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いつものカフェで昼間から飲んでいるとVさんがお母さんと一緒に入ってきた。Vさんとは先月みんなでシャンパンをかけあったあのVさんだ。先週、乳がんの手術をして退院してきたという。お母さんもイタリアから駆けつけていた。相変わらず凛として、笑顔で抱きしめてくれた。カッコよくスカーフを巻いているけれど、それは髪の毛が抜けているから。もう大丈夫なの?と聞くと、たぶんね、と。
話の途中、ふと彼女が首から下げている十字架とマリア様のペンダントが目に入った。イタリア人は信仰心が厚い。映画「トスカーナの休日」でもイタリア女性は日頃からマリア様を身につけているという話が出てくる。そのことを彼女に言うと、バックの中を何やら探しはじめ、私にも同じマリア様のペンダントをくれた。これはパリのメダイ教会のものだという。教会の名前は聞いたことがあった。そして、ここから近いから、この後行ってみて、あなたは興味あると思うよ、と。
Vさんは相変わらず店の手伝いをし、私の進歩のない語学力と仕事の心配までしてくれる。そんな姿をみて私の方が泣きたくなってきた。
メダイ教会はボン・マルシェの前にある。中は人でごった返していた。敷地内を見学していると日本人のシスターに声を掛けられた。今日ここへ来たこと、Vさんのことを話しした。すると、シスターは「彼女は生きるということ、命と背中合わせなのですよ、同じ1日を生きるなら、つまらなく過ごすよりも、感謝して大切に過ごすことを理解しています。人は自分のことだけを考えて生きていくよりも、愛を与えることで幸せを感じます」と。さらにシスターは本を差し上げましょうといって、急いで部屋まで取りに行かれ3冊の本を持ってきて下さった。

帰り道、不思議な気分になりながらも、とても情けなくなった。私はフランス語の勉強は諦めているし、パリにいるだけで、まぁいいかという怠けた日々になりつつあった。今日はVさんとシスターから、もっと大切に過ごしなさい、と教えられた。
2006年5月18日 |
記:安田 知子
特派ルポ:着の身着のままのパリ
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