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こぐれひでこの「あそびす」となくらし vol.01

こぐれ邸は摩訶不思議

都内の高級住宅街の路地を曲がると、うっそうと茂った植木に囲まれてコンテナを重ねたように見える家がこぐれ邸だ。さらに玄関のある 3 階までは工事現場のような鉄製網の階段を上がる。ここで、高級ハイヒールなどを履いて訪れた客はアウトである。こぐれ家を訪れるときはスニーカーを着用するのが正しい訪れ方のようだ。


このユニークな家を設計したのは、室伏次郎氏。すでにこぐれ邸はあちこちで紹介されているので、 TV や雑誌で目にしたかもしれない。

「いらっしゃーい!」

にこやかに迎え出てくれたこぐれさんはTシャツ&パンツに白いエプロン。もうそれだけで、気取らない人柄と見てとれる。

「どうぞ中へ」

って、クツはぬがないで上がるんですぞ、こぐれさんちは!


ちょっと秘密めいた、小洒落たレストランのような入り口は続きでリビングにつながっている。木製のテーブル、しばり上げられたカーテン、こぐれさんの仕事スペースに置かれたこまごました文具や道具の類、天井から下げられた飾り…。カメラのファインダー越しにのぞいたリビングは、隅から隅までどう切り取っても「絵」になる。さすが「絵」をする人の暮らしぶりかとただただ感心。
それだけで驚いていてはダメ。
リビングと隣り合わせにあるバスルーム。これはファンタスティック!
察するに、ブリキのおもちゃのようなバスタブ、ペーストやブラシやシャンプーの容れもの、かけられた鏡などなど、ひとつひとつはちゃんと「気に入って」手に入れたものだったろう。もしかしたらどこかの国でないと探せなかったりしたのではいか?
テラス側が全面ガラス張りのバスルームというだけで「ヒャー、ビックリ」。
にもまして、その奥にちょこっと見えているトイレタリーは、キャンバス布のついたてで囲ってあるだけで、いわば「丸見え」状態。
そしてバスルームをはさんでリビングと寝室が一直線上という配置だって、そりゃあビックリでしょ。



テラスに出てみてさらに仰天!
つまり、3階はそれ自体、大きなテラスで、リビング、バスルーム、寝室などの住スペースとキッチン・ダイニングスペースの二つのコンテナがテラスの上にのっかってる、そんな「つくり」になっているのだ。
たとえば、こぐれさんがキッチンでことこと煮物をしかけながらリビングで仕事をしてたとしよう。「あ、そろそろ、いいかな」とか思ったとする。その時、もしもザーッと雨が降ってきたとすると、こぐれさんは煮物の火を止めにいくのに傘を差さないといけない。
なんて常識はずれな!
けれど、普通、居宅設計で言われる「動線」がどうとか、「仕事効率」がどうのなんぞという「常識」をまったく度外視した「つくり」は、キッチンに続くダイニングに隠れ宿・レストランのような雰囲気を与えている。「食」の空間が独自で存在しているのだ。
ここまでくれば、びっくりが感動に変わる。これほどまでに既存の価値基準にこだわらない、裏を返せばこだわりにこだわった「家」があるなんて!!
しかも、その「こだわり」は「くつろぎ」感をそこねたりはしていない。かもし出されたそこはかとないゆったり感はこぐれさんの人柄によるところも大きいには違いないのだろう。

キッチン・ダイニングの外壁にかけられた脚立に恐る恐る登って菜園を眺めていたら

「こっち側へ落ちても脚ぐらい折れるかもしれないけど、あっち側へ落ちたら間違いなく命はないよ」

脚立は3、4メートルだが、反対側は3階プラス高台の高さで都合数10メートルの眺望最高の「高地?」育ちの野菜たち、まあツヤツヤしていること。インゲン、トマト、キュウリにカボチャ。ゴウヤなんてのも。


1階、2階はカメラマンのご主人TORU君の写真スタジオだが、降りていくのが…。
外階段でも網の隙間から下が見えて、なんとなく怖かったんだが、家の中にも、さらに目が回るような鉄製網のラセン階段。せっかくの壁面ギャラリーも足元に気をとられて、じっくり眺めるゆとりがないほど。
汗かきベソかき、ビビリまくりでたどり着いた甲斐はあった。
片側は1、2階通しのガラス張りで自然光、さんさん。体育館のような2階部の回り通路からなら斜観、俯瞰あらゆる角度から撮影可能。それにこれだけ広ければ、ダンスライブでもなんでも撮れる。マーベラス&グレイト「ワォ」なスタジオ。2階部にあるTORU君の仕事スペースもそれだけでアート!

