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物事とは何も準備をしていない時に限って何か起るものだ。
小雨の中、ヴァンドーム広場を歩いて本屋へ向かっていた。何気にホテル・リッツを見ると、正面玄関のところに人が立っているのが見えた。有名人でも出てくるのだろうか?と思いながらも、数人しか待ち構えていないところを見ると、大物ではなさそうだと思い、そのまま通り過ぎた。しかし、やっぱり気になって玄関前へ行ってみた。
そこにはカメラを持った男性と観光客らしき姿がちらほら。誰が出てくるかはわからないけれど、玄関前にはエンジンのかかった車が待機しているし、すぐに出てくるのだろうと思い、待ってみることにした。しかし、小雨の中を待てど暮らせど誰も出てこない。
もう帰ろうかなと思い、隣の女性に「誰が出てくるのか知っていますか?」と聞くと、「デビッド・ベッカムらしいわよ、私もよくわからないけれど」と。「ベッカム?」と聞き返すと、「彼はサッカー選手よ、知ってる?」と。はい、知っていますとも。まさかと思いながら、とりあえず待っていると本当に出てきた。しかも、ヴィクトリアと一緒に。そして、パパラッチ数人と私が一斉に車に駆け寄った。
しかし、私はこんな時に限って一眼レフを持ってきていないのである。いつも、どんな時でも持ち歩いているのに、今日に限って家に置いてきた。天気も悪いし、本屋の後には美容院に行くし、何より重い。今日は街を撮影することもないだろうと思い、小さなデジカメだけをポケットに入れて出てきた。このデジカメは使い慣れていないし、覗き穴はないし、シャッターは遅い。
レポーターらしき人が「デビッド!」と声をかける。「ベッカム!」ではない。
デビッドはドアマンがいるにも関わらず、ヴィクトリアをエスコートして車に乗せ、それから彼はくるりとまわって反対側から乗り込んだ。とても紳士的。
それにしても、あまりにパパラッチや追っかけが少なすぎた。完璧にキメて出てきた二人にとっては少々期待はずれだったかもしれない。手も振らずに、あっという間に車は去って行った。
2006年5月10日 |
記:安田 知子
特派ルポ:着の身着のままのパリ
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