うららの愛Camera

目的にあったカメラを使用。なければ作っちゃう!!
Deardorff 8×10、FUJIFILM GX617、そして自作......。
写真家・渡邉肇

2012 / 12 / 25

urara121225_01.jpg今回はクリスマス&年末特別スペシャルということで、渡邉肇さんに大型カメラから珍しいカメラ、そして自作カメラまで、たくさんのカメラを紹介していただきました。

うらら:おみやげで〜す!(カラシやワサビなどを入れる容器をプレゼント)
渡邉:ありがとう。うららさんのお兄さんのおそば屋さんにあった、このワサビのフタがライカX1(エルマリート f2.8/24mm ASPH.)のレンズにピッタリ合ったんだよね。レンズキャップとして使わせていただきます(笑)。

urara121225_02.jpgうらら:喜んでいただけてうれしいです♪ それでは、写真との出会いを教えてください!!
渡邉:父が学校の教師をしていて、趣味の一環で運動会など生徒の写真を撮影し、みんなにプリントをして配布していました。よくある、模造紙に写真を貼って、欲しい写真の番号を書いてもらってという感じのものです。
うらら:ありましたね!
渡邉:自宅の押し入れが暗室になっていて、お風呂場で水洗、父自身が現像とプリントをしていました。
うらら:えっ! お父さまが現像とプリントをされていたんですか? 頼まれた写真を一枚一枚!
渡邉:生徒の人数分のプリントは、かなりの枚数で、私は乾燥させた写真を電話帳に挟む係でした。酢酸のすっぱい臭いを子供のころから嗅いでいましたね。行事のあるときは一所懸命手伝っていました。
そういった環境で育ちましたので、自然と写真の世界に入っていきました。父の手助けはありましたけど、いちばん最初は小学校6年生の夏休みの自由課題で、天体写真を撮りました。2種類撮影して、そのひとつが星野写真。カメラを三脚で固定してバルブで長時間撮影します。夜空に星が線で描かれる写真ですね。それと両親に買ってもらった800mmの屈折望遠鏡に、35mmのアタッチメントを付けて満月の写真を撮りました。この2枚の写真を、撮影方法からフィルム現像、プリントまでのプロセスを書いて提出しました。
うらら:すごいですね。その時のカメラは?
渡邉:その時のカメラは一眼レフの、ミノルタ SRT101。フィルムはモノクロでフジのネオパンSSだったかな?
うらら:学校では大絶賛だったんじゃないですか〜?
渡邉:みんな、ビックリしてましたね。

urara121225_03.jpgうらら:本格的に始められたのは?
渡邉:高校時代はバンドに熱中していましたので、将来は音楽か写真かどちらにするか悩んでいました。大阪写真専門学校(現在のビジュアルアーツ専門学校・大阪)の入学説明会で、そのときも音響か写真かどちらを専攻するか迷っていたのですが、就職率が写真のほうが良かったので、写真に決めました(笑)。
学校に通いながら撮影助手のアルバイトをしていましたが、仕事が忙しくなり、学校を辞めそのままスタジオで仕事を続け、その後、東京へ......。20歳のころは、ポラロイドカメラ SX70でストリートの写真を撮ってました。スタジオ業務や写真家のアシスタントを5年ほどして、25歳(91年)の時に渡米。
渡米先のニューヨークで暮らし始めて2週間くらいの時に泥棒に入られて、機材を盗まれてしまった。ニコン F4とレンズ35mm、50mm、85mm、105mmは友達の家に置いてあり難を逃れましたが、盗られたカメラは、ポラロイドカメラ SX70、ローライフレックスの2眼、ミノルタ CLE。特にローライフレックスを盗まれたのはショックでしたね。ニューヨークに渡る前にパプアニューギニアに撮影旅行に行っていて、その写真の仕上がりがとても素晴らしかったカメラ(レンズ)だったので......。
うらら:その素敵な感触のカメラが盗まれたってショックですよね。
渡邉:優れた描写力だったんですよ。昔のカメラは、職人が職人魂を燃やして作っている時代があって、レンズの研磨や金属加工など素晴らしい機械は今の量産されているものとはまったく違いますね。ローライフレックスはその後3台購入しました(上の写真がその中の一台)。
ニューヨークでは商業写真は辞めて、自分の撮りたい写真を撮影しようという考えていましたので、当時は日本食レストランなどで働いて生計を立てていました。

urara121225_04.jpg渡邉:ニューヨークのクラブに夜な夜なドラァグクイーンの人たちのスナップ写真を撮りに行っていました。その時のカメラがオリンパス O-product。
うらら:カッコイイカメラですね! すごく状態が良くて綺麗。
渡邉:大切に使ってます。このカメラはユニークなフォルムで相手に威圧感を与えないところも魅力です。ですから、スナップ撮影に向いていますね。当時、友人とシェアしていたスタジオで本格的なドラァグクイーンの作品作りをするため、クラブでこのカメラで撮影した写真をプレゼントしたりして仲良くなったんです。スタジオ撮影にはローライフレックスの2眼カメラを使用。92年に撮り始めたこの作品と06年に撮影した死を予感させる場所での生け花の作品とを合わせて個展をしました(code 9206/2007年)。その時のスナップ写真は、現在、ギャラリー E&M 西麻布で開催中の『monochrome VII「Snapshot "flaming 2:3"」展』で、何枚か展示しています。
それぞれの場所でいちばん適した道具を使う。じっくり構えて撮るなら8×10でもいいだろうし、スナップで撮るなら相手に威圧感を与えないカメラが良いんじゃないかな。

