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スピードの向う側…バイクツーリング 青森へ走る
ふと思い立って、青森へ行ってきた。
東北自動車道を使えば、盛岡からはおよそ180キロ、二時間の距離だ。愛車BMW/R1150ロードスターにとっては、ほんのひとっ走りだ。
でも、高速道路じゃつまらない。十和田湖から八甲田山を経て青森へ行くルートをとった。行程のほとんどが山坂道である。高速道路と比べると時間もかかるし、スピードも出せないが、こっちのほうがずっと楽しい。

オートバイの魅力はスピードにある。
もっとも、絶対的な意味でのスピードを求めるなら、新幹線や飛行機の旅のほうが遥かに速く目的地に連れていってくれる。
オートバイの魅力は、その加速フィーリングにあると言い直したほうがいいかもしれない。リッタークラスの大型オートバイともなると、圧倒的な迫力を伴って、日常では決して味わえない緊張感と愉悦を味わわせてくれるのだ。

柳田國男が『旅行の話』の冒頭に次のように記している。

誰も彼も旅行する世の中になってみると、旅行者にも数十の種類及び階級のあることがよく分る。目的によってこれを分類すると、単に健康のために、なるべく平常の生活を変更せぬことに努めつつ、安楽な旅行をつづける者が、最も低級な旅行者であろうと思う。

乗っている人が誰であろうと、オートバイという乗物は否が応でも非日常の世界へ連れていってくれる。けれども、それに溺れてしまえば、柳田の言う〈低級な旅行者〉の仲間に入るだろう。実際、スピードのみのためにオートバイに乗り、マシンの改造に大金を投じ、挙げ句の果てに簡単に若い命を落とす連中が後を絶たない。

とは言うものの、20代でオートバイに目覚めていれば、私もそんな一人になっていたかもしれない。
オートバイの魅力がスピードにあるのは曲げようのない事実だが、大人のオートバイ乗りはスピードの向こう側にある、日常とは別の世界を求めてアクセルを開く。
要するに、別の楽しみを知っているのだ。
高速で駆け抜けるあいだにオートバイ乗りは、空の色や風の冷たさや湿度や木々の香りを瞬時に凝縮して吸収し、蓄える。
ツーリングの楽しみとは、その密度を言うのであって、決して走行距離やスピードを指すわけではない。

青々とした森を行く山岳ツーリングを存分に楽しんで、青森県立美術館を訪ねた。お腹がぺこぺこだった。コレクションを拝見する前に、まずレストランに向かう。
広くて明るいレストランで食べたカレーライスには、青森リンゴが入っていた。たった今通ってきた青い森の味がした。


記:斎藤 純 2007/07/27
特派ルポ風に吹かれて、岩手

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