VIVA ASOBIST

vol.19:鈴木伸幸
「山」への感謝と恩返し

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【プロフィール】
スーパーマーケット経営
登山家

vol.21_01.jpg 「炊事・洗濯・裁縫、なんでも自分でやります。ほんと、家でも手のかからない亭主ですよ」 自分のことは自分で、が山男の原則と鈴木さんは笑う。
たとえばヤッケがほころんでいたとして、決して女房に頼んだりはしない。いざという時、つくろいようが足りなくて、そこから冷気が入り込んだりすれば凍傷を招き、それだけで命取りになったりする。山の話をしだすととたんに鈴木さんの身振り手振りが大きくなる。
鈴木さんが本格的に「山」を始めたのは卒業後、静岡県三島市に U ターンして実家の家業を継いだあとだった。仕事関係で知り合った先輩と 2 人でパーティーを組み夏といわず冬といわず、休みのたびに山に入った。名の知れた「山」という「山」はたいてい登った。ロッククライミングにもチャレンジした。山に明け暮れた 20 代から 30 代前半だった。
31 歳で結婚し、父親になり仕事が忙しくなるにつれ山から遠ざかっていった。 40 歳の声を聞いた頃、気がつけばかつての「山男」の見る影もない肥満体型になり、健康診断を受ければやれ糖尿病だ、やれ高血圧だ、高脂血症だとわが身が成人病の巣と化していることに愕然とした。
「運動せねば」
小学生の長男と空手道場に通ったり、バトミントンをやってみたり...。「やっぱり山がいい」そこにいきついた。

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2006 年5月 14 日、丹沢・塔ノ岳登山。雨天なれど決行。鈴木さんが率いたパーティーは 16 人。 30 〜 40 歳代がチラホラ。 20 歳代にいたってはたったの一人。あとは 50 歳代、しかもそのうち一人はほとんど初心者。

vol.21_03.jpg 標高 1490m を登るだけでも誰が考えても大変なのに、なによりも驚いたのはリーダー、サブリーダーと達者なメンバーの大荷物の中身。缶ビールあり、缶チュウハイ、ツマミありは序の口で、焼き鳥だのしるこだの食材と簡易熱源器具その他、もろもろ。すなわち、メンバーの一人がこの秋に結婚する前祝い登山と銘打って、頂上ちょい手前で大パーティーを催そうという寸法なのだ。

「雨の日は雨の日の山の顔」 鈴木さんのいう、よりによって雨の中、汗して登った「ご褒美」を、やがて実感する。
歩き始め結構な降りようの雨模様だった。途中から雨は止んだが、まるで乳色のもやの中を歩いているよう。それが帰り支度を始めようというあたりからどんどん霧が晴れ、峰々の間から湧き上がる雲海。見晴るかせば遠く伊豆半島、真鶴半島がもやいだ海に浮かび、初島まで見える。さすが鈴木リーダーの気象状況の読みは的確。

vol.21_04.jpg そうそう、一人だけほとんど初心者は、何を隠そうワタクシ・おばちゃんだったのである。しかも、「日々楽観」でも書いたが、ワタクシは下山で右膝の激痛に見舞われるという大ブレーキを起こしてしまった。降りの後半は鈴木さんにザックをしょってもらい、泣く泣く歩いた。
「どうしてもダメなら言ってください。でもできるだけ自分で歩きましょう」「ゆっくりでいいですよ」
始終励ましの言葉をかけながら、最後までカメのような歩みのワタクシのそばにピッタリ付き添って歩いてもらった。
「食材をしょうんだって、トレーニングのうちだし」「ボクが一緒ということで、山に登ってみたいと思っている人が、楽しく安全に登ることができれば...」 最近とみに、そう思うようになったと鈴木さん。さんざんお世話になった「山」への感謝と恩返しの気持ちだという。 後日取材の折にお話を伺い、あらためて「リーダーとはかくたるや」を納得したと同時に、鈴木さんの「山への想い」を実感させられた。
ところで、鈴木さんの毎日は朝 4 時に起床。ロードで 1 時間ほどランニング、汗を流してから出勤が一日の始まり。今夏 7 月 2 日の北丹沢 12 時間山岳耐久レース参加に向けて着々と準備中なのだという。
「ええーっ、 12時間山の中を走り回るんですかー?!」

vol.21_05.jpg 誰でも普通に想像がつく大変さに驚愕するが、コース内容を聞けばそのあまりにもの過酷さにあきれかえる。 今年で 8回目の開催となるこのレースに鈴木さんは初回から参加している。相模原市津久井町青根村をスタートして北丹沢山域の43.86kmを走り抜く。距離的にはフルマラソンと同じぐらい、それだけでもため息が出そうだが、なんと標高差1,140m、3つの峠を超える山道を、しかも水、食料ほか必要な装備などを入れたザックを背負って、もちろんタイムを競って「走る」んである。もう何をかいわんや。アドベンチャーとも超人レースともいうべきサプライジングレースなのだ。
「 60歳になったら、始めたいことがあるんです」
世界 7大陸の最高峰・セブンサミットを極めたセブンサミッターになることが鈴木さんの夢だという。いくら「だって、もうその頃にはこどもも自立してるでしょう」とはいっても、命がけの夢である。
「それについて奥様は?」
「好きにすれば、って感じじゃないですか」
結婚する前に一度だけ山へ連れて行ったら、それっきりでこりた奥さん、以後いっさい一緒に登ったりはしないのだそうだ。どうやら山男も家ではただの「タンスにゴン」のようなんである。
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*セブンサミット
1. アジア / エベレスト (8848m) ネパール・中国
2. 南米 / アコンカグア (6962m) アルゼンチン
3. 北米 / マッキンリー (6194m) アラスカ
4. アフリカ / キリマンジャロ (5895m) タンザニア
5. ヨーロッパ / エルブルース (5633m) ロシア
6. 南極 / ビンソンマシフ (4897m) 南極
7. オセアニア / カルステンツピラミッド (4880m) パプアニューギニア
7. オセアニア / コジウスコ (2230m) オーストラリア 「オセアニア」を全体とみなすと「カルステンツピラミッド」











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2006 / 08 / 01

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