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猛烈な残暑も終わり、過ごしやすい季節になってきた。10月まで残暑が続くと言う予報もあったが、いつもどおり美味しい秋の到来だ。「食」の秋はもちろんのこと、飲兵衛としては「飲み」の秋が魅力的。秋の夜長は、お酒を飲んで過ごすのが贅沢の極みと言える。今年は短い秋になりそうなので、機を逃さずに秋のお酒を堪能したい。暑い夏は、とりあえず冷たいものを、とはじめがちだったし、冬になると寒いので、暖かい飲み物が欲しくなる。気温も落ち着いた秋なら、好きなお酒をゆったりと飲める。それぞれの「酒」の味わいや香りのニュアンスもことの他じっくり伝わるのがうれしいところだ。
秋に登場するお酒といえば、限定出荷の日本酒や晩秋に解禁されるボジョレー・ヌーヴォーをはじめ、たくさんの定番がある。とはいえ、今日は定番以外で攻めてみたい。そこで、中目黒の「グランシップ」にやってきた。水族館バーと謳うだけあって、巨大な淡水魚が回遊する横幅5メートルの水槽は圧巻だ。2メートルオーバーの魚と差し向かいで飲めるのは、不思議な体験。しばらく見つめ合っていると、「俺にも飲ませろ」という魚の気持ちが伝わってくるような気がする。また、メニューの一部を季節に合わせて変えているのもポイントが高い。毎日飲んでいると、一風変わったお酒を飲みたくなるものだ。
まず、ビールで乾杯するなら、サラナックの「パンプキンエール」が面白い。名前のとおり、かぼちゃのビールなのだ。
一口含むと、シナモンの香りがぱーっと広がり、のど越しでジンジャーの刺激を楽しむ。どこがパンプキンなんだ? やんわりと疑いつつ飲み込むと、のどの奥からかぼちゃの香りが鼻腔をくすぐる。
まさに食前酒といった味わいで、シナモンが食欲を掻き立てること必至だ。
食後または女性におすすめのデザートリキュールが、カエデが目を引くボトルの「ザ・マッカラン・アンバー」。 美しい紅葉をイメージさせる、深みのある琥珀色は、まさに秋のお酒にふさわしい。メイプルシロップの甘さが好きな人は、そのままロックでいきたい。甘いナッツのフレーバーが堪能できて、まさにデザート。
とはいえ、飲み終わりには、スパイシーな後味が残る。これは、定番シングルモルト「マッカラン」の特徴だ。名前のとおりマッカラン蒸留所で作られているので、男性でもいける。しかも、度数が25%あるので、しっかりとした飲み応え。失恋でもして甘さがせつなく感じるなら、マッカランで割って、「ウィスキー・アンバー」を楽しもう。シングルモルトと甘いリキュールの絶妙なマッチングから醸し出されるフレーバーは感動的だ。
本格飲みをはじめるなら、イチオシは「ズブロッカ」。ヨーロッパバイソンが食べる草が入った有名なウォッカだ。
キリキリに凍らせて飲むのが定番だが、秋なら常温のストレートで飲んでみたい。牧草の香りが一気に広がり、冷やしているときとはまったく違う顔が覗く。牧草の青臭さというか、桜餅の匂いに似た独特の香りがあるので、人によっては苦手かもしれないが、慣れてしまえば病み付きになってしまうこと請け合い。
ズブロッカを自宅で飲むなら、試してもらいたいことがある。
瓶が空いたら、捨てる前に牧草を取り出し、新しい瓶に追加するのだ。5〜6本も溜まれば、青臭さは「畳か!」と思うほど強烈になり、ズブロッカファンにしかわからない、感涙の香りに昇華するはずだ。
1年中飲んでいるでしょう、と言われたそれまでだが、秋に飲むアイラモルトは、格別だ。アイラ島の蒸留所で作られるシングルモルトウィスキーのことで、ヨードとピートの匂いが強烈に立ち上るのが特徴。
わかりやすく言うと、女性に薦めた場合、顔を近づけただけで「薬のにおいがする」と言い、一口飲んでむせ込み、怒られるようなお酒だ。もちろん、好き者にとっては、垂涎の香りでもある。見渡す限りの大麦の畑が広がり、背後からは波の音と磯の香りが漂ってくる、そんなウィスキーなのだ。
数あるアイラの中でも、秋といえば「カリラ」。ウィスキーにしては淡い色合いなのに、スモーキーなテイスト。同じアイラモルトの「ボウモア」ほどおとなしくなく、「ラガヴァリン」ほど暴れていない。枯れているとも感じるが、目をつぶって飲めばフルーツの味わいが口中に広がり、秋の山中で拾った果実のイメージが浮かぶ。飲み方はもちろん、ストレート。グラスは普通のテイスティンググラスではなく、ロックグラスに入れてもらうと、香りを贅沢に楽しめる。一度お試しあれ。
ほろ酔い加減で店を出ると、湿り気のある涼しげな風が顔を撫でる。帰路、目黒川沿いを歩いていると、虫の鳴き声が聞こえる。道端の樹木は色づき、もうすぐ散り始めるのだろう。夜になると際立つが、街並みはすでに全身で秋の到来を知らせているのだ。
鼻歌を歌いながら家に着くころ、もうすでに、明日の夜に飲みに行くのを一刻千秋の思いで楽しみにしているのである。
撮影・取材協力:グランシップ
東京都目黒区東山1-3-10 1F
phone:03-3712-5587
http://www.granship.info/
10トンの推量を誇る巨大水槽に、全長2メートルを越す淡水魚・ピラルクーをはじめ、大型魚が鑑賞できるショットバー。季節に適したイベントメニューを提供しており、秋のお酒や食事が楽しめる。
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記:柳谷智宣
特集:秋のかほり
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