シネマピア

ピンチクリフ・グランプリ

最初に宣言しておきます。この「ピンチクリフ・グランプリ」(原題:The Fla(*aの上に○)klypa Grand Prix)ものすごくヒイキします(笑)。正直ホメまくりです。だって本当にいい映画なんだもの。以前アニメーション映画に関わっていた者ととして、羨ましくもあり悔しくもあり。というわけで、以下のレビューはほとんどラブレターみたいなものです。そのあたりをご承知置きいただいてから、どうぞ。

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さて、多くの方にとって「ピンチクリフ・グランプリ」という名前も映像も、初めて接するのではないかと思うのだが、実はワタクシ28年前に観ております。当時はアニメーションを勉強している一学生ではあったけれど、この作品を観たときは、そらもうタマげましたね。試写室のイスからそう、確実に2センチは飛び上がって驚いたのを良く覚えている。

当時の(そして今も、であるが)人形アニメーションといえば、東欧各国の旧作や日本の川本喜八郎氏、故岡本忠成氏の作品がメインストリームであり、どちらかといえばクソ真面目というか、説教臭い感じの作品が多く、純粋なエンタテインメントとしての人形アニメーションというのは正直少なかった。そんな中に突如として北欧からとんでもなく出来のイイ、そして楽し過ぎる超エンタテインメントな人形アニメーションがやって来たのだから、ボクでなくてもイスから2センチ以上は飛び上がってもおかしくは無い。この映画は、それほどの衝撃を多くの人たちに与えたのだ。

「ピンチクリフ・グランプリ」のストーリーはとてもシンプル。ピンチクリフ村に住む発明家のおじさん・レオドルとその助手たちが、ひょんなきっかけから世界的なグランプリレースに出場する、というだけのお話である。

グランプリレースでのライバルは、レオドルのかつての弟子、いかにも悪そうな顔をしたルドルフ。ルドルフはレオドルの発明したエンジンを盗んで、グランプリで好成績を上げている。そんな卑怯な振る舞いに腹を立てたレオドルの助手、アヒルのソランはたまたまピンチクリフ村に休暇に来ていた産油国の金持ちを発見。密かに計略をたててレオドルのスポンサーとして招き入れる。そして、その豊潤な資金を元に、レオドルと弟子たちは世界最強ともいえるレースカー「イル・テンポ・ギガンテ」を作り上げ、最後のグランプリレースでいよいよ、ルドルフに挑むことになった。

この映画、まずその世界観がとても素晴らしい。発明家のおじさん・レオドルの助手がアヒルとハリネズミ(笑)。この「グランプリ」で描かれる世界は、人間や動物たちが同じ言葉や文化を共有しており、しかし動物たちは動物としての個性を持ったまま何の違和感も無く一緒に暮らしている、という設定になっている。

村民を含めてレオドルたちの生活は慎ましく、いわば清貧ともいうべきものではあるが、着ているものがとてもオシャレ。ジャケットやマフラーなどは、人形アニメらしく素材の質感がハッキリと解るし、部屋にある調度品なども丁寧に造り込まれて、リアルで深みのある画造りに貢献している。レオドルの発明品もなかなか楽しく、風力発電のメカや薪割り装置など、ウソくさいと解っていながらも本当にありそうな精巧なつくりに、思わず笑わされる。

そしてキャラクターたちの表情や動きが、なんとも楽しい。リアルというわけではないけれど、いかにもソレらしく振る舞うのだ。レオドルは発明家らしく、考え込むクセ(人形なのにクセまで!)や表情で演技するし、アヒルはアヒルらしくアクティブで素早く、ハリネズミはハリネズミらしくノンビリと。村長をはじめ村の人たちも、チョイ役を含めて、みんな自分の与えられた役割をちゃんと理解して、何とそれらしく動くことか。

だいたい人形アニメは、人形を少しずつ動かしては撮影するという、気の遠くなるような工程を経て完成させる作品である。事実「ピンチクリフ・グランプリ」には5年の歳月がかかっているわけなのだが、その人形アニメでモブシーンが展開されるというだけでも、技術的にも恐ろしい&素晴らしいのに、そのモブシーンでのキャラクターが、ひとりひとりの個性で演技しているという 驚くべき光景を目の当たりにすると、思わず「すげー」と感動してしまう。いや、人形アニメをつくるのが大変である、ということを全然知らなくても、画面を観ているだけで、こう、何かグッとくるものを感じるのは確かだと思う。大事ですよ「グッとくる」という感覚。それが、この作品にはあるのだ。

さて、ラストの10分以上にわたるレースシーンは、実写だのアニメーションだのというジャンルを越えて、その迫力、ドキドキ感は多くの人の記憶に残る名シーンといっていいだろう。ギガンテ号のメカメカしくも暖かみのある造形がいちだんと引き立ち、スピード感溢れるその走りは、お約束の結果になると解っていながらも、観る度に手に汗を握る。また、悪役のルドルフも、ちゃんと悪役らしくセコい妨害工作をしたりして、なかなかいい芝居をみせてくれる。

「ピンチクリフ・グランプリ」のいいところは、本当の悪人がだれ一人いないことだ。悪役のルドルフでさえ、愛嬌のある「悪役」という役を演じている。そして誰も傷つかず、だれもが悠々と全てのことを受け入れる。慌てず、騒がず、自分のするべきことをキッチリこなす。そんな当り前のことを当り前にしてゆくだけの映画なのに、観終わったあとの暖かく幸せな気持ち、全力で肩からチカラの抜けてゆく「ほーっ、なんかイイよなあ」という感覚は、誰もが感じる事ができるに違いない。
年齢や性別を問わず、観終わった後にシアワセになれる映画というのは、そうザラにあるものではない。「ピンチクリフ・グランプリ」は、そうしたシアワセな映画の、数少ない実例だろう。

そうしてつくられて30年経った今、「ピンチクリフ・グランプリ」を観れば面白さもシアワセも、すべてが変わらずそこにある。これが30年前につくられた?なんて驚いてはイカン。映画であれ、音楽であれ、イイものには賞味期限なんて存在しない。だからこのあと30年後(2037年?)に観ても、きっとみんなが楽しめると思う。「これが60年前につくられたって?」とか、言いながらね。

ピンチクリフグランプリ(DVD)
監督:イヴォ・カプリノ
脚本:ヒェル・アウクルスト
出演:塩浜尚子(字幕翻訳)
配給:メディア・スーツ
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.pinchcliffe.com/















エンタメ シネマピア   記:  2007 / 02 / 05

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