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新緑の十和田を訪ねてきた。
足はいつものBMD/R1150ロードスターだ。
十和田湖とその北側に位置する八甲田山界隈は、ブナの宝庫でもある。山奥まで入っていかなくても、車道からブナの巨木が見られる。
5月、ブナは新緑をまとい、道にアーチをつくる。ブナのアーチの道を行くとき、大気は緑色に染まっている。陽光がブナの薄い葉を透かして降り注ぐからだ。
このアーチから、バロック建築の教会に見られるアーチを連想したことがある。ずっと後に、バロック建築のアーチは紛れもなく、落葉広葉樹の森を模したものだと知った。
オートバイを停めて奥入瀬渓流を眺めていると、耳の奥でバッハの無伴奏チェロ組曲一番の冒頭の調べが響く。せせらぎとバッハがみごとに重なり、ぼくのなかで調和する。

ちなみに、バッハはドイツ語で小川を意味するのだという。改めて言うまでもなく、バッハの音楽はやがて大河となったわけだが。
十和田はどの季節に行ってもそれぞれに味わい深い。今年も何度も通うことになるだろう。
さらに、十和田市に新しく十和田現代美術館ができた。国内外21アーティスト22作品が収められていて、企画展もひらかれる。ぼくが行ったときはヨーコ・オノ展を開催中だった。十和田湖からは30キロ以上離れているのだが、十和田市の官庁街という一等地にこの美術館はある。一般に地方の美術館は郊外の遊休地につくる傾向が強く、本来の美術館が持つ「都市のオアシス」としての機能を考えていないところが少なくないが、十和田現代美術館は作品内容はもちろんのこと、その点でも秀逸だ。これで十和田に行く楽しみが増えた。
ツーリングのあいだ、ぼくの目がしばしば涙で潤んだ。
青空と新緑が目にしみた。しかし、それだけではない。
こうしてツーリングを楽しめることに対する感謝の気持ちが涙の理由だった。青空、道、オートバイ、ブナの木々、満々と水をたたえた十和田湖…すべてがありがたかった。
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記:斎藤 純 2008/06/03
特派ルポ:風に吹かれて、岩手
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