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フランス南部のラングドック地方、自然公園の中に埋もれたように細々と走るモンペリエからトゥルーズへ向かう国道沿いは、数あるフランス僻地の中でも屈指のディープさで、端的に言えば「何もない」場所に見える。
ところが6月ともなるとこの国道は、500メートルおきに小型トラックが停車し、「1キロ、2ユーロ(320円)」と手書きされた段ボール看板が延々と続く「さくらんぼう街道」となる。つやつやと光るさくらんぼうをグローブのような大きな手で一握りおまけしてくれたおじさんは、「今朝収穫したものだよ」と誇らしげに付け加えた。
この「さくらんぼう街道」、花の時期は「桜街道」になるかと期待したいところだが、木が国道沿いに生えているわけではないのでそうともいかない。しかし国道から脇にそれて点在するささやかな村々は、4月中頃になると「花咲か爺さんの里」さながら、無数に咲き誇る白い花の色で村全体が華やぐ。
この地方のように人様に売るほどの規模ではないにしても、さくらんぼうの木はフランス各地で見受けられる。庭のある生活圏に暮らすフランス人に「近所の桜の名所ってどこ?」と尋ねると、たいてい「ウチの庭!」と返ってくる。「だからぁ、名所っていうのは、樹齢の高い桜の木とか、桜並木とか、お城を見上げる構図に桜の木がばっちり入るとか、ない?」とたたみかけると、「うーん、やっぱりウチのさくらんぼうだよ、6月にはジャムを作らなきゃ。今年はウォッカ漬けもやろう……」と、グルメ大国の住人の話題は「花より実」へ移りがちだ。不動産でも「花の美しい木」よりも「実のなる木」のほうが高スコアで、実のなる木1本ごとに家のお値段も上昇する。
とはいえ、さくらんぼうの花の頃、サマータイムに切り替わり、いつまでも明るい暖かな夕方が訪れると、フランス人はそそくさと庭にテーブルを出して、まったりと食前酒をたしなむ。フランス人もちゃんと「花見」を楽しんでいるのだ。
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記:小笠原めい
特集:3月・4月は桜 特集
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