VIVA ASOBIST

vol.37:水上 均
「晩ごはん食べに、うち来ない?!」を仕事にしたら...

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【プロフィール】
・クッキング・イベント・コーディネーター
・クッキング・スタジオ「Hitom CUISINE 人夢キュイジーヌ」主催
http://www.hitom.co.jp/
・blog
http://www.b-shoku.jp/weblog/myblog/418

■まずは市場へ■
vol.37_01.jpg 「クッキング・イベント・コーディネーター」耳新しい肩書きを名乗る水上 均さん。「旨いものを食す」こととイベントごとのあるところ、請われれば、どこへでも出かける。
料理人としても腕をふるい、イベントを総括して成功に導き、採算ベースもきちんとはじき…
「わかるような、わからないような」と首を傾げたら「論より証拠!」「イベントの一部始終をみてごらんなさい」。
というので、イベント開催日の早朝の川崎市中央卸市場北部市場、通称北部市場へご一緒した。

vol.37_02.jpg まさに水を得た魚、水上さんは鮮魚、生鮮野菜その他、入手すべきを求めて広い市場を縦横無尽。
「タマネギは縦横に太ってるのが甘味があるんですよ」「今日はアサリよりハマグリがいいな」ひとつひとつ素材を手にとって吟味する。

そしてどうです!この、本日のメイン、カツオのプリプリッ具合!!水上さんが馴染みの店の親方に入れてくれるよう、前以て頼んでおいたもの。1尾が約5kgから上の目方の上物。
「旨そう!!」このままかぶりつきたくなるような、美しいとさえ感じてしまう魚姿。これが水上さんの手にかかって、どんな「旨いもの」に変身するのか、今から生唾が…

■料理、ことはじめ■

vol.37_03.jpg 秋田県出身の水上さんが上京し入学したのはバリバリの理科系大学。昼間、設計事務所で働くうち「やっぱり、これからの時代、コンピューターかなあ?!」の感触を得て、最終的には専攻もPC関連になった。当然の流れのように外資系ソフトウェアメーカーに就職した。
米国と日本との行ったり来たり生活で最も困ったのが「食」。外で食べても旨いものがない。食べないと仕事ができない。結局のところ米国滞在時はキッチン付きのホテルで自炊することにした。
「仕事と全く関係ないことをする。これが案外気分転換になるんです」
スーパーに行って食材を選んだり、何を作ろうか算段したり、ストレスフルなソフトウェア開発で疲れた心身をリフレッシュするのに「料理」はうってつけだった。

■仕込み・カツオをさばく■
vol.37_04.jpg 市場で朝食を済ませ、クッキングスタジオ「人夢キュイジーヌ」へとって返す。調理器具一切合財がそろった完璧なキッチン。料理のプロセスから出来上がりまでを撮影する機材・照明も完璧に備え、スチールもTV番組撮影などにも対応したスタジオ。
しかも単に収録用にインスタントにこしらえたセットではないから、スミからスミまで写ってもなんら損傷ない。まさにクッキングスタジオの名の通り。

「メインを残して、すべて仕込みはしてあるから」

1時間ほどの取材にお付き合いいただき、昼食をすませた昼過ぎ。メインのカツオをさばきにかかる。水上さんは真剣そのもの。丁寧に、しかも手早く。
ころころに太った2尾のカツオがいかにも旨そうな8本の柵に。そこまでで仕込みは終了!
あとは見せながら仕上げる。これが水上流。イベントコーディネーターたる所以なのだとか。

■料理修行■

vol.37_05.jpg ソフトウェアメーカーでキャリアを積んでいくと、開発からマネージメントへと職域も変わる。ある時、ひとつのプロジェクトが完結したら、その後は米国&日本往来から本格的に米国勤務という話を聞き、退職を決意したのは水上さん40歳の時。
海外出張生活で知った「料理の楽しみ」、そのあたりで「仕事」ができれば、と漠然とは次のステージのイメージは既にあった。だからこそ、「新しいことを始めるのなら早い方がいい」退職とさほど期をたがえず調理師専門学校に通いだした。1年間で調理師免許を取得。
その後徳島県にある、プロの料理人がさらなる高みを習得するための料理学校で日本料理とフレンチを1年半学んだ。料理にかけてはレベルの高い人たちに混じっての料理三昧のうちに食材の目利きや盛り付けをはじめ、「料理」を軸にした「もてなし」の心は否が応でもたたき込まれた。
しかし、同時にいわゆる「料理人」として飲食店を回す、そこに納まり切れない自分も知った。
では一体、何を目指すか?スタートが遅かったこと、異分野での道のりがメリットとして生かされる、自分でなければできないこととは何か?米国で供に働いた同僚たちの家族ぐるみの付き合い、ホームパーティーの楽しさを、住宅事情が困難にしている日本で形にして伝えるには、どうすればいいのか?