urara121225_05.jpg渡邉:ドラァグクイーンの次のシリーズでヒマヤラ、シルクロード、チベット、パキスタンの奥地など風景写真を撮影した時のカメラが、FUJI GX617です。フィルムは6×17で、6×6フィルムの標準サイズ120で4枚撮れます。手持ちでも撮影可能。大型カメラ(4×5)のレンズを使用し、90mmと180mmの2種類持っていて、180mmのこの形状は......空飛びそうだよね!(笑)。
シルクロードに行ったときは、車の振動でネジが外れて苦労しました。そのときの人物用の撮影にはローライフレックスの2眼を使いました。チベットの子供を撮影したこの写真(下写真)は肌の質感がしっかりと出ています。ボケ感もまた素晴らしい。
うらら:すごい質感ですね!
渡邉:このカメラはボケが放射状に出て、この流れるような感しが美しい。シズル感もあり、顔にどれだけ厳しい環境化で生きているかが滲み出ている。
うらら:手が"手じゃない"ですよね。グローブみたい。
渡邉:エベレストのベースキャンプで撮影した風景写真(下写真)は、星の明かりだけのバルブ撮影で5時間くらいですかね。この時はかなり寒くカメラがガチガチに凍ってました(笑)。でも、写真は写ってました。
うらら:カメラは大丈夫でしたか?
渡邉:大丈夫でしたね。

urara121225_06.jpg渡邉:そして今回のメイン、Deardorff 8×10。掲載の写真は(下、作品紹介写真)2009年に開催した『The Door』の作品です。CGを使えば、簡単に出来てしまうことを、あえて一発写真で表現しました。重たいドアをいろいろな場所に持ち込んで撮影しました。
うらら:撮影しているシーンが目に浮かんで楽しいですね。ドアが光っているのは?
渡邉:後ろにストロボを仕掛けて、それを無線で飛ばして......。
うらら:作品に対するこだわりがすごいですね!
渡邉:ちょっと、セットしてみましょう。もう生産されていないサムソンの三脚です。足をばっちり開くと安定感が出ることは当たり前ですが、狭めてもしっかりと立ちます。ストリートで撮る時に自分の肩幅ほど狭めても、しっかり自立する三脚がコレ! しかも、エレベーターがどんどん伸びて三脚の足を伸ばさなくても8×10が顔の高さで撮影可能。こんな三脚は他にはないですね。今は中古でもなかなか出てこないです。
うらら:最初から大型のカメラ用なんですね。
渡邉:雲台部分の幅が広く8X10でも、余裕です。
うらら:フォルダケース(下写真)も大きいですね〜。
渡邉:これは特注です! 撮影したものと区別するため5枚単位で収納でき、60枚入るよう設計しました。

urara121225_07.jpgうらら:カメラについて教えてください。
渡邉:デアドルフは古いものはマホガニーという木材を使ってますが、6000番台で生産を中止してます。シリアルナンバーで作ったおおよその年代がわかります。私のナンバーは3201ですね。
マホガニーという木材は、もう採れなくなっています(※現在では全種類がワシントン条約によって取引が制限され入手困難)。

urara121225_08.jpg
バックのすりガラスに描かれたアタリは、お台場のガンダムを定点観察で撮影にいったなごり……
うらら:レンズを教えてください。
渡邉:8×10カメラの標準レンズは、人によって差はありますけど、300mm、360mmです。35mmカメラでいう40mm、50mmになります。
うらら:標準で300mmだと望遠は?
渡邉:8×10カメラのイメージサークルをカバー出来る、私の持っているレンズはいちばん長いレンズで480mmです。古いレンズだと600mmなどありますね。8×10カメラには望遠という感覚はないかも......。 
渡邉:レンズはゴルツのゴールデンリムダゴール300mm。レンズの径に合わせてフードはオリジナルで作成しました。(写真上)KPSというメーカーのレンズフードで今は生産されていません。このレンズに付けれるよう業者に頼んで削り出してもいました。やっぱり、ダゴールがいちばん好きですね。そのほかに2本。