こぐれさんちに着いた時、ちょうど宅配ピザ屋さんのようなバイクで出かけるところだったTORU君に、今度はスタジオの説明を聞きたいな。きっとあの辺にあったのは「音」系かな、保管庫に並べてあった作品群の話とかも。

こぐれさん!
またお邪魔させてくださいね〜!!


from まりりん
実はね、尊敬してるんだ

こぐれひでこと出会ってから何年になるのだろう、足の指まで総動員して数えても足りないほどの長い年月をつかず離れずというよりも、ついたり離れたりでお付き合いしている。

何をかくそう、わたしたちは高校の同級生なのだ。

彼女は積極的で努力家の優等生・・・でもないか、いや、成績はよかったのよね、たぶん。

わたしは、なまけもので、ワガママで・・・と自分では思ってないけど、そう思っているかもしれない。

彼女の住処には、下宿をはじめとして、パリの家を除けばすべてにお邪魔している。彼女もわたしの住処にはすべて来ているはず。

以前、わたしが初めてこの家を訪れたときは建築後 2 、 3 年の頃。たしか 5 月のさわやかな日だった。外観の面白さとは違い、住いはどこそこお洒落な空間だった。長身のバスケット選手だって楽々通れるドアや高い天井。洗面やお風呂のスペースが家の中央にあり、トイレはドアなし。すべての部屋が南向き全面ガラスの家など見たことがなかった。

「このお風呂がねえ、気持ちがいいんだよ」

モロッコまで行って購入したというテラスに敷き詰めたタイルは、海のさざなみを思わせる色合いで、ほんとうに素敵!

そのテラスを挟んで台所と隠れ家レストランのようなダイニングがある。

「雨の日がねえ・・・、駆けて行くか傘さして行く」

キッチンからの眺めは、高台に建っているから眺望を遮るものがなく、おそらく夜景の美しさは天下一品だろう。残念ながらまだ夜景を拝見したことはないが。

この家を建てる前の住いも素敵な家だった。

もともと外人が住んでいたというその家は、とにかく広いリビングと使いやすそうなキッチンが印象に残っている。そして、大きな暖炉。周りに敷き詰められた煉瓦の上に、薪を置き、波乱万丈なわたしの人生の一時を、彼女に訴えた記憶がある。

たしか、彼女は愛犬のルンルンを亡くし、動くものが欲しくて暖炉を買い、炎を見つめていると心が休まると言っていたっけ。

そういえば、わたしの心を静めるために、今ほどはポピュラーではなかったアロマオイルを炊き、

「さあ、さあ、あなたのために心が穏やかになるオイルだよ」と迎えてくれた。

美味しい食事も用意してくれ、夜遅くまでつまらない行ったり来たりの話に付き合ってくれた。

あのときはありがとう。この場を借りてお礼を言います。

さて、わたくしごとはともかくとして、前に訪れたときと今回では大きく変わったことがある。

それは、テラスの一角に茂った藤棚。キッチンの屋根に広がる畑。テラスのあちこちに置かれた野菜たちの鉢。しかも、素晴らしい実をつけている。立派な畑だ。

素敵な家を建てると、建物が一番大事にされて磨きこまれ、緊張して生活している家はよく見るが、こぐれ家はそこに住んでいる TORU 君とひでこの暮らしが主役。磨き上げて使わずというものは一つも無い。さりげなくというより惜しげもなく使い、楽しんでいる。前回と今回の訪問で、その証明書を見せられたような気がした。

本当の楽しみ方を知っているからこその生活だと思う。

家を遊び、道具を遊び、食を遊び・・・。

(家に遊ばれ、道具に遊ばれ、食に遊ばれるって案外多い。)

