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きのこ開眼
「味」はもちろんだが、きのこほど「秋のかほり」を運んでくれる食べ物も他にはないだろう。ましてや、それが自然の森や林下で我が手づから収穫したものであれば、これ以上の季節の感受もあるまい。

そして今年ほど、きのこに恵まれた年はなかった。普段見過ごしてしまうきのこに疎い人間でも、その存在に目覚めるだろうと思わせる、まさに「開眼」と言うにふさわしい収穫であった。

まず、私の住んでいる街には、ところどころに雑木林がある。10年ほど前までは荒れ放題だったが、近年、ボランティアでの清掃活動が入り始めた。枯れた木の始末、下草の刈り込み等が定期的に行われ、今や市民の憩いの場になりつつあるこの林に、食用になるきのこがボコボコと生えだした。自然というやつは、実に不思議で感動させられる。
その一部をご紹介したい。

9月9日、ナラタケモドキ株また株…。とても食べきれる量ではなかった。鍋物、味噌汁、油炒め等、何でもOK。 別の林にて。ナラタケモドキの株の前にノウタケ。周りを見るといたる所に!これも皮をむき、スライスにして油炒めに。肉が白いうちは大丈夫。

さて、3週間後に同じ林を訪れたところ、今度はナラタケが…。これも凄い量で出ていたのは、ちょっとびっくり。

これも、とても食べきれる量ではなかった。鍋物、味噌汁、油炒め等、何でもOK。ただし、軸の部分は消化に悪いので捨てる。

その次は、毎年恒例、禁漁間近の渓流釣り。釣り友達にも声をかけず、一人で好きなように釣りを楽しむ。そんなスタイルが10年以上続いているのだが…。

9月14日、一路岩手へ。この時季は大体天気に恵まれるのだが、この日ばかりは雨にたたられ、川は増水のうえ、濁流となる。仕方なく釣りは諦め、急斜面を登っていると、ふと目に飛び込んで来たのが、オレンジ色に近い立派なアカヤマドリダケ。実際に採るのは初めてだが、そのがっしりとした軸の太さと独特の傘の形状。どこから見てもアカヤマドリダケに間違いはない!!
感動の喜びに打ち震えながら、なおも周りを見回すと、あっちにもこっちにも、ポコポコと生えている。
おおーっ、まさにこれはきのこの宝庫!!
早速、最近きのこにはまりつつある長女を呼んで、2人で採りまくること1時間。そんなに採っても食べきれないので、そこそこでやめたが、この中に香りの王様・天然のマツタケが混ざっていたのには感動。

【岩手での収穫】
天然のマツタケ。無論、焼いて食べた。

アカヤマドリダケ。話には聞いていたが、採るのは初めて。右の写真を見て欲しい。手のサイズと比べると大きさが分かる。

さっそく、アカヤマドリダケの油炒め。傘の黄色が全体に広がり、食欲を誘う。その味のうまいことうまいこと!! きのこが採れなかった時のことを考えて、あらかじめ購入しておいた栽培用のブナシメジ。アカヤマドリダケを混ぜて、きのこスープを作った。これまたうまいことうまいこと!!しばし、至福の時間に浸った。

満腹になったところで、来年の釣りの下調べとして、目指すは下北半島の大畑川。それにしても遠かった。地図でみると、大した距離には思えなかったのだが…。
やっとの思いで着いた青森も雨。流石に渓流釣りは無理。仕方なく温泉につかり、恐山観光に切り替えた。
途中、ブナの連なる林道を運転中、チラリときのこ発見。車を止め、倒木のところへ行くと、ブナシメジがビッシリ。運転中に見つけることができるなんて、自然が豊かというべきかラッキーというべきか…。

24時間OKの露天風呂。
ここでしばらく釣りときのこに狂えば、ストレスが全て消え去るのでは…。
途中で見つけたブナシメジ。これもまた旨かった。

9月23日、八ヶ岳登山。観音平から編笠山に至る道を辿りながら、きのこを探す。ショウゲンジとハッタケが主な収穫物であったが、ショウゲンジは一家で食べきれず、友人におすそ分け。
次の日、青年小屋から権現岳の山頂を踏み、三ツ頭から木戸口公園方面へ下ること4時間。流石に日ごろの不摂生が祟って、ヘロヘロになってしまったが、途中で採れたきのこは、ナラタケモドキ、ヤマイグチ、立派に開いたカラカサタケと真っ赤な傘を出したばかりのタマゴダケなどなど。同行者たちもきのこ眼になってしまったらしく、次々ときのこを見つけては歓声をあげていた。
いい大人を、これほど夢中にさせてくれるものも、あまりないのでは…。
「登山のついでに」あるいは「釣りのついでに」できるというのが、凄く得をした気分になる。
ショウゲンジ。コムソウダケとも呼ばれる。味噌汁に入れると、コクと旨味を出してくれる。一度味わってしまうと、はまってしまう。

カラカサタケ。上から見るとおっぱいのよう。両手で握ると、ほわーんと元に戻ってくる。(ボロボロと傘が壊れるものは毒きのこ、ご注意を!!)傘の部分をフライにすると美味。サイズは左の写真をご覧あれ。かなりの迫力。

タマゴダケ。地元の人も意外に採らないきのこの一種。幼菌はまさに卵のようで、この名の由来がよく分かる。味噌汁にも油炒めにもバッチリ。軸の白いものはベニテングダケ(毒)なので、注意が必要。

そんなこんなで、この秋の我が家の食卓は、きのこ料理のオンパレード。実にさまざまなきのこを胃袋に収めた“きのこの年”となった。
しかし、「間違いなくこれだ!」とガイドブックを見ながら検証するのだが、初めて食べるきのこには、やはりそれなりの勇気と覚悟を要する。

食べてしまった後、ちょっと心配になっているのは僕だけ…?

記:吉田 伸一
特集:秋のかほり

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