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世界地図を広げてカナダを見ると、「へぇ、大きいなあ」と改めて感心する。イヌイットの地、ヌナブトはそのカナダの北の陸の果てと、さらには冷たい海に秋の雲のようにちぎれちぎれに浮かぶ島々で、1999年にノースウエスト州から独立してカナダ13番目の自治州となった。広大なカナダの中でも一番広い州で、その面積は日本の5.5倍。この1年のうち7ヶ月は白く凍りつく大地にはおよそ3万人のイヌイットの人々が生活をする。

あやとりはイヌイットの子ども達の
お気に入りの遊び。
子ども達の表情も日本人とそっくり。
冬はマイナス40度にまで気温が下がり、冬至の前後は24時間日が昇らない。逆に夏至の前後は24時間日の沈まない極北の地。かつて、冬の間は雪の塊を積み上げて作る「イグルー」に住み、夏の間はテントでキャンプをしながら獲物を追っていたイヌイット人。1950年代後半に施行されたカナダ政府の「イヌイット人を村に定住させ、英語による初等教育を行う」政策により、彼らの生活様式は劇的に変化する。
現在のイヌイット人は、暖房のガンガン入った住居に暮らし、土足禁止のその室内にはお湯の出るバスルーム、水洗トイレ、オーブン付きキッチン、さらには薄い液晶の大型テレビやプレイステーションも当たり前で、若者はチャットやYouTubeに夢中だ。同じアジア系で「知っている誰か」と何だか似ているイヌイット人、ここだけ見ると日本にいるような気にならなくもない。

雪の溶け始める5月、6月、
カリブーがやってくる
しかし短い夏が到来すると、本来の「狩人の血」が目覚める。都市部を離れ、大自然の中で、電気も水も通っていない仮小屋やテントで生活をしながら、狩りをする家族が多くいる。子沢山で大家族のイヌイット人であるが、子ども達はハンティングの技術を父や叔父を見ながら学んでいく。8歳にもなれば、カリブー(となかい)を仕留めるというのだから驚きだ。
およそ25あるイヌイットの街の中で唯一内陸に位置するベイカーレークには他のイヌイット集落のようなアザラシやクジラの食文化はない。「捨てるところは全くない!カリブー万歳」の食文化である。角は釣り竿などの道具に、毛皮はテントや服に、肉は心臓から腸までとことん食べる。

生でも良し、焼いても良し、煮ても良し、
干しても良しのカリブー

骨の髄は栄養素満点。イヌイット人の大好物
捕獲したばかりのカリブーをその場で捌いて、とりあえず生で食べる。栄養素豊富な骨の髄を取り出し、生でパクリ。思いのほかに繊細で、バターのような風味が美味だ。大猟の場合は干し肉を作る。肉を切り開いて寒風で干しただけの「添加物いっさい無し」これ以上にない自然食品だ。
カリブーが捕れない日にはガチョウを狩って水炊きというのもイヌイットの夏の食。狩りの合間には北の大地にささやかに実るブラックベリーを摘んでその素朴な甘さを愛でる。「自分たちが最も自分たちらしくなる夏が一番すてきな季節」というイヌイットの人々とその魅力をちょっぴり共有させてもらえた一夏であった。

干し肉を作る。
「ウル」というスカートのような形のナイフは
イヌイット女性の必需品

切り開いた肉は網の上にのせて干す。
自然な味が何とも美味しい
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記:小笠原めい
特集:世界の夏を食べ歩き!
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