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パリ植物園は、いわゆる観光ルートから心持ち外れた場所にある。外れたと言っても、ノートルダム寺院のあるシテ島からセーヌ左岸沿いに南東方向に歩いて15分足らずだ。
パリの長く暗い冬の空が少しずつ光量を取り戻し、太陽があらゆるものの影を形作り始めると、まだ空気に寒さを感じても、パリっ子は一斉に家の外へ繰り出す。1640年に完成し、以来3世紀半に渡ってパリの人々に愛され、自然科学の発展に貢献してきたこの植物園も、天気のよい春先にはそんなパリっ子たちでさらに賑わう。
植物園には、バラ園、高山植物園、温室、多年生植物園などさまざまな見所があるが、春の主役は何と言っても桜であり、数種類ある桜の中でも、見事な枝を四方の地面まで優雅に延ばす「里桜」の人気者ぶりは大したものである。“Shirotae(シロタエ)”という名前がついている。
フランス人は往々にしてあまり規律的な人々ではないが、「芝生立ち入り禁止」の看板も虚しく、ことさらにこの木の周りの芝生はよく禿げ上がっている。子供はもちろん、大人も、この桜の木の下に入りたいという衝動はどうにも押さえがたいようで、花の盛りにこの木の周りに人が絶えることはない。
日の射す週末ともなると、人だかりの中から多くの感嘆詞が聞こえてくる。「ほのかなよい香りね!」「この花、何? 日本の桜だって!」「ほう、見事だ!」「そこに立って、写真を撮るよ!」中には「少し前まではきちんと保護されていた木なのに、最近では子供がよじ登って木を痛めているヮ!」と憤慨する声もある。
このシロタエがパリ植物園桜界の横綱とするならば、植物園中央をまっすぐ走る散歩道を挟んで向かいにある鮮やかな“Hizakura(ヒザクラ)”は、大関と言ったところだろうか。ヒザクラの「ヒ」は「緋」なんだとしばし考え、ひとりごちた。その向かいで、シロタエからは斜め向かいにある紅山桜も、ペリエの瓶の腹太りな形を思わせる幹になんとも愛嬌がある。
この植物園は入園無料でピクニックも許可されているので、春先のパリ観光に「フレンチサンドイッチと桜でランチ」を取り入れるのもお勧めだ。
[アクセス]
パリ植物園 Jardin des plantes(ジャルダン・デ・プラントゥ)
最寄りメトロ:5番線 / Gare d’Austerlitz、10番線 / Jussieu
開園時間(通年):7:30〜20:00 入園無料
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記:小笠原めい
特集:3月・4月は桜 特集
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