■協賛はブログサイト、スポンサーは地ビールメーカー■

vol.37_06.jpg 夕方、当日のイベントの参加者がちらほら到着し始める。イベントはブログサイトB食倶楽部の協賛を得て、B食のBをとって「B’sキッチン」として2005年8月からスタートしている。
スポンサーとしてイベントをサポートするガージェリー・ビールの地ビールの樽も届いた。

参加者の顔ぶれが揃ったところで、サーバーからの注ぎ方をレクチャーしてもらい、さっそく各自ビールを楽しむ。
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プレーンなタイプはすっきりナチュラルでさわやか。黒ビールタイプはこってりした濃い味わい。甲乙つけがたい、それぞれの旨み。あっち飲んで、こっち飲んで、際限なく飲んでしまいそう。

最初にテーブルに出てきたのが前菜「アスパラ豆腐」。
ひんやりしてプルンとして、アスパラの香がほんのり。見た目もキュート!!固まるのに時間を要す「アスパラ豆腐」は前日から調理して冷蔵庫入りしていたが、あとは仕込みは途中まで。
「ワラビのたたき」はミキサーにかけるところからパフォーマンスとして見せながら仕上げる。
お味?それはもう、美味!!!

■新発想!クッキング・イベント・コーディネーター■

「そうだ、料理を撮ろう!」
なんといっても、中学生のころからカメラに熱中。小遣いを貯めて手にしたカメラも何台もある。自慢じゃないが、プロのカメラマンの友人らも認める腕だってある。だいち、料理のことは誰よりも知っている。どんなカメラマンより「旨い」料理の写真が撮れるはずだ。
奇しくも、世はデジカメ時代の到来を告げていた。デジタルはお手のものではないか!いかにも食べてみたくなるような、味や匂いさえ感じさせるようなのが、自分には撮れる。そして完璧なデジタル処理もできる。
2003年にスタジオ落成と同時に会社も立ち上げた。依頼で料理の写真を撮る。自分でこしらえた料理の写真をHPやblogに掲載する。
と、思わぬ仕事が派生し始めた。
イタリアからスローフード紹介のための食材撮りのオファーが入った。撮りに行ったら「日本料理を作って欲しい」と請われ、水上さんの経歴を知ってか、ホームページの制作も併せて依頼された。

水上さんの中で何かが動いた。あたかも必要データが全てそろい、驚異的なスピードでPCが解析を始め、それまで個々に散在していた要素が一挙に統合されひとつの解答をはじき出したかのように。
料理もプログラムも要は段取りではないか!最終到達地点を見据えて、そのために関わる人たちやものをアレンジメントする。それだって長年培ってきたことではないか!
スポンサーを獲得するためのプレゼンテーションにしたって同じ。そして様々なフィールドの人たちのコラボレーションが実現するためのコーディネーションはたっぷり経験を積んできている。
パフォーマンスとして料理を見せながら、食材の知識や料理の技術を伝える。「食」の楽しみを最大限に提供する。スポンサーを巻き込んで、料理をイベントとして成立させる。新しい職域の創造。「クッキング・イベント・コーディネーター」の概念がはっきりと輪郭を現したのだ。まさに「晩ごはん食べに、うち来ない?!」が仕事として成立したのだ。

さてメインのカツオづくし。
前菜の後は、柵にしておいたカツオを串に刺してバナーで焼く、冷水をくぐらせる、魚身をそぐまでを逐一パフォーマンスとして見せ、たっぷり目で味わってもらった後テーブルに供された「たたき」。飛び切り新鮮な、そして確かな目利きで選び抜かれた素材、文句なし!旨い!!!
vol.37_08.jpg 皮の部分はカバヤキ。香ばしくてコックリした味付け。
カツオの漬け丼。もう何も言いますまい。
カツオづくしの合間合間に、目先を変えて角煮ちまきや山菜のてんぷらやハマグリのスープも供され、漬け丼を平らげた上に、オカワリご飯にスープを注いで頂いたり、デザートには抹茶葛餅。

「いかがでしたか?」

参加者と席を交えた水上さんに訊ねられるまでもなく、もう大満腹、大大満足の面々。
輸送コストなどで悩む地方の生鮮生産者や、新店舗開店に関する相談で九州から北海道まで地方に出かけることも多くなって、多忙を極める水上さん。
埋もれた「いいもの」をレシピを考案・提供、開発することで世に送り出す。メニュー開発の提案でレストランが生き生きと活性化する。

「いやいや、まだまだ形は変化していくと思いますよ」

オファーに沿うべく頭をひねるうちに新しい発想が次々生まれてくるのだという水上さん。

しかしながら、あくまでも原点は
うち来て晩ごはん食べない?旨い酒あるからおいでよ、なんですよ」

うなづくことしきり...











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2008 / 02 / 01

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