urara121225_09.jpgうらら:現在、お仕事で使われているカメラはなんですか?
渡邉:ハッセルブラッドですね。フェーズワンP65+というデジタルバックを付けています。解像度は約6900万画素。
うらら:6900万画素......。
渡邉:1ショットで約173MBなります。今いちばん気に入っているパターンが、ハッセルブラッドのCレンズとこのカメラの組み合わせです。レンズは60年代?70年代のレンズが良いですね。金属加工もしっかりしていて重みがあります。今のレンズの筒体の一部にプラスチックを使ってますから軽いんですよ。このCレンズが最高ですね。古い時代のモノの方がちゃんと作られている。最新のデジタルと旧式のレンズの組み合わせがステキでしょ(笑)。
うらら:うわっ〜。重いですね。
渡邉:それとコシナから全世界限定生産数1000本のカールツァイスのマクロプラナー120mmとゾナー180mm。このレンズも描写力が良いですね。ビューティ系はこのレンズを使うことも多いです。 

urara121225_10.jpg渡邉:今、作品として伝統芸能の文楽を撮影していますが、舞台袖から撮影をします。音を出してはいけないので、弁当箱のようなケースに収納して音を出さないようにします。完全密閉されてこのくらいの音です。
うらら:ほとんど聞こえないですね。
渡邉:ハリウッド映画の同録の時はこの装置での撮影が許されている。これを持っていないと撮影できないんです。

urara121225_12.jpg渡邉:もうひとつあります。水中撮影用の装置です。Canon 5D markII専用。一度、コードが引っかかってしまっていることに気づかず、密閉出来なくて一台破損させてしまいました。ダイビング用ですけど、私はサーファーの撮影で使いました。ケースを開けることも大変だし、入れることも大変ですが、すべての機能を、外部から操作出来る優れもの。

urara121225_13.jpg渡邉:そして、本日のスペシャル・カメラ! これは、あるプロジェクトのために私が設計して作ったカメラなんです。8x10アストロカメラ。
うらら:えっ?! 自作のカメラなんですかぁ!
渡邉:しかも、デカイ!!
うらら:これ、カメラなんですかぁ〜?
渡邉:星の写真撮影専用カメラで、赤道儀(日周運動で動く天体の動きに合わせて星を追尾する、天体望遠鏡などが乗る台座)に取り付けて撮影します。後部にはカンボの8×10のピントグラスを装填。無垢のアルミニウムを削り出して作りました。四角い形状だと構図が任意に決められないので、円形にしました。360度回転するので夜空におけるフレーミングが自由自在。
うらら:すごすぎるーーーーーーー!!
渡邉:その目的にあったカメラがなければ作っちゃう!

urara121225_11.jpg★おまけ!!
プラチナパラディウムプリント
銀塩は銀が化学変化しますが、これは紫外線を使ってプラチナやパラジウムが反応させてプリントします。感度が低いので大光量の紫外線露光機を作りました。支持体とネガを重ね、ガラスをのせてポンプのスイッチ入れ圧着させます。

urara121225_14.jpg

urara121225_15.jpg
カメラ:8x10アストロカメラ レンズ:Schneider Super Symmar 210mm
露出:F5.6 2時間30分 フィルム:Kodak E100S 撮影場所:稚内、北海道
urara121225_16.jpg
カメラ:FUJI GX617 レンズ:EBC Fujinon W180mm
露出:F11 1/8秒 フィルム:KODAK 160NC 撮影場所:マディユライ、インド

urara121225_17.jpg
カメラ:FUJI GX617 レンズ:EBC Fujinon 90mm
露出:夕景 F5.6 1/4秒  星野 F5.6 2時間(多重露光) フィルム:KODAK 160NC 撮影場所:マナサロワール湖周辺、チベット
urara121225_18.jpg
カメラ:Deardorff 8×10 レンズ:Gortz Golden-Lim Dagor 300mm
露出:F11 1/4秒 フィルム:TMY400 撮影場所:埼玉県、戸田市


プロフィール
渡邉 肇(Hajime Watanabe)
東京を拠点に、ビューティ、ファッションからスティルライフに至るまで、幅広い分野で活躍中。
特に、ビューティショットに対する鋭い感性は、コスメティック、ヘアケア関連の多くのクライアントから高い支持を得ている。
また、撮影に対する真摯な態度は、モデルや女優をはじめ、他のクリエイティブからの信頼も厚い。
さらに、プライヴェート作品の制作も精力的に行ない、毎年さまざまな作品展を開催。
毎回多くの来場者を記録し、高い評価を得ている。

¦主な作品展
2007 code 9206/Garuda 2007(BALI deep)
2008 The Third Eye(BALI deep)
2009 化粧写真(by RH Project)/The Door(8×10)10
2011 OKURIBANA

urara121225_20.jpg











エンタメ うららの愛Camera   記:

あそびすとショップ

美味良品 おとりよせしました

編集長!今日はどちらへ?

アラカン編集長モンブランを行く!

BigUp

asobist creator's file

  1. はいコチラ、酔っぱライ部
  2. ikkieの音楽総研
  3. 旅ゆけば博打メシ
  4. うららの愛♡Camera
  5. Tomoka's マクロビカフェ
  6. 三笘育の登山は想像力
  7. 憎いウンチクshow
シネマピア
おもいでリストにエントリー確実、話題の映画!
【映画レビュー】動物界

人が動物化してしまう奇病が日常を襲…

旅塾

▲このページのトップへ