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4000本のソメイヨシノで賑わうワシントンDCから車で7時間。ここサウスキャロライナまで南下すると、桜はあまり見かけなくなる。造園業のプロに聞くと、桜が育たない環境でもないらしいのだが、夏の猛暑と水はけの悪さで桜はダメだと思い込んでいる人が多いようだ。でも、そんな地域だからこそ、数少ない桜は一段と奇麗に見える。
私のお気に入りはご近所の前庭にある二本のソメイヨシノ。二階家の屋根まで高さがあり、薄ピンク色の花が咲くとそこ一角だけが明るくなる。もちろん桜並木のような迫力はないが、家の横に立ちふさがる雑木の演出がニクイ。つまり遠くからは桜が見えず、時速50キロで走る車が青々とした木を通り過ぎた瞬間、突然ピンクの桜が視界に飛び込んでくる。春は「くるぞ、くるぞ」とドキドキしながらその家の前を走りぬける……なんともスリリングな桜なのだ。
その貴重な桜の主は、去年引っ越してきたハイカラなご夫婦。家の古さなどから推定して、桜はどうやら樹齢20年ぐらいらしい。「奇麗でしょう? 一緒に楽しんでくれる人がいて良かったわ」と言う奥さんの隣で、「でも、実は根っこが盛り上がってきちゃってねぇ」とご主人、「いずれは切り倒す予定なのよ」。えー、それはもったいないと思ったが、桜の根元は確かにボコボコに盛り上がり、それがまっすぐ家に向かって伸びている。この太い根っこにかかったら、木造の家などひとたまりもなさそうだ。例年の楽しみがなくなってしまうのは残念だが、これも致し方ない。
「日本人は桜の花の下でパーティするんですよ」
「まー、そうなの? じゃ、どうぞパーティしに来て」
他人様の玄関先でパーティをする心臓は持ち合わせていない。でも、切り倒されてしまうその日が一日でも遅くなるよう、走りぬける車の窓から応援してみようか。
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記:ハンソンヨウコ
特集:3月・4月は桜 特集
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