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向島百花園の梅祭り
梅で知られる向島百花園。江戸時代、骨董で財を成した佐原鞠塢(さはらきくう)が「だれでも、いつでも入れる」という観点のもと設立した。別名「梅屋敷」とも呼ばれるこの庭園に、3月1日、足を運んだ。

10:30、天気は晴れているが少し肌寒い。「春夏秋冬花不断 東西南北客争来(しゅんかしゅうとうはなたえず とうざいなんぼくきゃくあらそいきたる)」と書かれた庭門をくぐり少し歩くと、すぐに梅が私を迎えてくれた。白加賀と紅千鳥が、紅白で元気いっぱい花開いている。

近づくと、ほんのり香りがして春を感じさせてくれる。
同じ梅でも白滝枝垂れは、幹が桜のようで、白加賀や紅千鳥とは違った印象を受ける。この梅はとても背が低く、大人だと上から見下ろす形になってしまうので、少し申し訳ない気がした。他にも、見驚、鴛鶯、豊後などが植えられており、豊後以外は見ごろだ。

そんな中、すでに時期が終わってしまった梅もある。老梅は一ヶ月前がピークだったらしく、たった一つの花を健気に残し、散ってしまっている。着実に、季節は移り変わっているようだ。

日本の花と言えば桜だ。硬貨の絵柄としても使われ、四月になればお花見全盛。桜が1番、梅は2番手という印象が強い。でも、桜を見るためには見上げなければならないが、梅の多くは人の目線に花があり、見やすいように人に近づいてくれる。そう考えると梅は、人にやさしい樹木なのかもしれない。

梅を見ながら庭園を散策していると、1つの建物を見つけた。「御成座敷」と呼ばれるその建物は、文化人のサロン的な役割を果たし、建設された当時はその中でお茶や歌会などが行われた。しかし、明治43年の隅田川の洪水、昭和20年の東京大空襲により被害を受け、現在の建物は昭和60年に再建築されたもの。予約をすれば、一般人でも利用することもできる。

その建物の縁側に、2つ積み重ねられた石がある。これは「関守石」と言い、「ここから建物に入らないでください」というメッセージを伝える、言わば進入禁止の看板の役割で置かれている。
この石に、私は思いやりを感じる。禁止事項の看板を見るのは、自分がそれを破るのではないかと疑われているようで、あまり気持ちの良いものではない。でも、関守石であれば間接的にそのメッセージを伝え、そのうえ見る人を楽しませてくれる。関守石を考えた人は、きっと感受性が豊かであったのだろう。

園内は、ご年配の方や子供づれ、大きなカメラを持った人たちで賑わっていた。梅祭りは3月2日が最終日。この後は、豊後が見ごろとなり、4月になれば桜が咲く。次に行くときは、どんな顔を見せてくれるのか楽しみだ。


記:高橋定幸
特集:春待ちのころ…

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