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愛しの春は、時計の振り子のように寒さと暖かさの間を行き来しながら気まぐれに、思わせぶりに到来するが、ヨーロッパの春も実にじれったい。
柔らかく暖かな陽射しで微笑んだかと思うと、翌日には氷まじりの大粒の雨で号泣する情緒不安定なお嬢様のようだ。それでもこの麗しきワガママ姫はどんなめちゃくちゃなステップを踏もうと確実にやってくるわけで、風景は日々その色の幅を増やしていく。
そんな春先、フランス人は「今年初めて、テラスで昼食を取る日」や「今年初めて、テラスでアペリティフを飲む日」を待ち構えている。パリのカフェでもテラス席でコートにきっちりと身を包みながらも、サングラスをかけて満足そうに顔を陽に向ける人々の姿を見かける。そしてこの時期、季節感を愛でるフランス人が喜んで食べるのが「タンポポのサラダ」。公園でビニール袋を片手に熱心に下を向いて何やら探している人がいたら、その人の今夜の前菜はタンポポのサラダと思って良いし、自分で探す時間のない人のためには市場でも結構いいお値段で売っている。
「タンポポ」はフランス語で「pissenlit(ピッサンリ)」。ベッド(lit)でおしっこ(pisser)、つまり「寝小便」という意味だ。その名の通り利尿効果は抜群。栄養価も高く薬草としても使われるが、この「タンポポサラダ」は健康うんぬんという以前に、かすかな苦みが素朴に美味しい春の味覚。作り方も簡単だ。
まず、春の散歩がてらに若いタンポポのギザギザな葉っぱを集める。4人分で200gもあれば十分だろう。それを丁寧に洗って、よく水を切る。美味しいサラダのコツは何と言っても「水切り」。フランス人宅には「サラダの水切り器」が必ずある。水を切ったタンポポの葉っぱ、トマト、ゆで卵、カリカリに焼いたベーコンを美しくお皿に盛りつける。パンにニンニクを擦り付けて油で揚げたクルトンを散らすのも良いだろう。ドレッシングは小さなボウルにマスタードを取って、濃厚な味にしたければオリーブオイルだけで、ライトな感じにしたければサラダオイルと半々で混ぜて行く。それにワインビネガーを加え、塩とコショウで味を整える。ドレッシングをかけたらすぐにしゅんとしなびてしまうので、各自が食卓でかけるのがお勧めだ。
ひさかたの暖かな陽の射す夕刻には、カラフルな絵を描くように春のテーブルをセットしたい。
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記:小笠原めい
特集:春待ちのころ…
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