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市場やスーパーに並ぶ野菜や果物が最も彩り豊かになるのは、ドイツでも夏から秋にかけて。この時期は、全体に占める国産品の割合が上がるのですが、それでも「ドイツ産野菜は40%くらい」とは近所の青果店の人の話です。それ以外のほとんどは、他のEU諸国からやってきます。
また、イスラエル産のアボカド、エジプト産のジャガイモ、 ニュージーランド産のリンゴなどというのも見かけます。
農産物はやはり地元産のものに信望が集まるもの。それが今ではぜいたく品になりつつあるというこの矛盾。しかし、夏の季節に多い「この時期だけの旬のもの」に関しては、圧倒的に地元産のものが幅を利かせます。市場でも、「ドイツ産のアスパラガス、ドイツ産のアスパラガスだよー」との誇らしげな呼び声が響いたりして。

美しく手入れされた夏の庭
そんな市場経済の風景の一方で、私の身近には、農産物の高度な自給率を誇る強者たちが存在します。それは、自宅に庭を持っている人々です。
彼らの多くは一様に、美しく手入れされた庭の片隅で、かなり本格的に野菜を育てているのです。定番はトマト、キュウリ、レタス、ズッキーニ、それからルバーブやイチゴ、ベリー類、各種ハーブ。それらが目にも美しく整然と植えられ、単に趣味でちょっと植えてみた、というレベルではない「本気」な感じです。「夏は野菜を買うことがない」と豪語する彼らからは、「美しい庭」と「経済観念と生活力に優れた私」を同時に誇る表情が読み取れます。

トマトが色づいています

整然と植えられたレタスが一瞬、
花のように見えます
「いったいこの情熱はどこから?」と不思議に思うほどの熱の入れようですが、少なくとも私の回りで野菜を育てているドイツ人には、「味にこだわって」というよりは「経済的だから」という理由が大きいように思われます。その証拠に彼らは、自分の庭にない野菜に関しては、ディスカウントスーパーで一番安いのを買ってきたりする合理性も持ち合わせているのです。

市民菜園

小さなスペースを上手に
活用している世帯が多いです
ところで、自家製野菜を育てることは「自宅に庭を持っている人にだけ可能なぜいたく」ではないのです。都市生活者で自宅に庭を持たない人には、クラインガルテン、またはシュレーバーガルテンと呼ばれる市民菜園が伝統的な人気を誇っています。ドイツ国内で利用世帯は100万軒以上、合計4万6000ヘクタールあるとされるこの菜園の起こりは19世紀初頭、急激な都市化の中で市民の憩いの場所として考案されたものだったとか。それが第2次世界大戦直後は、食糧難対策の手段としても活用されました。
この「菜園」エリアに一歩足を踏み入れると驚かされます。世帯ごとに細かく仕切られた敷地内には、ちょっとくつろげる小さな小屋が設置され、色とりどりの花々が植えられ、子供用の遊び場もあり、むしろ「プチ別荘」といった趣です。そしてそこにはもちろん、美しく手入れされた手作り野菜のスペースが…。
市場に行けばふつうに手に入るトマトやキュウリも、「自宅の庭で取れたもの」というのは味の充実度が格段に違います。野菜が元気なのです。これに比べると外国産野菜というのは、遠い国からはるばる旅をしてきた「おつかれ」な感じがにじんでいることに気づかされます。

これはルバーブ。
地面から生えているのを
初めて見ました

手みやげに、
手作りジャムをもらいました
またこの時期よく手みやげにもらうのが、「庭で取れたブルーベリーのジャム」などですが、私はこれまで「ハズレ」をもらったことがほとんどありません。実だくさんでおいしいジャムは、自給自足ライフの恩恵です。こういうとき、倹約家で合理主義、アウトドア派で自然を愛する人々のライフスタイルの中にある「豊かさ」を感じます。
ところでこの夏、私は初めてルバーブがどういうふうに育つのかをこの目で目撃しました。地面から直に生えてくるのですね。ま、植物の茎の部分ですからね。当たり前と言えば当たり前なのですが、ちょっと衝撃でした。
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記:見市知
特集:世界の夏を食べ歩き!
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