暮らしの主役はいつでも自分たち。

彼らこそが真のあそびすと、これは間違いないだろう。

こぐれひでこ
【プロフィール】
イラストレーター、エッセイスト
「今日の料理」「おしゃれ工房」などTV番組に出演。
毎日食べたものを写真つきでつづる 「ごはん日記」は働く女性のためのwebメディア「Cafeglobe.com」で好評連載中。
「こぐれの家にようこそ」「パリを覗こう 路線Busで巡る旅」「ふたりでイタリア」「こぐれひでこのベトナム332048歩」など著書多数

こぐれひでこさん作品一覧

こぐれの家にようこそ


農村の家で過ごした子ども時代から、東京の風呂なしアパートやパリのアパルトマンでの思い出、夫婦でアイデアを出し合ったユニークな一戸建て建築体験など、十数回の引っ越し遍歴を語る。

パリを覗こう


パリを歩かせたらNO.1!こぐれひでこの体験的パリ案内。
滞在しなければ気付かないパリの魅力が、美しいイラストとともに綴られた観察記録。

お昼ごはん、何にする?

ちょっと敷居の高いお店も、ランチだったら大丈夫。フレンチ、和食、イタリアン、中華、メキシカン、インド料理と美味しいランチが勢ぞろい。好奇心旺盛な大人のためのレストラン案内書。

パリを歩こう


スーリヤとは太陽神。その子供は最初の人間となる、と神話にある…。神話から現世に降りたち自由になった詩人のセンシブルなアリバイ詩集。

こぐれひでこの発見!郷土食


実際に現地・日本全国に赴き、その土地ならではの郷土食を食べる…という4年間の連載エッセイをまとめた一冊。「ひっつみ」「ヒカド」「へしこ」「ばばちゃん」「ちょぼ汁」など、何の料理か?この本を読んでのお楽しみ 。

往復書簡 小泉今日子×こぐれひでこ


二人の考え方や感じ方や好みの披露メール。2年間のメール交換で明らかになった、同質と異質が交じり合っている友人関係を再確認。日々の写真133枚も収録。『レタスクラブ』連載に加筆訂正し、再構成。

ふたりでイタリア


イタリア旅日記のような本。二つの旅先でメモしたりイラストを描いたり写真を撮ったりしたものをまとめたもの。

ワインのこともっと知りたいっ


こぐれのおいしーいワイン入門講座。まずは、やっぱりパリから「シャトー・ラトゥール」。

パリを食べよう


おいしいもの好き! パリも大好き! イラストとエッセイでおいしいパリを紹介。パリのビストロやカフェの案内は、お勧めのところばかりでなく、苦い経験のあるお店の話も。

好き。


あなたにかわって、たいせつな、たいせつな人へ、あなたの気持を、伝えてくれる絵本です。とっておきのプレゼントに、そっとそえてください。こぐれひでこ、初めての書き下ろし絵本。

こぐれひでこのベトナム・332048歩


人気イラストレーターがベトナムを念願のひとり旅。好奇心いっぱいで街を歩きまわり、累計歩数はなんと三週間で332048歩。その間出会った食べ物、人々。イラスト&写真満載の旅のエッセイ集。

こぐれひでこのカワイイ幸運グッズ


今戸神社の招き猫、伏見稲荷大社の狐の絵馬、下鴨神社の加茂茄子の土鈴…。持っているだけでハッピー!になれるかわいい開運小物たちを探して、いろんなとこ行きました。

Busで行くParisあちらこちら
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車窓を通り過ぎる風景や人々を眺めながら気が向いたら途中下車。世界最大のノミの市へ行、パリの下町を探索ス、観光スポットを巡るなど、著者厳選の15コース。お決まりの観光では味わえないパリの素顔が見えてくる。
記:小玉 徹子

asobist -mini- : 『Big Up』を更新♪今回は『シネマピア』で大活躍のLINDENさんです! by 編集部
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「あそびすと」はいつも自由です。 遊び心を忘れず、ゆとりをもって心豊かに暮らそうとするライフスタイルはまさにasobismです。

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