|
|
|
 |
|
日本同様、四方を海に囲まれているアイルランドなだけあり、夏の海辺は人々の憩いの場となる。私もその例外ではなく、大西洋に面するお気に入りのビーチへたまに出かけることがあるのだが、なぜか夏になるとそこに不思議な屋台が出現する。それは「ウィンクル」売りの屋台だ。
「ウィンクル」とは小さな巻貝で、日本でもよく海の潮だまりなどでよく岩にびしっとはりついているタマキビたち、あれの仲間である。和名で「ヨーロッパタマキビ」などと呼ばれることもあるらしい。
さて、この“タマキビ”を何のためにわざわざ屋台で売っているのかといえば、もちろんスナック代わりに食べるため、である。「こんな小さいタマキビ、本当に食べられるの?」と思ってしまうが、この国で食用とされるヨーロッパタマキビは大西洋岸にしか生息していない。つまり、『夏限定の珍味』なのである。
それにしても、一般的にあまりシーフードを食べないアイルランド人のはずだが、果たしてどんな人がタマキビを買いに来るのだろうか…?
しばらく屋台を観察していると、おじいさんが買いに来たり10歳ぐらいの女の子が買いに来たりしている。そしてついに友人と私も屋台でタマキビを買い求めてみた。屋台の女の子が、小さめのビニール袋にざくっとスコップですくったタマキビをたくさん入れて手渡してくれる。1袋の値段はだいたい2ユーロ(約320円)ぐらい。
小さな黒いこの巻貝の身を、これまた小さな細い針でほじくって食べるのがタマキビの食べ方。すでに塩茹でされているのだが、海水の潮味と味付けされた塩味でちょっと塩辛い。だが少なくともビールとの相性はばっちりであろう。

見た目がちょっとグロテスクに見えるのか、変わった海鮮類に不慣れなアイリッシュの間では好き嫌いがはっきり分かれる食べ物でもあるが、日本人受けするテイストのような気はする。実際こりこりした歯ざわりなんかは少しサザエっぽい。しかも一度食べだすと癖(意地?)になり、止まらない。う〜ん、やられた。恐るべしタマキビ。
コバルトブルー色をした大西洋の上空を優しく吹く潮風に当たりながら、ちょっとした海の幸も海からおすそわけしてもらえる。
こんなアイルランドの夏もいいな、とふと思ったある週末である。
|
記:小島瑞生
特集:世界の夏を食べ歩き!
|
|
|