部)へと続く坂道が始まる。
上りきったここのキャンパスか熊本市内の同大キャンパスかへ、毎月中旬頃、取材に行く。いつも東京の同大系列出版社から来た若い編集者のYさんが先着して、私を待っている。
10月の取材は、11月1〜3日に開催される阿蘇校舎の学園祭「数鹿流祭」に出品されるハムづくり現場だった。ちなみに数鹿流(すがる)とは、阿蘇大橋を渡る時、北側に望める大きな滝の名前に由来している。
私はこの年になっても、物事の生々しい現場に立ち会うのが得意ではなく、畜肉のぶら下がっているシーンに踏み込むのに多少のためらいがあったのだが、白衣や帽子や長靴をつけさせられているうちに笑いがこみあげてきて、なんだかどうでもよくなってきた。
「福田さん、白衣が全然似合いませんね」

Y青年に、ずけっと言われて、ますます居直り、かえって調子が出てきた。
現場におじゃましたところ、豚が姿のままぶら下がっているようなことはなく、そこから先の作業に有志の学生たちが粛々といそしんでいた。

Gさんという指導官は典型的な職人気質の方と見えた。ここでつくる採算度外視のハムについて、工程を綿密に説明しながら、自信たっぷりに語ってくださった。今つくっている豚肉原料のハムやベーコンとは別に、既に鹿肉ハムも開発したという。
命名「もみじハム」。
それを聞いた瞬間から私の洒落が誘発されてしまい、まさか取材相手のGさんに対しては控えたが、Y青年にばんばん浴びせた。けっこう反撃されたが、いずれもここに書けるレベルではないだろう。
だが清潔な加工場と学生たちの真剣な眼差しにふれ、「大学ハム」のレベルの高さは存分に予感できた。ひとまずラベルだけ頂戴して、ノートに貼る。これがほんとに貼られた上質のハムを求めて、来月、あの長い坂道をのぼるつもりでいる。
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記:福田 章 2006/10/01
特派ルポ:九州よかとこばい
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