「古い手帳」 岩のくぼみに置き去られ 真夏の強い日射しに焼かれて 小さい海が気を失う 廃兵院の病室の 夜のドアをノックして 夢遊病の 女が重い服を脱ぐ 夏の終わった避暑地のプールに 置き忘れた恋を 探しにもどった少年の ほそい悲鳴が 水に浮かんでいる 有働薫著「冬の集積」より 詩学社刊