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うまい、うまいと酒好きの夫がしきりに唸っている。何かと思えば白い濁り酒。長沼で買ってきたどぶろくだという。
飲むかと勧められたので、この暑いのにイヤだと答えたら「冷えたシュワシュワのどぶろくこそ旨いんだぞ」。何?シュワシュワだと。「なんといっても生だからな」。それではいただきます、と言おうとした途端、どぶろくは夫の喉に消えていた。
札幌や新千歳空港から約30キロ、米作りの盛んな長沼町は全国でも数少ない「どぶろく特区」に認定されている。
翌日、さっそくドライブに出かけた。
青々とした田んぼの風景が続く中を車は進んでいく。さっそく町のコンビニに「どぶろく」の旗を見つけた。だが、ここで売っているのは熱処理を施したもの。やはりいくつかの製造農家で直接買うしか「生」は手に入らないという。
やがて道沿いに「とうきび」の黄色い旗に交じって「どぶろく」と薄紫の旗が見えてきた。農場内に車を止め、杜氏の女性に案内されて大きなカマボコ型の倉庫に入る。小型トラックやトラクターなどが並んでいる中、さらに小さなプレハブの部屋に通された。
どぶろくは瓶詰めでも売っているが、量り売りがお得だ。空のペットボトルを持参すれば入れてくれるというので、2リットルのものを持ってきた。米の銘柄もいくつかあり選ぶことができる。ここはキリッとした味わいという「ななつぼし」を注文。
ペットボトルに詰められてきた白い酒の上部には、プクプクと気泡が浮いている。プラスチックのふたには、炭酸ガスを逃すための穴が開けられていた。どぶろくが生きているしるしだ。発酵が進むと味が変わってしまうため、早めに飲むのが良いという。
保冷剤をつけてもらい、冷やしながらペットボトルを持ち帰る。日が暮れるのを待って、ようやく冷蔵庫に入れておいたどぶろくを味わうことに。
グラスに注ぐと、上品な米の匂いが香り立つ。口に含んでみると、その引き締まった味わいに驚いた。見た目はトロッとしているが、意外にサラリとしている。残る米粒も舌のじゃまにはならない。そして、シュワッとくる爽快感。これは生ならではのものだ。自家製の米と水、それに麹のみでつくられた、混ざり物のない酒。これはいけると2杯目を注いでいると、ほらねと言わんばかりに傍らで夫がニヤリと笑った。
翌日も、暗くなるのを待ちきれず冷蔵庫からあのペットボトルを取り出す。フタを開けると「ブシュワー!!」。ロケット風船を放したような炭酸ガスの勢いにびっくり。よく見ると、気泡逃しの穴に米粒が詰まっていたようだ。まさに「生きている酒」であることを実感した。
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記:たかはしあきこ
特集:世界の夏を食べ歩き!
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