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210日に1度巡って来る、バリ暦最大級の行事、ガルンガン。街中が飾り付けられ、店の大半や市場はクローズ、お供え物に使う果物の値段ははね上がり、女たちは1ヶ月も前から準備におおわらわ、ガルンガンに向けて新しくクバヤ(女性の正装)を作る人も多いから、仕立て屋さんも大忙しになるこのイベント、実は日本にもある。ガルンガンの10日後のクニンガンとワンセットで、これはそっくりそのまま日本のお盆にあたる。
ガルンガンは、迎え盆。クニンガンは送り盆なのだ。
バリ・ヒンドゥーは、元々バリにあった祖先霊信仰と山岳信仰、アニミズムに、外来のヒンドゥー教が加わった独自のもので、ガルンガンは祖先霊信仰の最たるものだ。この日、各家々の祖先達は天界からバリに戻って来て、山と盛られたお供え物の「精」を食べて、10日後のクニンガンにまた天界に帰って行く。
祖先霊達は、各家の門前に立てられるペンジョールという飾りを目印に、自分の家に戻って来ると言われる。ペンジョールを作るのは男達の仕事。長い竹の棒を支柱に、椰子の葉、バナナの葉、稲穂その他もろもろで飾りをつける。各家毎に飾りがちがっていて、つまり家紋のようなもの。だから目印になるというわけ。
ガルンガンの前日、男達は朝から大忙し。ペンジョールを作るのはもちろん、お祝い料理のラワール作りも男の仕事だからだ。
ラワールとは、豚の内臓と血、野菜、ココナッツ、ココナッツオイル、スパイスを混ぜて作る和え物のこと。バリではお祝い事や大きなお祭りの度に作られる。
ガルンガンの前日、まだ夜も明け切らぬうちからその準備は始まる。立派な豚さんが断末魔の悲鳴と共にノドをかっ切られ、あっという間に内臓、肉、皮と分けられる。擦り下ろされたココナッツの実、みじん切りにされた野菜、大量のにんにくと紫玉ねぎ、ウコン、塩、胡椒…使う野菜や味も、各家の秘伝だ。似たような材料から作っているのに、驚く程味が違う。地域によっては若いバナナの幹を使ったり、ジャックフルーツの煮物を混ぜたりもする。
午前中のうちにラワールは出来上がる。そして、その場にいる人全員で、できたてのラワールを食べる。

バリの人々は、滅多に「家族全員でご飯を食べる」ということをしない。外食の時は別だが、家で食べる時は各自が好きなタイミングで食べるため、「食卓を囲む」という食事スタイルが成立しないのだ。
だからラワールの時は特別。みんなで同じごちそうを分け合って、明日から始まる大祭へのうきうきした気分を共有する。
バリ人のお友達の家の前を通りかかろうものなら、すぐさま声をかけられる。
「アヤコ、ラワールがあるぞ、食べろ!」
さっき食べたばっかりだから、と言えば
「今も食べろ。大体アヤコは細すぎるんだ、もっと肉を付けた方がいい」
と言われ、(中途半端な時間だから)あとでね、と言えば
「新しいうちの方が旨いから今食え」
と言われる。結局誘われたらその場で食べるしかない。好意で言ってくれているし、みんな自分の家のラワールが一番だと思っているから食べて欲しがるし、元々ラワールは大勢で分け合うべき祝祭的食べ物なので、断る方が失礼なのだが。
ラワールはおかずなので、必ずお米と一緒に食べる。つまりこの日は1日何食もたべることになる。
かくして、ラワールパーティーは夕方まで続く。
今回のガルンガン前日、私は都合4軒分のラワールを食べた。午前中から昼1時までの間に、である。
最初は住んでいる民宿の家で。これはなにがあっても絶対食べざるを得ない。次は、お友達の家で作ったやつをわざわざ届けてくれたもの。3軒目は在住日本人の友人のバリ人友達のゲストハウスで。ヨーロピアンだらけのゲストハウスで、なんとベジタリアン用のラワールなんてのもあった。最後に、以前定宿にしていた民宿へ。
祝祭のごちそうは、家族や人との絆を深める大切な意味合いを持つ。久しぶりに会う人、お馴染みの顔ぶれ、初めましての挨拶をする相手。村社会のバリでは人とのつながりは不可欠で、ラワールを食べる度にそのことを再認識させられる。
ガルンガン当日は、正装してお寺へお祈りに行く。色とりどりのクバヤにサロンをまとった女性達が、色鮮やかな南国フルーツをうずたかく積んだお供え物を頭に載せて行き交う様は、楽園そのものの光景だ。
バリが、一番バリらしくなる日。
ガルンガンは、私たち在住外国人にとっても、神々の島バリに「住まわせてもらっている」ことに感謝を捧げる、またとない機会になっている。
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記:本君田綾子
特集:Party!Party!
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