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今年は暖冬で身を切るような寒さの日は数えるほどだったとはいえ、日本に比べて長く厳しいフランスの冬。重苦しいグレーの空の下、足もとから冷気が伝わってくるような古ぼけた石畳を歩いていると、春の訪れが心から待ち遠しくなる。
「今年の桜はいつ頃かな?」
4月の声を聞くか聞かないかの頃から、まわりの友人たちとお花見の予定を立て始める。そう、あまり知られてない事実だけれど、パリにも桜の木がある。小さいながら桜並木だってある。時期はたいてい毎年4月の初旬から半ばで、イースターを含んだ2週間ほどの春休みと重なることも多い。
近郊で一番のおすすめ桜スポットは、パリから電車で20分ほど、南の郊外にあるソー公園。181ヘクタールという広大な敷地に城と博物館があり、大きな運河では釣りも楽しめる。ベルサイユ宮殿も手がけた17世紀の造園家・ルノートルによる設計で、美しく刈り込まれた木々とそれを見渡すパースペクティヴは見るものを圧倒する。
ふだんからピクニックを楽しむ人たちでにぎわっている公園だけれど、この時期のお目当ては桜。数百本の桜の木が植えられた園内の広場には噂を聞きつけた在仏日本人が詰めかけるが、広いスペースだから陣取りの必要はない。
花見とくれば、日本人である私は朝からはりきって重箱詰めのお弁当やデザートなどこしらえて持参する。同行のフランス人たちは、事前に「日本では桜の花を愛でながら宴会をするのが伝統なのだ」と言い聞かされてやってきた。
彼らが持参したのは、朝パン屋の窯から出したばかりのバゲットと肉製品やチーズで、各々が好みに応じてサンドイッチを作れるよう、バターやマスタードとともにドンと真ん中に並べられる。お手軽だが、なにしろ本場のパンとハムやパテ、チーズなどフランスが誇る名産品ばかりだから、これでおいしくないはずがない。
日本チームも負けじとお花見弁当を広げる。卵焼きに唐揚げ、おいなりなど日本の定番が並び、珍しがられる。きれいに詰められたお弁当を「どうぞ」なんていいながら隣に回していくのもフランス勢とはパターンが違う。
昼間だからアルコールは控えめに、おなかが満たされたら昼寝したり、バドミントンに興じたり。芝生に横たわる私の顔に桜の花びらがひらひらと舞い降りる。
「いったいここはどこだっけ?」
長い冬に縮こまっていた心と身体が解放されるような、遠い異国での宝石のような春の休日だ。
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記:ビショー由佳
特集:春待ちのころ…
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