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古代ロマンに思いを馳せ「近つ飛鳥」を訪ねてみた
なかなか入梅しない近畿地方に夏日が続く6月7日、大阪府立「近つ飛鳥博物館」へ行ってみた。電車とバスを乗り継いで行くのが面倒だったので、ふだん移動に使ってるホンダのズーマー(50CC)を飛ばす。自宅から博物館まで約20Kmの道のり。50CCのバイクなら小1時間ほどかかると見積もった。ズーマーは50CCにしては車体が大きく、幅広のタイヤを履いているので安定感があり、長時間の運転でも疲れが少ない。

地図検索サイトであらかじめ道順を確認していたので、ほぼ予定通りの時間で迷うことなくたどり着いた。「近つ飛鳥博物館」は大阪府南河内郡河南町の山の中に、コンクリート打ちっぱなしの建物が忽然と現れるような印象がある。
飛鳥地方は大陸からの渡来人が多く移り住んだ、古代日本の文化先進地域でもあった。ここには5〜8世紀頃の古代日本の、最先端技術を誇った文化遺産が数多く展示されている。

ちなみに博物館の名称にもなっている「近つ飛鳥」とは、今の大阪府羽曳野市飛鳥を中心とした地域のことで、古事記の中にその由来が記されているという。「近つ飛鳥」に対して奈良県高市郡明日香村飛鳥を中心とした地域を「遠つ飛鳥」と呼ぶらしい。

博物館は壁面全体がコンクリート打ちっぱなしで、しかも屋上が階段状になっていて人が昇れるようになっているという特異なデザインだ。駐車場から建物の向こう側へ回り込んで入口へ至る通路は、左右を高いコンクリート壁に挟まれて、さながら古代へと時空を超えて行くような趣がある。

この通路のほかに、屋上の階段を昇って行って最上階からエレベーターで入館することもできる。
広いエントランスには喫茶コーナーと図書コーナーがあって、軽く食事をしたり飛鳥時代に関する資料も閲覧できる。そしてエントランスの中央部には、史蹟・鹿谷(ろくたん)寺跡にある十三重の石塔のレプリカ(8m)が展示されている。
この石塔はひとつの石から削りだしてあるのだ。いまなら機械力を使ってすぐに掘れるだろうが、当時はいったいどれほどの時間と労力を要したのか……。

入館料600円を払って展示室に入る。展示してあるものは要するに「昔の人が作ったもの」だが、驚くべきは金細工にしてもガラス細工にしてもデザインが秀逸なことだ。とくに勾玉なんていうものは、当時としてはそうとう斬新なデザインだったに違いないと思うのだ。ガラスを削りだして形を整え、ヒモを通せるように穴を開けるのは、かなり高度な職人技だったはずだ。

この日は「古代の工房」というテーマで特別展も開かれていた。古代の製鉄は砂鉄から精錬する方法で、鉱炉に空気を送るための木製と土製の送風管がほぼ原型のまま残っている。また銅鉱石から銅を取り出す技術も持っていたらしく、銅鉱石のカケラも工房跡から発見されている。

当時の人たちが作り出した製品のほかには、工房で働いていた工人が逃げ出した人数を記録した木簡まで展示されていた。そこには「四十八人」とはっきり書かれている。工人たちを管理する役職の人が「また随分まとまって逃げてくれたものだな」なんてボヤきながら書いたのかもしれない。工人の境遇は「雇われていた」というよりは、むしろ「働かされていた」ことが木簡の記録から窺い知ることができる。

博物館の周囲は「近つ風土記の丘」という公園として整備されていて、6世紀後半に造られたものを中心とする102基の古墳のうち40基が見学できるようになっている。散策のための通路が完全に整備されているので、山の中とはいえ絶対に迷うことはない。

散策道の脇には、石を積んで造られた石室と思しき造営物がいたるところに見られる。その石も、ひとつひとつが結構な大きさだ。こんな山の中にこれだけの石を運び込んで、しかも形を整えて並べる作業は全て人力だったはず。石を運ぶ陸上用の橇みたいな「修羅」という道具があったにせよ、それを引くのは人の力なのだ。こうやって出来上がったものを見ると「こうして造ったんだな」ということが分かるけれど、当時の人はその方法や手順をゼロの状態から考え出して実行したのだ。そう思うと尊敬の念と共に感動すら覚える。

博物館から出発してしばらく歩いて行くと、博物館に負けず劣らず特異な外観の建物が見えてくる。まるで何かの秘密基地みたいな外観の建物は、なんとこの公園の管理事務所だという。

バス停が隣接されているので、バスを待つお客さんの姿がちらほら見える。もっともバスが来るのは1時間に1〜2本。やっぱり自分でバイクを運転してきたのは正解だった。
駐車場へ戻り、古代ロマンに思いを馳せながら、山道を帰路についた。

記:平藤清刀2006/05/15
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