シネマピア

ハードキャンディ -ネット社会に潜む罠-

20070810141033picm.jpg「赤ずきんが仕掛けるオオカミへのゲーム」---出会い系サイトで、14歳の少女が32歳の売れっ子フォトグラファーと出会うことから始まる本作。純朴で天真爛漫そうに見える少女は、オオカミの餌を見事に演じきる。無防備で、いつでも襲うことができる好都合な餌に変身したのだ。まんまと騙されたオオカミは、食べてしまう前の生きた餌とのひとときを楽しもうとする。少女が餌の皮を被った凶器だとは知らずに。

ネットでの出会いの危険性を語る映画は他にも数多くあるだろう。だが、ほとんどのシーンを男女ふたりだけのやりとりで構築しているのに、次の展開がまったく読めないなどという、こんなスリルに満ちた密室劇が他にあるだろうか。ふたりの力関係の移り変わりは振り子のように繰り返され、いつ終わるとも知れないメビウスの輪のように、映画が終わったあとも私たちの心に波紋を投げ続ける。どこまでが善で、どこからが悪か? と。

また、少女を演じるエレン・ペイジは息もつかせぬ長いシーンを見事にやってのけ、撮影当時17歳とは思えない貫禄を見せつけてくれた。さすがサンダンスを湧かせただけある、見ごたえのある作品である。

インターネットでの出会いはさほど珍しいものではなくなった今日。いわゆる男女の出会い系でなくとも、ミクシィなどのソーシャルネットワーキングサイト(SNS)を通じて仕事上の出会いを得ることも少なくない。だが、その出会いは「本当」のものなのか。ネット上でやりとりされる情報を鵜呑みにして、相手の術中にはまってしまってはいないか。相手の「ネット人格」を本人そのものだと思い込んではいないか。会って相手の顔を見ればそれで安心なのか。「実際に会う」という行為を妄信しすぎてはいないか。ネット社会に潜む暗部を深く考えさせられる映画だ。

監督:デヴィッド・スレイド
脚本:ブライアン・ネルソン
出演:パトリック・ウィルソン/エレン・ペイジ
ジャンル:洋画















エンタメ シネマピア   記:  2006 / 07 / 23

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